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筑波大の大学院で日本の近代史(社会史・文化史)を、同比較文化学類で日本研究コースの担当…

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筑波大の大学院で日本の近代史(社会史・文化史)を、同比較文化学類で日本研究コースの担当をしています。 このnoteでは、いただいた本や仕事・研究で読んだ本、授業で話すための小ネタ集、その他教育研究活動の一部の紹介をしていこうと思っています。

マガジン

  • 訪問先の記録

    歴史と文化にまつわる、ここ行ってきたよ。という場所を、過去の訪問も含めてまとめています。

  • 書いたことと話したこと

    これまでの長尾の研究成果をまとめております

  • 日本近代の思想・文化小ネタ集

    日本近代史の授業などで話す小ネタです(タイトル画像はNDLイメージバンクの井上安治の東京名所絵より)

  • みちくさのしおり

    いただいた本や、仕事のために読んだ本、学生に勧めたい本を備忘のためにまとめています。

  • アカデミック・スキルズ小ネタ集

    調べ方、読み方、書き方、プレゼンなどのアカデミックスキルズに関すること、卒論・レポート指導の授業で使えそうなネタを集めています。

最近の記事

  • 固定された記事

note開設にあたって

こんにちは。長尾と申します。お読みいただきありがとうございます。 大学と大学院で日本の近代思想史を学んだあと、図書館に入って11年ほど勤めました。その後、大学に移り、現在は国際大学で留学生も含めた学生たちに日本史と日本文化を教えています。 専門は日本近代史・思想史・メディア史・図書館史や出版の歴史などです。 別途、ホームページを作っています。 複数の本をまとめて紹介するブログも書いています。 長らくTwitterを使っていたのですが、少し言いたいことを続けて書くとだ

    • 筑波大周辺の本屋さん

      同僚の先生から、1年生向けに筑波大周辺の書店を紹介したいという相談を受けた。 かつてつくば市内にあった書店や古本屋さんもどんどん変わっていっていることもあり、何かしらのリストを作っておくことは重要ではないかと思い、また、自分のところでも同じようなことをしたほうがいいとも感じたのでとりあえず簡単なリストを作ってみることにした。 以前勤めていた大学である先生がオリエンテーションで言っていた言葉が私の中にも深く刻まれており、つくばで学生生活を過ごす人にもぜひ知ってもらいたいので

      • 『読んで観て聴く 近代日本の仏教文化』

        いただきもの。 日本の近代仏教研究が活発なのは、いまさらいうまでもない近年の研究トレンドだと思うのだが、なかでも2010年代以降、仏教からメディアに注目した研究が多数発表されていることが面白い。 メディア史研究会でも「宗教とメディア」の特集が組まれたところでもある。 そうしたなかで、日常生活のなかに現れてくるメディアを通じて近代の仏教文化の在り方を探ろうとした共同研究の成果が本書である。メディア史研究特集の著者も少し重なる。 個人的に特に衝撃を受けたのが「最澄絵伝の歴

        • 常昌院訪問の記

          3月の終わり、静岡県藤枝市岡部町にある常昌院というお寺に伺った。 ここは兵隊寺とも言われ、本堂には日露戦争に出征して亡くなった方の霊を弔うために一体一体木製の人形が安置されている場所なのである。 今年度、卒論で「兵隊木像の成立と地域社会-静岡県藤枝市の常昌院を事例に-」という論文を書いた学生がおり、私は副査に入ったので初めてこのお寺のことを知った。 学生が執筆にあたって夏からこちらのお寺を訪問し、さらにご住職から史料をお借りしたので、その返却に行くという学生から誘われたの

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          4本

        記事

          図書館史と学校図書館と情報検索と

          みちくさのみちpodcast史上初のゲスト回です。 学校図書館の歴史について研究し、現在も様々な取り組みを行われている図書館情報学研究者の今井さんにお話を伺いました。 (2024年3月某日、Zoom収録)。 卒論のテーマ決めから、高校生と大学生の検索の目的の違い、Wikipediaとの付き合い方まで、ぜひお聞きください(全4回配信)。

          図書館史と学校図書館と情報検索と

          好きなマンガのはなし

          とにかく更新せねば、などと思って過去最高にゆるい回になってしまいました…。これまで読んできたマンガ、今読んでいるマンガの話をしています。 ※取り上げている作品 みずしな孝之『幕張サボテンキャンパス』(竹書房) 細野不二彦『ギャラリーフェイク』(小学館) 冬目景『イエスタデイをうたって』(集英社) さいとうたかを、戸川猪佐武原作『劇画・小説吉田学校』(読売新聞社) ゆうきまさみ『新九郎、奔る!』(小学館) 北崎拓『ますらお~秘本義経記』(小学館) 末永裕樹原作、

          好きなマンガのはなし

          三康図書館訪問

          先日のことなのですが、港区にある三康図書館に久しぶりに足を運びました。 赤羽橋の駅を降りて、東京タワーを眺めながら向かうとそこにあります。 ここは博文館が作った大橋図書館の蔵書や資料を引き継いでいる、博文館や図書館史に関心がある人は必ず訪れるべき場所なのです。 コロナ禍にはしばらく訪問できず、リニューアルしてからも初めて行くような形だったんですが、今回も貴重な発見がたくさんありました。 しかも、申し込むと書庫見学ができるということで、こちらも初めてお願いして、宝の山を

