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史料入力時間の短縮方法案(書籍院建設ノ儀ニ付文部省出仕市川清流建白書)

歴史の論文を書いていると、史料の入力というのは厄介なものであって、それなりに時間が取られるものでもある。平仮名とカタカナの変換にF7を連打したりとかする。

それがどの程度楽になるかをちょっと試すために、竹林熊彦『近世日本文庫史』を次世代デジタルライブラリーで検索して、「この資料の全文データ」を選択してテキスト化されたデータをダウンロードした上で、例えばということで市川清流の建白書の部分を抜粋したのが以下。

書籍院建設ノ儀ニ付文部省出仕市川清流建白書
三代聖王ノ天下ヲ治ムルヤ、人才ヲ擧ル汲々トシテ夢寐措ク無シ、卽索メテ胥徒釣叟ニ及ふ所以ナリ、今ヤ我國庶政一新、文明日ニ盛ンニ内ハ學校ヲ府縣ニ設ケ、外ハ生徒ヲ歐、米、清ニ學ハシメ、將ニ大ニ他日ニ期スル所有ントス、加之近者都下ニ博覽場ヲ開キ衆人ニ縱管セシムル等皆是人才化育ノ方ニ非ル無シ、然リ而シテ今日尙ホ一層ノ文化ヲ進ルノ擧ハ書籍院ノ設ケニ若クハ莫カルベシ、其方府內ニ於テ市街ニ接近セサル高爽ノ地ヲ擇ミ、一大書院ヲ建造シ、室內ノ四周ニハ皆數層ノ架ヲ設ケ、所有群籍ヲ蒐輯シ部分類別シテ架上ニ收メ普ク諸人ニ此處ニ來テ繙閲スルヲ許シ博ク考古徵今ノ資ニ供シ、或ハ著述編輯ノ便ニ充ベシ、是卽人材培養ノ本、國益增殖ノ源、宋ノ大宗ノ開卷有益ノ語以テ證ト爲ヘシ、甞テ聞ク楓山御文庫中ニハ、多年收藏スル所ノ群籍無慮數萬卷、從來高閣ニ堆積シテ敢テ世人ニ視スヲ許サス徒ニ蠧魚ノ腹ヲ肥シムルノミナリト、仰キ冀クハ今其群籍ヲ以テ前條ノ院ニ移シ普ク世人ノ縱覽スルヲ許サルレハ上ハ以テ天物ヲ廢棄セス下ハ以テ人才ヲ開達ス、實ニ千古ノ盛典タルベク天下ノ鴻幸ナランカ微臣辱ク文林ノ末ニ班スルヲ以テ敢テ味死シテ鄙見ヲ陳シ又甞テ英都「龍動」ニ於テ目観スル所ノ書籍院建設ノ大意ヲ附記シ、謹テ之ヲ閣下ニ呈ス伏テ希クハ唯献芹ノ愚悃ヲ憫ンテ其言ノ罪ヲ問ハレズンハ幸甚
英都「龍動」ニ建設スル所ノ書籍院ハ、圓形穹隆造リノ最宏壯ナル結構ニテ室内周廻ニ三層ノ椽ヲ環ラシ、其周圍ニ數層ノ架ヲ施シ、無數ノ群籍ヲ收メ置キ、其繙閱ヲ希フ者ハ當人并ニ戶長兩名ヨリ院長エ願書ヲ出シ、其許可ヲ得テ此處ニ入リ、群籍目錄ニ因テ某部某號某書ヲ借覽致シ度旨、院ノ小吏ニ囑スレハ輙其書ヲ取來リ交附 讀了後亦之ヲ小吏ニ還附シ敢テ借覽人ノ縱ニ出納スルヲ許サス而シテ日々來テ看讀シ又鈔錄スルモ妨ナシ、特卷册ヲ院外ニ出スヲ禁セリ、尤其年齒廿歲以上ノ者ニ非レハ此請ヲ許サス、蓋シ此借覽ヲ希フハ學業頗ル成リシ者ノ博ク考古徵今或ハ著述等ノ資ニ供スルカ爲ニ設ケタル處ナレハナリ
書院中借覽人外他ノ關入放觀等ヲ許サス、但シ此處ノ續キノ別局ニ地圖并ニ畫圖類及ヒ我カ東京ノ地本ト稱スル如キノ書類類書ヲ陳列シ置テ、衆人ノ縦覽ニ供スル所アリ、
右書院建設ノ起原ハ、今ヨリ數世前ノ國王其志學問ニ篤ウシテ、畢生蒐集スル所ノ書籍數萬卷アリシニ因テ此擧ニ及ヒシニ、爾後國民ノ寄附シ來ル者有テ歲月ニ增加シ、旣ニ數年前檢スル所ニ據ニ三十六萬册ノ多キニ及ヒ、遂.ニ今日ノ如キ盛大ヲ極ムルニ至ルト云

ただしこの作業では、コマ数を確認しておくことが必須となる。

ここから史料を引用して論文に使用する際には、もう一回原本との照合しなければ怖くて使えないところではあるが、旧漢字を常用の字体に直したりとか、また誤記や読み取りミスが無いかを確認する作業時間は、それでも手で入力するよりは早いかもしれない(同じ文字を変換するならこれを貼り付けたWordファイル上などCtrl+Fを押して置き換えるのでもよさそう)。カタカナの「ニ」が漢数字の「二」とかだったりするのはちょっとめんどくさそうだけれど。

途中で平仮名になってたり「変かな?」と思うところはあるけれど、これは人力で入力したって見直ししなければ間違いがあるだろうから、精度としてはなかなかのものに思われる。

とくに明治期の漢語が多いものであればなおさらだろう(ルビが入っていたり、レイアウトが2段組のものになったりすると急に難しくなったりとかはしそう)。とはいえ少しでも早く入力でき、論文執筆にかかる時間を短縮できるようなtipsとして一応候補にしておきたい。

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