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ラチェット&クランク パラレル・トラブル -PS+エクストラ探訪-


 本作が目を惹くのは、その贅沢さだ。アクションに一家言持つInsomniac Gamesによる楽しく快適なプレイ感と、技術水準を見せつける情報量の多いグラフィックス。そして何より、それらを15時間ばかりの一本道に詰め込んで水増しする事無く使い捨てた思い切りの良さ。プレイ感とグラの双方が高水準且つ高密度に詰め込まれてた体験のリッチさこそが本作の魅力だ。子供向け風の見た目とバタ臭さが混ざった絵面は日本人好みはしなさそうだが、それを押し切ってでも手を出して損が無い。サブスクでなら尚更だ。



 戦闘は、武器の多彩さと残弾の少なさが特だ。各武器の性質を理解し、運用を嚙み合わせ、武器同士のシナジーを引き出しながら有りっ丈の弾を撃ち込む。敵の攻撃も結構痛く、撃つか避けるかの判断が常にピリピリと走り続ける。この忙しなさとギリギリ感が堪らない。爽快感だけではない、戦術判断が要求される切迫感は、流石アクション屋であるInsomniacの仕事という所。


 ド派手な演出も併せて、戦闘における楽しさの発生源を良く押さえている。シリーズを知らない人が戦闘を目当てにプレイしても応えてくれるだろう。その分、難易度はやや高めになっている事には注意。



 探索パートは、パズルやプラットフォーマーをこなしつつ、リッチなグラフィックで作られたロケーションを観光出来る。マップの規模は大小様々だが何れも緻密で、その水準は発売から二年経った今でもPS5の突端にある。最近になってPS5の入手が容易になった事で、本作の食べ頃は再度訪れる結果になった。

 

 高速パルクールとプラットフォーミングによる移動自体の気持ち良さと、レイ・トレーシングによる情報量の多さは、現行機の性能をプレイヤーの目に焼き付けるのに十分な物がある。ロンチタイトルでは余り得られなかったPS4との隔世感が詰め込まれている。自機では無く世界が動くワープ表現は(動画だとピンと来ないだろうが)経験した事のない空間認識を体験出来るので実際にプレイして味わってみて欲しい所だ。



 ラチェクラは国内の知名度は低いが、良質なアクションアドベンチャー最新技術展覧会としての期待を背負った、PS陣営の旗艦シリーズだ。楽しさの種類に革新性は薄いものの、アクションアドベンチャーに期待される普遍的な楽しさの水準を更新し続けている。本作のサブスク入りを快く思えない人は消費者にもクリエイターにも多いだろうが、こと本作に限ってはPS5自体を象徴するタイトルとしてより多くの目に留まる冪だろう。いっその事、ASTRO's PLAYROOMと一緒にPS5に付いて来た方が良かった位だ。