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私の姉は、一生可愛い


昨日久しぶりに母と会った。
昼に高円寺のカフェに行き、
夜は私の家の近くの居酒屋に入った。
姉の話になった。

姉が中学1年生の時、母が呼び出された。
理由は、ピアスを開けたから。
でも先生が伝えたかったことは、ピアスではなかった。
「いつも、ひなのばっかり」と学校で泣いてたらしい。
ひなのは妹の私。

姉は小さい頃、いつも言っていた。
「ひなのばっかりずるい」って。
小学生の頃、喧嘩をすると姉はいつもこう言っていた。
「月曜までに学校の屋上から飛び降りて。それか今死んで。ひなが死なないなら私が死ぬ。殺して。それか死んで。どっちがいい?」
姉の必死の訴えに、私は両方嫌だと泣いていた。
いつも、母が帰ってくる車の音を待ち望んでいた。
母にこのことを、言ったことはなかった。

それでも2つ年上の姉は、私の憧れだった。
明るくておしゃれで、とても大人に見えていた。

中学に入ると、姉は私の趣味を誰よりも応援してくれた。
大学に入ると、姉は一人暮らしを始め、たまに会う私をすごく可愛がった。
歳をとるにつれて姉は、妹と弟のことが大好きな姉になった。

そんな姉は、もういない。
「ごめんね」と言って、真っ暗な夜中に飛び降りた。
どれだけ怖かっただろう。どれだけ悲しかっただろう。

姉が考えくれたお出かけの予定はもう一生果たされない。
「築地でお寿司からの、銀座でお買い物しよう。」
日にちも、着ていく服も決めていたのに。


今でも祖父母の家に行くと、私は姉の名前で呼ばれる。
姉の友達に会えば、似てると言われる。

姉と私の性格は正反対だった。
姉は敏感で悲観的。私は鈍感で楽観的。
それでも姉の親友には、「似てるから会いたくなる」と言われた。

姉の遺体の前で言われた
「お前が死ねばよかったのに」って言葉。

姉が亡くなった直後に何人かに言われた
「両親は辛いだろうから支えてあげてね」って言葉。
何回思い出しただろう。

誰のことも恨んでない。
恨んでないけど、やっぱり思い出すと悲しい。
恨むべき人がいてくれたら、もっと楽だったかもしれない。


姉は当時21歳で、可愛い可愛い黒のワンピースを着て、
一番可愛いまま動かなくなった。
だから私の姉は一生可愛い。
姉がシワシワのおばあちゃんになるところなんて、たぶんこの世の誰にも想像できない。
もし歳を重ねていたとしても、儚くて脆くて危うくて見てられなかった気がする。
それくらい、細くて白くて綺麗で可愛かった。


そろそろ私は姉を追うのをやめないといけない。
姉を追って、夜職をしたり整形をしたりした。
でももう私は、今年24歳。
新宿駅の地下で、姉の前で号泣して慰めてもらってた私は、姉より3つも年上になる。

姉を追うのを、やめなきゃいけない。
じゃなきゃ私は、飛び降りたくなる。

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