          三康図書館訪問

          国立国会図書館の来た道、行く道

          機会をいただいて、「帝国図書館の遺産 国立国会図書館に引き継がれたもの」というお題で講演してきました。 ご一緒させていただいたのは、『夢見る電子図書館』を上梓された中井万知子さん、出版関係の本を多数執筆されているライターの永江朗さん、収集書誌部の竹内さん。 2023年にNDLの歴史に関する著作が立て続けに刊行されたので、それを踏まえてNDLの将来について考えようというものでした。 私自身は、帝国図書館設立に賭けた人たちが国立図書館にどういう思いを寄せていたか、また実際の

          国立国会図書館の来た道、行く道

          近代日本の図書館と「読書習慣ニ乏シキ国民」

          『メディア史研究』55号(2024年2月)掲載。2023年9月のメディア史研究会研究集会「メディアとしての図書館」発表内容の活字化です。 私も絶大な影響を受けた永嶺先生の名著『読書国民の誕生』が講談社から文庫に入りましたが、私なりの応答のつもりで書いた論稿です。 明治30年代、帝国図書館も出来、国民の読書環境はよくなっていったはずなのに、図書館関係者は、明治以来、図書館の利用が少ないことを、読書の習慣が定着していない国民性に求めてきたということと、その認識の転回を昭和戦前

          近代日本の図書館と「読書習慣ニ乏シキ国民」

          田中稲城の死

          2月22日は帝国図書館長、田中稲城の命日である。 拙著『帝国図書館』にて田中退任をめぐって「無念の退任であった」とし、「後に田中は郷里に戻り、一九二五年二月、病により世を去った」(p.187)と書いたところ、田中稲城の死因は自殺ではなかったのか?という質問を、実は複数の方から受け取った。 この説は、今なお広まっており、特に少し田中稲城について知っている人ほどそう思い込んでいるらしい。 この話の元になったのは、衛藤利夫の回顧録の記述で、さらにこれを引用した田中稲城の伝記が載

          田中稲城の死

          田舎教師の墓

          埼玉県羽生市の建福寺。東武伊勢崎線の羽生駅からほど近い場所に、それはある。 田山花袋の『田舎教師』に登場する主人公・林清三のモデルとなった人物、小林秀三の墓である。 私にとっては、『田舎教師』という作品は、20代の終わりころ、明治後期の青年たちが、雑誌を発行しては寄贈したり文通をして「投書家交際」を行なって、地方文壇の付き合いが活発に行われていたこと―「誌友交際」のネットワーク―に気づく重大な示唆を与えてくれた作品でもある。 舞台となった行田の図書館には、実は小林秀三の関

          田舎教師の墓

          加茂市立図書館と坪谷善四郎

          ここしばらくの間、科研費の研究のため、新潟県の加茂市立図書館に行って調査を続けています。 ここは博文館の編輯局長であった坪谷善四郎の郷里であり、彼の寄付によって設立された図書館が、今日まで伝わっています。坪谷の関係資料が寄贈されていることもあって、博文館の研究をするため重要なものがいくつも残されているのです(その辺のことは最近はWikipedia記事にも載ったようです)。 また、その史料についての調査結果もあります。 もともと卒業論文で、博文館の『太陽』で活躍した高山樗

          加茂市立図書館と坪谷善四郎

          「知の巨人」の時代

          思うところがあって少々「知」という言葉の用法を集めている。 そのうちに「そういえば戦前日本の学者で「知の巨人」っていう形容をする人は見たことがないな。きっと戦後の用法なんだろうな」と思いをめぐらせた。 それでふと思いついて、NDL Ngram Viewerで「知の巨人」という単語を検索したら、1978年以前の用例に遡れないと知った。本当だろうか。 ※念のためデジコレで調べ直したが、「未知の巨人」とか「ご存知の巨人軍」という用例はそれ以前にあるが、独立した用語としては確かに

          「知の巨人」の時代

          インタビューを載せてもらいました

          Web中公新書のページに、拙著『帝国図書館』にまつわるインタビュー記事を載せていただきました。 3月のイベント告知もしていただいております。 私自身のこれまでの研究と帝国図書館研究の関わり、思い入れのある人物、これからの課題・・・などについて語っております。 よろしければご覧ください。写真も素敵なものをプロの方に撮っていただけて、大変うれしく存じます。

          インタビューを載せてもらいました

          印刷博物館「明治のメディア王 小川一眞と写真製版」展

          明治時代に活躍した写真師・小川一眞(おがわかずまさ)の仕事に焦点を当てた展示。 久しぶりに印刷博物館にも訪れたが、行ったことがない学生さんとは一度来てみたい。近代史にもメディアにも関心がある人は常設展から必見だろうから(奇しくも、共通テストでも百万塔陀羅尼とか印刷史の問題が出題されたようであるし)。 さて、小川一眞である。 ※「かずま」だと呼んでしまうことがあるが、本展示では「かずまさ」とルビが振られていた。 展示では、写真と石版印刷という新しい技術が日本にやってきてか

          印刷博物館「明治のメディア王 小川一眞と写真製版」展

          谷口功一『立法者・性・文明』

          白水社刊行の論文集。著者よりお送りいただいた。 昨年は、父親の病気や介護のこともあり、ほとんどすべてのことを実家住まいの母親と弟に見てもらったとはいえ、私も頻繁に帰省した。その折に携え、実家に向かう西小泉に向かう電車の中で読み終えた。その後ほどなくして父が不帰の客となったので、このときの帰省が、実質的に父と最期に言葉を交わした機会になった。 だから余計に色々な意味で忘れられない一冊になった。 立法者とは何なのかとか、『ソクラテスの弁明』を抱いて亡くなった菅季治の話とか、印

          谷口功一『立法者・性・文明』