自殺直前日記 (山田花子(裏町かもめ)著) を読んだ感想

山田花子とは?

山田 花子(やまだ はなこ、1967年6月10日 - 1992年5月24日)は、日本の漫画家。本名、高市 由美(たかいち ゆみ)。旧筆名は裏町かもめ、山田ゆうこ。(Wikipediaより)
非常に陰鬱な作品が多いんだけども,人間関係という「外圧と内圧のバランスをうまくとらないといけない、極めて生物的でありながら高度に政治的でもある場」において弱い立場に置かれることが多かったであろう作者の視界に嫌でも入ってくる「人間のいやらしさ、醜さ」が作品群の特徴だと思う。(ごめん,こっから話し言葉で書くわ)

自殺直前日記の特徴と私が読んだところ

・この本は基本的に作者が生前ノートやらに残していた随筆や断章を一冊にまとめ、それに家族や生前関係していた人物によって書かれたチャプターを足したものとなっており、社会生活に馴染めなかった作者(の視点)と、社会生活を送ることができて,今も生きている周囲の人物(の視点)が一冊の中に並存している。

・「世界は嘘つきーまず「常識」を疑え!」「心の病・原因と治療法」「私の生き方考え方-処世術について」のように、後者の人物たちが「こういうもんだ」と受け入れているところを、作者は受け入れることができないため、ある種ノウハウ本のよう
な題名が随筆部分に付いている。

次の部分は「この世のワナ」の章の「予定調和の法則」という部分である。

公平,というのは建前で,現実は理不尽で不公平な予定調和の法則,で成り立っている。強い方から弱い方へ順番にいじめて鬱憤を晴らすことで,世の中の調和が保たれている。もし,自殺は悪くない」ということになってると,今度は,いじめる相手がいない最底辺から自殺してしまい,社会が成り立たなくなってしまうので,この世は,自殺は害悪,という常識を作っている。この常識を弱者に押し付けることで,社会の調和が成り立っている。(1990/4月)

「無敵の人」論が現在取り沙汰されるが,それを先取りしていたのすごいと思った。

これまで出会った嫌な奴の特徴を列挙しまくったり,自分の悩みへの対処方法(といっても,対処し続ける,という茨の道を選び、「自分に問い続けるしかない」としたのが作者なんだが)を綴ったり、とても偏執的でありながら高潔な生き方をした人だと感心させられた。芸術家かくあるべし。


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