ネパールで出会ったフランス人


前に書いたこのnote

の続き的なものです。

***

ある日のワークが終わった後、フランス人のボランティアの子が「町を見て歩きたい」と言い出したので、一緒に町を見て回った。
前年の滞在では、大学の関係で短期間しか滞在できなかったため、ゆっくりと町を見回ることはなかったから、何を見ることができるのか、少し楽しみだった。


いつもお世話になっているお茶屋さんと、その隣にある雑貨店(ホストファミリーの兄弟さんのお店らしい。ネパールには、こういう小さい商店がたくさんあって、他にビジネスとかの仕事をやっている人が持つのが主流っぽい。日本の昔の駄菓子屋さんみたい)にいた人たちと軽く言葉を交わし、改めて写真を撮らせてもらった。

ネパールのこの村の人は、日中、仕事中でもちょくちょく集まって話している。こういうゆるい所が、とても好きだ。日本も生産はある程度ロボットに任せてしまって、早くこういう暮らしになるといいなと思う。


フランス人の彼女が見つけていた、小さなお寺(?)。
この村はヒンドゥー教なので、それ関連のお寺だと思うのだけど、結局このお寺のことをホストファミリーに聞くことはなかった。聞こうと思っていて、すっかり忘れていた。今度行った時に、聞いてみよう。


彼女が声をかけて、写真を撮らせてもらっていたので、私もパシャり。
こういうのを撮りたいと思う、彼女の感性がすきだった。

ネパールの人はこういうカゴを頭と背中で支えて、高低差の激しい地形で重い野菜とかを運んでいる。


あと他、少し高いところから撮った町の様子。
身長が低すぎて、背の高い農作物(多分トウモロコシ)に埋まっている。


「山のあたりを一周してみよう」という話になって、ちょっと迷いながら山を登って行った。
一応、人が通る道はあって、でもものすごく細い道なので、バランス能力が乏しい私は戦々恐々としながら渡っていた。
フランス人の彼女は登山をやっているらしく、スイスイと進んでいく。たくましい。
(「そんなに体力ないのに、よくネパールにボランティア来たね」って呆れられた。私もそう思う)


歩きながら、ちょくちょくと写真を撮って、ポツポツと話していく。

「なんでボランティア来たの?」という話から始まって、ここに来て彼女と私の共通点が明らかになった。二人とも、一人旅をよくするのだ。

「やっぱり、一人旅は楽しいよね」「友達との旅もいいけど、一人でしか得られないものもある」と話していると、次第に一人旅あるあるの話になっていく。

全く何もしない日がある。
急に予定を変えたりする。
地元の人に会って仲良くなりやすい。

ポンポンと流れるように会話をしていくと、彼女が「一人で旅をすると、たまに面倒なことを言ってくる人いるよね」と話し出した。
「一人で旅をしていると、男性がモーションをかけてくることがあるし、そうでなくても「恋人と旅してないとおかしい」みたいな価値観の人がいたりして、面倒だよね」というあるある。

なぜ、一人で旅をしていると恋人がいないと決めつけられるのかとか、仮に恋人がいなかったとしても旅先で恋人を探そうとなんて思ってないのに、とか。

私以外に一人旅をしている人と話したことがあまりないからわからないんだけど、これって一人旅あるあるなんだろうか。

私はふと思い出して、ハワイで出会ったブルガリア人に「恋人も友達も、一緒に旅するのを待っていたら、人生無駄にしちゃう」と語られたことを話した。(ブルガリア人の話はこのnote↓ シリーズ途中だけど)


彼女は「……確かに?」と疑問系で返し、そこから恋人の話になった。

彼女は「周りの友人がどんどん結婚していくし、みんな焦り始めてる」と言い(彼女は当時26歳)、「25歳を越えたあたりから、「早く結婚しろ」という社会的プレッシャーを感じる」と不満げに語った。

私が、
「まぁ、それくらいまでが一番子どもを産みやすい時期だからね」
と返すと、
「確かにそうだけど、まだ早いかなって思ってる」
と返ってくる。


私「20代なんて正直まだ子どもだし、子育てには向かないよね。社会が育ててくれればいいのに」
彼女「周りの友人はみんな子どもを欲しがってるけど、私は子どもがほしいと思ったことはないな」
私「私もそうだよ」
彼女「でも、家族とか周りが認めてくれないだろうから」
私「彼氏はどうなの?」
彼女「そこまでは話してないし、まだ結婚も考えてない」

彼氏は好きだけど、結婚したいかはまだわからない。と彼女は言う。


私「結婚しない自由も認めてくれればいいのにね」
彼女「本当にそうなんだよ。少なくとも今じゃないって人もいるのに」


「私の周りは、別に私がそう言っても認めてくれるけどな。実際、私はいつもそう言ってるし」
と私が言うと、彼女は少し驚いたような顔をした。

「それを認めてくれるような人しか周りに残してないし、親には昔から言い含めてるから」
「それは、幸せだね。だけど、人間関係ってそうもいかないこともあるんだよ」
「そうだろうね、実際私は人の引きがいいし。だけどまぁ、それを否定するような人は疲れちゃうから、近くには寄せないかな」

私がそういうと、彼女は微妙な顔をした。

「私は小さい頃から大多数の人と違ったし、それを合わせようとした時期もあったけど、もう疲れきっちゃってからは、そういうことをしなくなったんだ」

私は(多分価値観が違うんだろうな)と思いながら彼女に話し、彼女は微妙な顔をしながら私の話を聞いていた。

「もう少し大人になると変わってくるかもね。疲れる関係でも切りたいと思えない子もいるし、関係を切れない子もいるから」

彼女が言葉を選びながら、私に告げる。
価値観が違うものに対峙した時、荒々しい否定に走らずに、やんわりと肯定しようとする彼女の態度が、私は好きだ。

だから私も、
「そうかもね」
と返した。

「私はあまり人に依存しないから、人間関係はシンプルにしちゃう」
「人に依存すると関係は簡単に切れないし、どっちが良いとかじゃなくて、それだけのことだと思うよ。価値観が違うから」
「大体、人に依存してない奴じゃないと、2年間家族と離れてほとんど連絡なしで平気なんて、無理だから」

私がそう説明すると、彼女はしばらく押し黙って、「そうか、そうだよね」とつぶやいた。彼女なりの着地点を見つけたのだろう。

「初日にそんなようなこと言ってたね」と彼女がいうので、「よく覚えてたね」と私が返したら、「あなたが変だったから」と返ってきた。変だったからってなんだ。

これから先、彼女との価値観の違いには何度か相対するのだけど、そのいずれも、今回のような着地をする。
とりあえず受け入れてみようという姿勢から入る彼女だからこそ、私は価値観の相違を見せたのだろうし、彼女のそのやわらかさはとても好きだった。


そんな話をしていると、少し見覚えのある場所に出ていたらしい。
いつも家に帰る道の反対方向から山を登り始めたのに、くるりと一周したら、家の近くの道に繋がっていたようだ。

私は全く見覚えがなかったのだけど、ちょっと前に家の畑に手伝いに行った彼女が、「ここ、多分お父さんがバイクで山を降りていく道だよ」と言いながら、先を歩き始めた。本当に頼りになる。

しばらく山道を歩くと、ようやく家が見えてくる。

家に入って、先に戻っていた日本人ボランティアの子に声をかけ、畑から戻ってきたお母さんにお茶を淹れてもらって、各自やりたいことをやり始める。

1、2時間ほどの、二人っきりの少し深い会話は、何事もなかったかのように日常に溶け込んでいった。


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