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鬼ノ哭ク邦 -PS+エクストラ探訪-

 簡単にいうと、平均化され優等生となったCRYSTAR(FURYU)。ARPGの形を採る胸糞系アドベンチャーだが、CRYSTARと比べてストレスが少なく、プレイフィールが均一で、間延びも気にならない範囲。一般評価は芳しくないが、パっとの手触りの良さは腐ってもスクエニ(が目をつけた開発)と言う所。発売はCRYSTARの方が後なので、鬼ノ哭ク邦を尖らせたのがCRYSTARと言う冪だが、ただ、あちらとは別の方向性で人を弾いている



 本作の戦闘とストーリーに共通した特徴が、結構なスロースタートという事だ。開始直後、お話は低いテンションで淡々と進んでいき、戦闘も疎らな敵をプチプチと潰していくだけ。進行に伴ってストーリーが動き始めると、呼応して戦闘も激化。大量の敵をザクザクと切り刻む爽快な物へと変化していく。底から始まり徐々にギアが上がって行くレベルデザインは意図された物だろうが、最初がタル過ぎて投げたと言う人も居ただろう



 加えて、この最初のスローさ楽しめるか否かは、そのまま全体を楽しめるかどうかのリトマス紙にもなっている。確かにストーリーは進行に伴ってヒートアップするのだが、トップギアに至っても尚、序盤のノリの延長線上から外れない。緩急はついているが、その山も谷も、静謐で淡々としたノリが維持された範囲内で表現される。胃が痛くなる様な修羅場が味だったCRYSTARとは対照的だ。



 この村上春樹をキメた様なノリは確かに読んでいてストレスが無いのだが、燃える様にテンションが上がる場面も無い。全体を通して無力感と虚無感が支配する物語がウリで、エンディング(3種)も「まぁそうなるわな…」と無情な納得を得て終わる物が多い。往年の名作の再来を謳いながら本作(と、過去作)がリリースされた事を思うと、ノリの違いに失望した人は多かっただろう。ACfAの企業連エンドあたりが好きな人には刺さるかもしれない。



 ARPG部分が妙に爽快なのは、虚しさで舗装したストーリーでモチベーションを保つためでも有るのだろう。無双系ほどの派手さは無いが、範囲攻撃でモブの群れを一網打尽にしたり、大技でボスのHPをゴッソリ削るのは気持ち良い。キャラ育成が進むまでテンポが悪いのは気になるが、最終的にはプレイヤーをお話の最後まで引っ張ってくれるだけの物には成る。戦闘のつまらなさが散々に足を引っ張ったCRYSTARよりはだいぶマシ。



 大作感が無い小綺麗かつローテンションなお話とシステムで、6400円という定価に期待する仰々しさが足りていない。こじんまりとした全体像には、詐欺にあった気にさせられた消費者も多かっただろう。皮肉だが、サブスク入りした事で妥当な評価の機会が増えそうではある。