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【第2話】 「 中華食べたい」と同じ

もうタイトルから前回とテイストが違うなと思ったあなたは、勘がいいと思う。何事も最初は大人しくいかないと、ね?

彼からメッセージが来て、二言、三言交わした。アップされている写真には整った顔と筋肉のついたいい身体。取り留めもない話を交わすなかでわかったのは、彼が歳下で、まだ大学生であることと、性欲に従順そうな感じ。アプリに戻ってきた理由を問われた時私は「急に我を忘れるようなセックスがしたくなった」と答えた。直球だなと笑いながら、「俺もそういう貪り合うセックスしたい」というので「私、飛び抜けた美人じゃないけどフェラはうまいよ」という餌をばらまく。「がち?」食いついた。フェラがうまい女に食いつかない男などいない。大学時代からこれだけは本当に得をしてきた。でも、お金がないのですぐは会えないらしい。ホテル代を気にしているらしかった。お金の工面ができそうらしいGW後半に会う約束をして、LINEを交換した。

お互い割り切れるかという話にもなった。こんなアプリでガチ恋なんて馬鹿馬鹿しいよなという彼に、「セックスしたいってさ、私の中では中華食べたいと同じ感覚だよ」と打ち返す。あーわかる、という通知。合意が取れたらしい。いやわかるなよ、と笑ってしまった。恋愛と性愛が微妙に繋がっていない二人の、なんとも言えない空気感が、トーク画面を埋め尽くした。

翌日、仕事終わりの私はなぜか酷くムラついていた。昨日のイケメンのせいかあ?と思いながら、またLINEを返す。一人暮らしだということは伝えていた。猛烈にセックスしたい、と言うと、行こうか?笑 と一言。人んちラブホがわりにしようとしてんな?笑ってんじゃねえよ、と思いながら、指ではおいで、と返していた。なぜか彼なら呼んでいい気がした。予定より少し早い対面となった。

※基本的にアプリの男を初回で家に招くことはご法度だと考えている。良い子の皆は絶対に真似しないでほしい。呼んでいい気がしたから呼んでみて万が一殺されても私は責任を取りきれない。

20時、最寄り駅待ち合わせ。定刻に現れた彼は帽子をかぶってマスクをしていた。170cm後半の等身と、顔はほとんど見えていないにもかかわらず、はっきりとわかるほどの美貌。写真よりもかなりかっこよかった。あまりこういうことはアプリでは起こらない。基本皆いいかっこしいなのだ。まあ顔を載せていない私が言えたことではないか。が、近づいてきた一瞬で分かった。...苦手な匂いだ。私は鼻がいいからか、遺伝子的に合わない(?)人からは苦い匂いがする。でもここまできて後戻りするのもな、と思い、とりあえず家に向かった。80%くらいはイケメンだからいいかーというクソ下心があったことは内密にお願いしたい。

パンツびろーん

家に入り、このご時世なので手洗いうがいをしっかりと済ませる。横目でマスクを取るところを見た。まずい....!とんでもないイケメンを連れ込んでしまった。イメージで言うと、顔の上半身が真剣佑で、下半身が竹内涼真の唇を少し薄くした感じ。ボルテージを順調に上げながら、飲み物を出す。ありがと、と言いながら当然のように部屋の真ん中に置いている1人用ビーズクッションに腰を下ろした。末っ子でしょ、という私になんでわかんのー?とアホ面を向けてくる。やっぱり苦手な匂いだ。そのうち慣れるかなと思いながら、私もベッドの淵に腰を下ろす。すぐ手を出してこないことに少し驚いた。文面で見る限りゴリゴリのヤリチンだと思っていた。でもすぐに触れてはこない。それどころか目もあまり合わせてくれない。

「俺人見知りなの」彼がこちらを見ずに言う。あー...意外、とつぶやいた私は半分スイッチが入っていた。いや、この見た目の良さで?人見知りなの?可愛すぎない?いやマジで触れてすらこないのなに?ソーシャルディスタンスですか?こっちから行っていいの?と私の中の肉食女子が暴れ出しそうになっていた。ベッドに乗ったまま少し近づいてみる。彼の肩に私の腕が触れる。なんでもなさそうに世間話をすることでどうにか理性を保った。社会人が無闇に大学生なんて襲うもんじゃない。

彼の腕が、私の左脚に回された。ギリギリのところで耐えながら話をしていると、だんだん彼がベッドに上がってくる。ズリズリ、ナメクジみたいな変な動き。大丈夫かなこの人。奇妙なことをするなと思いながらじっと見ていたら最終的に寝転がった。珍妙なベッドインの仕方にジワりながら、そろそろかなと思う。こちとらもう右脳あたりが弾け飛びそうだった。少し彼側に体重をかけて近づく。腕を、軽く掴まれる。目が合う。時が止まったみたいだった。目は彼に向けたまま、空いている方の手でリモコンを常夜灯に切り替えた。

先に言っておこう。次の話はヤバい。スマホで読んでいるときは是非後ろをちょっとだけ気にしてほしい。

第3話へ続く。

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