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ピラニア 3D

Piranha 3D (2010)

 アレクサンドル・アジャ監督のパニック・ホラー。1978年の「ピラニア」の再リメイクとされていますが、最初のリメイク作「ザ・ピラニア/殺戮生命体」(1995年)と異なりストーリーは新規で、殺人魚も1978/1995年は軍用に品種改良されたものでしたが、今回はピラニアの先祖である古代魚ということになっています。

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 私は、風光明媚な土地で調子に乗った若者がひどい目にあう、という現代ホラーの王道プロットが大好きです。コメディ要素とリンクしやすく、筋が読めるぶん作品に集中できるからです。本作も、女性保安官(「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのエリザベス・シュー)をメインに据えて「ジョーズ」を意識したストーリーとなっています。最初の犠牲者になるのがその「ジョーズ」に出ていたリチャード・ドレイファスという時点で「わかってるねえ!」と口元が緩みますね。新規ながらストーリーは至って単純で、余計なことに惑わされることなくパニック/残酷描写を楽しむことができます。

 シュー、ドレイファスをはじめ、本作は出演陣が無駄に豪華です。「パルプ・フィクション」のヴィング・レイムス、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のクリストファー・ロイド、「ソウ」シリーズのディナ・メイヤーのほか、バカ・バイク映画「トルク」で連邦捜査官を演じたアダム・スコット、「スタンド・バイ・ミー」出演時の面影がまるでないジェリー・オコンネル、「ホステル」シリーズの監督イーライ・ロスなどなど。メイヤーなんか出てきたと思ったらソッコー死んじゃうんで、本人的にそれでいいんかと。

 前半はビキニ(トップレスあり)の女の子、中盤以降は残酷描写を楽しむ構造になっています。どっちも好きな人は最初から最後まで楽しめるわけですね。負傷者が湖畔に次々あがってくるシーンは、「プライベート・ライアン」を意識しているんじゃないかと。アジャ監督って、「ハイテンション」「ヒルズ・ハブ・アイズ」など、欧州的でダークなスプラッター作家だと思っていましたが、本作の演出は意外なほど気持ちよくハジケていますね。それこそイーライ・ロスがやりそうな感じ。コメディ要素を随所に散らしたB級パニック・ホラーの王道を踏み外すことなく、安心して見られる良作に仕上げています。続編を予感させる、王道すぎるほど王道のオチも実に気持ちいいです。

【追記】
 保安官の息子を演じるスティーブン・R・マックイーンは、チャド・マックイーンの息子、つまりスティーブ・マックイーンの孫です。マッチョにいじめられる冴えない少年ですが、ピクシーズのTシャツを着ていたり、部屋にルー・リードやラモーンズのポスターを貼ってたりと、個人的にも応援したくなるキャラ設定でした。

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