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バニシング

Uomini si nasce poliziotti si muore / Live Like a Cop, Die Like a Man (1976)

 ルッジェロ・デオダート監督、フェルナンド・ディ・レオ脚本のポリスアクション/ユーロクライム映画。いわゆるポリツィオテスキ(poliziotteschi)ですが、この言葉は刑事ものを指すと思っていたのですけけれど、どうもイタリア製の犯罪映画全般をポリツィオテスキと呼ぶみたいですね。主演はマルク・ポレルとレイ・ラヴロック。スイス生まれのポレルはヴィスコンティの映画にちょいちょい出たほか、「シシリアン」「ビッグ・ガン」でアラン・ドロンと共演しました。ラヴロックは元々ミュージシャンだったそうで、本作にも歌唱曲を提供しています。出演作は「悪魔の墓場」「カサンドラ・クロス」「白昼の暴行魔」のほか、トーマス・ミリアンと親しかったので、ミリアン主演の「情無用のジャンゴ」「ミラノ殺人捜査網」にも出ています。2人とも甘いマスクの色男、でも作品も役も選ばないよって感じですかね。

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 ポレルとラヴロックは特別捜査班の刑事ですが、犯罪者を逮捕しませんし、そもそも捜査しません。ひったくりをバイクチェイス(2ストのKTMかっこいい!)の果てにクラッシュさせ、瀕死の犯人の首をへし折って殺す。裏カジノに集まった客の高級車に放火、ついでにその場にいた用心棒を焼殺。立てこもり犯は奇襲して射殺。(このシーン、ヘリコプター必要?) 銀行強盗は強盗する前に皆殺し。男は殺る、女はヤる。でもそこはイタリア映画なので、実にあっけらかんとしています。「何が悪いの? 俺ら刑事なんだけど」ってなもんです。破天荒でクレイジーですが、もはや狂性すら感じさせませんし、何なら「俺も刑事になる!」なんて憧れる奴すら出そうにありません。無頼のかっこよさはなく、イタズラ盛りのクソガキみたい。VHSタイトルは「ダーティ・デカまかりとおる」でしたが、ダーティと言うよりはナスティ。「ダーティハリー」のダーティは、やり口が汚いんじゃなくて、ダーティな仕事を押し付けられるって意味ですからね。

 ストーリー上の主軸は、レナート・サルヴァトーリが統べる犯罪組織の壊滅。このボスは2人の刑事がヤっちゃう(と言うかヤられる)女の子の兄貴で、彼女を溺愛しているのですが、その設定が笑っちゃうほど生かされていません。単にエロいシーンを撮りたかっただけじゃん。ボスに片目をえぐられた売人(「荒野の処刑」のブルーノ・コラッツァーリ)の協力もあって、2人は何とかボスを川岸のボートまで引っ張り出すことに成功します。ボスは2人が来ることを予期してボートに爆薬を仕掛け、亡き者にしようと企みますが、特捜の上司(アドルフォ・チェリ)が現れてボスを射殺、2人に「お前ら、ヒマそうだな」(笑) しかしそこで終わらず、2人がボート(明らかにミニチュア)を爆破して終劇。何だよこれ(笑)

 最初から最後まで破綻しまくりなのはいいのですが、演出と撮影が雑でぬるいので、全体にスピード感がないのが致命的。テンポさえ良ければ、隠れた傑作となった可能性もあるかもしれません。いや、ないか(笑)

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