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しゅわっとする日々 心を開くって何?

◆NEFNEに関わる人たちによる自由連載《汽水域の人々》
雑貨屋&フリースペースのお店「NEFNE」で交わるひとびと。多様な執筆陣がリカバリーストーリーをはじめ、エッセイ、コラム、小説など好きなように書いています。

こんにちは、松竹梅です。よろしくおねがいします。

みなさまは、心を開くように人に言われたことがありますか?
私はあります。
以前、とある島に住む霊能者に会いに行ったことがあるのですが、その時言われました。
でも心を開くってどういうことかその時はわかりませんでした。

今なら少しわかります。人を信頼するってことです。たぶん。

それって、言うのは簡単だけどとても怖いことだと思います。毒か薬かわからないものを一気飲みするような怖さ。

ここで唐突ですが、失礼して私の思い出話などさせていただきます。

私がまだ若かったころの話です。

家にいるのがとても不快でしんどくて、でも外に出ることもできなかった私は毎日、電気を消した部屋でブラウン管の光に包まれてました。

今日は昨日となにも変わらなくて、たぶん明日も今日となにも変わらなくて、いつまでも、ずっとこのまま。
気を許せる人はひとりもいなくて、みんな敵でした。

そんなある日、ブラウン管にひとりの女性が映りました。それが先ほどの霊能者。
私はこの人に会いに行こうと決めました。
ひさしぶりに外に出たら、眼鏡が合ってなくて世界が丸く見えました。

閑話休題。それからいつの間にかけっこう時間が経って、私は今作業所に通ってます。
作業所のスタッフの人はみんな優しいです。

作業所に通ってる人を利用者っていいます。スタッフの人の優しさを利用する者っていう意味かなって思います。
優しさを利用されるってどんな気持ちだろう。

映画とかで、何日も砂漠を彷徨った人がオアシスで水をがぶ飲みして死ぬシーンってありますよね。
水でさえ人を殺す毒になります。だったら人の優しさはそれ以上の猛毒かもしれません。

ふと考えたりします。
もしもいつか、人の優しさを信じれて心を開ける時が来たら。
そして、ブラウン管だけが光る部屋から本当の本当に脱出できたとしたなら。
その時私の胸におしよせるのはきっと、耐えきれないほどの悔しさ。

悔しすぎて死ねたらいいのに。

【今回の執筆担当者】
松竹梅/好きな食べ物は麺類と鍋もの、好きなチューハイはキリン本搾りレモン。幸せになりたいです。


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