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「弱いからこそ、人の気持ちがわかる」奄美大島出身のぽん吉が教えてくれた“寄り添う力”

奄美大島出身の「ぽん吉」は、環境省の管理下により、捕獲・殺処分することが認められた外猫だった。

しかし、譲渡認定人により引き受けされ、預かり人である「保護猫ルームWASAO」にやってきた。

外で暮らす猫が多い奄美大島で育ってきたぽん吉。そのせいか、猫と人のどちらにも、すすんで歩み寄っていくような猫である。だが、そんなぽん吉には“弱い一面”もあるのだそう。

今回は、そんなぽん吉の話を保護猫ルームWASAOの杉田さんにお伺いします。

🐈 奄美大島とノネコの話は、こちらのnoteで詳しく説明しています。保護猫たちを取り巻く問題について、もっと知りたい方はぜひご覧ください。

“捕獲と殺処分”が認められた、奄美大島出身の「ぽん吉」

―― neco-noteで「奄美大島出身」と紹介されているぽん吉ですが、WASAOにくるまでにどんなストーリーがあったのでしょうか?

おっしゃるとおり、ぽん吉は奄美大島に住んでいました。

奄美大島では外で暮らす猫の一部をノネコと定義され、島の希少動物を守るために、ノネコを捕獲する計画が始まっています。

そんななか、WASAOでは「奄美ノネコ預かり人」として、奄美大島で捕獲された猫の保護をしています。

実は、奄美出身の猫たちは保護の状況や猫の詳細が明らかにされません。エイズや白血病の有無、怪我の痕跡や猫の若さ(仔猫・成猫・シニアなど)のみしか伝えられず、私たち預かり人はこの情報だけで預かるかを決めます。

そのため、ぽん吉もどのように保護されたかはわからず、羽田で会うその日までほとんど情報がありませんでした。

そんな状態での猫の預かりにはリスクがあります。でも殺処分を回避するためには、どんな猫だろうと、殺処分がされる1週間以内に、誰かが手をあげなければならないのです。

そんな状況だからか、ぽん吉やビリーなど奄美っ子たちには、普通に保護した子よりも思い入れが強くなります。

―― ぽん吉の名前の由来は?

羽田空港で初めて見たときに「タヌキだ!」と思って(笑)。その場で「ぽん吉」と名付けました。

―どんなところがタヌキっぽいと感じたのですか?

私が見た瞬間にタヌキだと思ったとおり、まるでタヌキのようなフォルムをしています。顔が細長くて、シュッとしている部分だったり、柄もまさにタヌキです(笑)。

たぬきっぽいフォルムの「ぽん吉」

懸命に人に寄り添う。弱虫だけど、かまってちゃん

―― ぽん吉はどんな猫なんですか?

上目遣いで人を見てきて、猫っぽくないですね。

―― そんなぽん吉の推しポイントはどんなところでしょうか?

人が来ると寄ってきて、ずっと一緒にいたがるところですかね。もう二度と離れまいとするくらいの勢いで(笑)。人に寄り添ってくれるんです。ぽん吉なりに、一生懸命に。

また、人の言葉や感情がわかるのか、自分から人が離れていくときには、とても切ない顔をします。でも切り替えが早く、しばらくすると他の猫にちょっかいをかけたり。そんな姿が、いい子ちゃんぶっているように見えて愛おしいですね。

――人には懐いているぽん吉ですが、WASAOの他の猫との関係はどうですか?

弱虫だけど、自分からいろんな猫に“しかけ”にいきますね。

「ビビ」という、同じく奄美大島から来た猫がいるのですが、その仔とはご飯のときによく取っ組み合いをしたり、ときには毛繕いをし合ったりと良きライバル関係です。

つい最近では、ぽん吉がひっくり返ってビビにおさえこまれるような形になったこともあり、そのときは、お互いにびっくりして時が止まったかのように静止していましたね(笑)。

良きライバル「ビビ」

ゆっくりまったり、安心して落ち着いた生活を

―― ぽん吉を迎え入れてくれる家族は、どんな方が合いそうですか?

ぽん吉はべったりしたい仔なので、お家でゆっくりまったりと穏やかな生活が送れる方が合いそう。子どもと一緒に遊ぶというよりは、ご高齢の方などと一緒に落ち着いて暮らすイメージですね。

―― 子どもは難しいですか?

子どもも合うかなとは思ったのですが、先日WASAOに子どもが見に来た際に、ぽん吉がすごい勢いで逃げてしまって、戻ってこなかったんですよね……。

だから、相性を見る必要があるかなと思います。

🐈 🍀

あなたと一緒だからこそ、見せられる姿がある

自分のことを理解してほしいけど、上手く表現できずに悩んでいる人がいる。でも、それに気づいてくれる人に出会えたら、最高に幸せだ。

内弁慶で弱虫。べったり甘えたいのに、どこか人の心を読んで、自分の気持ちを押し殺してしまうぽん吉。

そして、そんなぽん吉のことを理解して、笑顔で見守る杉田さんの話を聞いて、「一人では輝けなくても、磨いてくれる人と出会ったら輝ける」ことがよくわかった。

なかなか、隠されたその人の本性を見抜ける人は少ないであろう。ぽん吉と杉田さんは、きっとお互いに信頼しあえる仲なのではないだろうか。

次に、ぽん吉はどんな人と出会うのだろうか。ぽん吉がぽん吉らしく「自分をさらけ出せる人」と出会う瞬間が、いまから楽しみだ。


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