見出し画像

物理とお使いのアトリエ(百英雄伝 Rising)


 本来『お使い』とは、プレイヤーが口を開けていれば戦闘や探索を放り込んでくれるとても有難い物。お使いが『お使い』に堕してしまうのは、それをしても変化が期待できないと確信してしまった時だ。そこで百英雄伝Rは、変化を提供し続ける事でお使いの楽しみを持続させている。

 

具体的には、こなしたお使いの数に応じてストーリーが進展したり、町が発展(施設が拡張)したり、キャラが強化出来るシステムが有る。こなす程に、目に見える報酬実感のある変化が訪れるため、お使いを続ける動機が途切れない。


 そして本作は、村人達のお願いを聴いてはお使いをこなす作業ゲームの大部分を占めている。成果に実感があるため、「素材集めてきて」「アイツ倒してきて」等のお願いが沸いてくる様を、ガチャのチケットが溜まっていくかの様に受け入れられる。プレイヤーは涎を垂らしながらお使いを追い求める事になるだろう。


 ゴリ押しが利くタイプの戦闘も、お使いの楽しさに一役買っている。サクサクと捌いて進む気持ち良さと、消耗しながら削り合う一部ボス戦は、共にお使いでキャラが育った実感を得やすい。特に後半のボスは立ち回りよりもキャラ育成が物を言う調整になっており、手塩に掛けたキャラ達が殴り合いながらHPを消耗していく戦いは手に汗を握らせる。アクションも探索もストーリーも施設拡張も、お使いの楽しさをドライブするための物。ゲームを進行するためにお使いをこなすのでなく、お使いを楽しい物にするためにゲームが膳立てされている


 注意すべきは、小さなマップを繋ぎ合わせた疑似的なオープンワールドゲームである事(アクワイアのアキバシリーズみたいな構造)。ファストトラベルは充実しているが、同じ所を繰り返し行きし、同じ敵を何度も倒す事になる。面クリ型でテンポ良く進みたい人メトロイドヴァニアとして探索と開拓を重視する人の好みとはズレるだろう。ストーリードリヴンな育成ゲーなので、2Dゲームに手応えのある硬派なアクションを期待する人は注意。


 お使いに纏わる悪印象を払拭し、本来楽しい物である事をプレイヤーに思い出させる逸品。単にアトリエの様なお使いを捻じ込んでいるだけでなく、手軽さ、飽きの遅さ、成果の実感が互いを犠牲にする事無く詰め込まれている。別ゲーのプロローグとして出たのが疑問な程に完成されているので、本編発売より前に、サブスクなりセールなりで手軽にプレイ出来る機に。