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「動物愛護は“かわいそう”じゃない」アートで命のはかなさを伝えるFRAGILEの想い

「まさか自分がアーティストになるとは思ってなかったんです」

そんな意外な言葉が出たのは、海外でも活躍する作家「FRAGILE(フラジール)」さんでした。

FRAGILEさんはバルーンで動物の“命のはかなさ”を表現したイラストが特徴の作家。

「命」「動物愛護」と聞くとその強いメッセージ性から、心臓をキュッと握られたような感覚になる方もいるかもしれません。

しかしFRAGILEさんは作品を通してまずは単純に「かわいい」を入り口に「動物愛護」に関心を持つきっかけづくりを行なっています。

アートという形で動物と向き合うFRAGILEさんの原動力はどこにあるのか――今回は、作家活動を始めたきっかけやアートで伝えたい思いをお伺いしました。

病気とコロナが教えてくれた「命のはかなさ」と「動物愛護」

―― FRAGILEさんがアーティスト活動を始めたきっかけを教えてください。

小さい頃からアートは好きでした。多摩美術大学を卒業後広告代理店に就職したのですが、まさか自分がアーティストになるとまでは思っていませんでした

けど、たまたま病気が見つかって死と隣り合わせの経験をしたとき、「命のもろさ」を痛感したことで、好きなことを「いつかできるといいな」から「いつ死ぬかわからないんだから、今しないなんてもったいない」という思考になりなかば衝動的に始めました。

また、コロナ禍でペットを飼い始めたけど手放してしまう人が増えているというニュースや友人の体験談を耳にして動物愛護についても関心を持つようになったんです。

興味を持って調べていたら“あと〇日”という殺処分を想起させる言葉で訴求する広告を目にすることが多くて。同情を誘うような、悲壮感漂う表現が、私はあまり好きではなかったんですよね。

私なりに保護犬・猫、殺処分の実情を伝える方法について考えていたときに「アートは自己責任でなんでも表現することができる」ことに気づきました。

「こんな実情があるんです。かわいそう!」と声高らかに訴えるより、興味を持ってくれた人に無理なく伝わってほしいと思い「こわれやすいいきもの」というテーマで制作するようになりました。

命を題材にしているけど、かわいそうなイメージや恐怖を与えない、ポップな仕上がりを意識しています。

売上の一部が保護猫の“お給料”になる展示も開催

作家活動と野良猫「にゃんたま」との生活が同時にスタート

@fragile_balloon

―― 最初に身近な知人の話もあったのですが、FRAGILEさんご自身でも動物を迎えた経験があるのでしょうか?

コロナ禍のニュースや知人の話を知ってから、動物や命のはかなさを伝えるために作家を始めようと思っていた矢先に、野良猫(捨て猫?)のにゃんたまを家族に迎えました。

―― 野良猫を保護して、家族に迎えたのですね…!

自分で保護したというより、にゃんたまのほうから転がり込んできたんです(笑)。にゃんたまは近所の駐車場にいた猫で、会うたびに挨拶をしていました。

そうしたら、ある日突然あとをついてきて、家の玄関を開けると誰よりも先に入ってくつろぐという(笑)。次の日からも同じ時間に玄関で待つようになったので「飼うしかないのでは?」と思い、保護を決意しました。

初訪問のにゃんたま
@nyantama_desu

―― すごい出会い(笑)。にゃんたまの存在やご自身の経験から、生き物の命を題材にしていくと決意できたのですね。

そうですね。私自身つくる技術はあるけれど「これを表現し続けたい!」という強い意志はなくて。社会人になってもアートやデザインと関われたらいいな、というふわふわとした気持ちだったんです。

そんなときに病気を経験したり、にゃんたまを迎えたりとすべてのタイミングが合って、「命のはかなさを表現する」ことが作家活動の軸になりました。

「何かをつくりたい」という気持ちが先というよりかは、問題を解決したいからそのための手段としてアート始めた感じです。

作家と会社員の“二足のわらじ”をはく理由

―― 実体験がもとになって、命について考えはじめる瞬間ってありますよね。FRAGILEさんは作家と会社員の二足のわらじをはいていますが、その理由をお伺いしたいです。

広告の仕事は、いろんな業界・人や価値観に触れることができます。

私の性格上、考え始めるとどんどん視野が狭くなるので、世の中の動きや作品作りのきっかけとなる問題に広い視点で関心を持てるような環境に身を置けるのがメリットだと思います。そして、制作費面でもとても助かっています(笑)

将来的には作家一本になりたいですが、この感覚は忘れないようにしたいです。

―― 作家と会社員を両立するのは大変だと思うのですが、メリットも多いのですね!

今後はイラスト以外の美術作品でメッセージを伝えたい

@fragile_balloon

―― 今後、つくりたいと考えている作品は何かありますか?

もともと、ペイントを始める前は「こわれやすさ」を伝えるためにガラスで作品をつくりたいと思っていたんです。

たとえば、吹きガラスでバルーンを再現したものとか(笑)。ガラス教室に通っていたのですが、難しいしお金がかかるので「無理だ!」と思い、すぐに始められるペイントを選びました。

だけど、将来的にはガラスで動物をつくって、ベルトコンベアに並べて割る(過剰な生産・処分を表現する)ような作品を出してみたいですね。

@fragile_balloon

―― “こわれやすいいきもの”という概念を抽象化した素晴らしい作品ですね!ありがとうございました。

🎨

FRAGILEさんは「こわれやすいいきもの」をメインテーマに、動物の命のはかなさをアートにのせて発信しています。

「何かをつくりたい」という気持ちが先ではなく、問題を解決したいからそのための手段としてアートを活用し始めた――そう語るFRAGILEさんが描くイラストは、ポップなかわいさとメッセージ性を兼ね備えた、力強い作品だと感じました。

この先、FRAGILEさんがつくるイラスト以外のアートが見られることを楽しみにしています。

FRAGILEさんとneco-noteがコラボした展示会のレポートはこちら🎈

FRAGILE
2019年に多摩美術大学を卒業。2021年コロナ禍の入院をきっかけに作家活動を開始。
「こわれやすいいきもの」をテーマに動物たちをバルーンアートに例えて描いています。

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