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新国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)を試してみる

2024年1月、国立国会図書館サーチと、国立国会図書館オンラインが統合されて新しく新「国立国会図書館サーチ」となった。
関係者の方々、おつかれさまです。

新しい検索画面は以下。

白を基調にした明るい画面になった。

NDLオンラインが蔵書検索と申込システムで、NDLサーチがNDLを含む全国の図書館(公共図書館等)の蔵書検索と役割が若干違っていたので、その辺はどう調整するんだろう、などと思ったら検索対象を選択するチェックボックスがついていた。それはそうかと納得。

2012年に本格稼働してから、NDLサーチは「情報の種類や所蔵機関を意識することなく、上記を含めた様々な内容・形態の情報・文献を一度の検索で探すことができ」る(「新しい統合検索サービス 国立国会図書館サーチ」『国立国会図書館月報』604・605号、2011年)を目指してきたところではあるし、今回の統合は、長い時間をかけて歩んできた道のたぶん一つの大きな達成になるのだろう。

できて当たり前と言われれば当たり前なのかもしれなけれど、リニューアル前にNDLオンライン時代にカートに突っ込んだままになっていた情報は、ログイン後きちんと移行されていたのを確認した。これも楽な作業ではなかったと予想されるので、関係者に敬意を。

以下、使ってみて気が付いたことをメモ的に。

書誌詳細画面の表示内容がリッチになった

まずはまあ、自分の名前でエゴサーチしますよね、ということで探したところ、「うわ、書影がある」ということで驚き(統合前からNDLサーチには書影があったが、NDLオンラインを検索する意識で覗くと、やはり新鮮な驚きがある)、さらに詳細画面を開くと、資料詳細という欄に自分のプロフィールがあってまたびっくりした。

検索結果の一覧は書影ありのリスト表示、サムネイル表示のほか、シンプルなテーブル表示もできるようになっている。余計な情報はいらないので大量の情報を一覧したいという場合ならテーブル表示が便利かもしれない。

オンライン書店とかの検索サイトでは少し深いところで出て来るものだが、図書館の検索システムでも、リンクをクリックするのではなくて、初期の同じ画面にこれが出るのが当たり前のところまで来たのかという感慨はある。

それで、旧NDLサーチ(と2023年の時点のものを便宜的に呼ぶが)で右側のカラムに表示されていた内容が、下のほうにぶらさがって表示されるようになっていた。全国の図書館の所蔵、国立国会図書館の所蔵、書店で探すためのリンク(日本の古本屋も含む)、障害者向け資料で読む、書誌情報、関連資料・・・。

関連資料で同一著者や同じの他の本が書影付きで表示されるのは、Amazonなどでは見られるけれども、これも感慨深い。

書誌情報の出力

個人的に感動したのは、「引用文(参考文献注)を生成」と「書誌情報を出力」である。確か2世代くらい前の検索システム(NDLオンラインになる前のNDL-OPAC)には存在していた、簡易ながら引用の際の出典記載例のデータ表示が復活(?)していたことで、しかもそれをクリックでコピーできるようになっている。。

長尾宗典 著. 帝国図書館 : 近代日本の「知」の物語, 中央公論新社, 2023.4, (中公新書 ; 2749). 978-4-12-102749-8. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I032751198

evernoteで文献管理を続けていて、ノートのタイトルに簡単な書誌情報のメモを書く際重宝していたものだったので、このリニューアルは本当にありがたかった。

レファレンス情報へのリンク

じゃあ次は「帝国図書館」で調べてみようかと思って検索すると、検索結果の画面でも書名や雑誌記事のほかに色々な情報が出て来る。

リサーチナビとの連携も、今回の統合の一つの目玉だったと思うのだが、実際、検索結果一覧の画面の下位には、「調べ方のヒントや事例」として、検索語が含まれる調べ方案内や、レファ協の事例が出て来る。また「資料の本文」として、デジタルコレクション本文へのリンクもでてくる(デジコレの全文検索が可能になったことの恩恵といえる)。そのほか、国立国会図書館以外が持っているデジタルデータへの橋渡しとして、ジャパンサーチにも連携している(国立公文書館や、東京大学が所蔵して提供しているデータにすぐ飛べる)。

関連用語や辞書

ちょっとびっくりしたのが、最下層に出てくる「関連用語や辞書」。

「帝国図書館」で検索したときに、雑誌『太陽』の記事名が出ており、何だろうと思って詳細を開いたらジャパンナレッジの検索結果が表示されてきた。これは、旧NDLサーチでもあったような気がするのだが、確か他の検索結果と一緒に一覧に表示されるようになっていたと思うので、あまり意識していなかった。改めて見ると、これはありがたいなあと思う。『太陽』だけじゃなくて『風俗画報』とか、『明治文学全集』とか、ジャパンナレッジに入っているコンテンツが出てくるわけだから。

もちろんジャパンナレッジ自体は有償データベースなので、自宅では直接本文にリンクすることはできないのだけれど(NDL館内にいれば本文にリンクできるのかは未確認だが、おそらくできるのでは)、事前の下調べには十分だろう。内容までは飛べずとも、そもそも横断検索で有償データベース内の項目名だけ拾ってくれるというのは、今後に夢がある(例えば新聞記事への連携など)。

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ほかにもヘルプに目を通していると、カーリルと連携してログイン状態では「よく利用する図書館」での所蔵も調べられるとか、かゆいところに手が届く感じはする。よくここまで…と思う(※ひょっとするとこれも旧サーチでできたことかもしれないが、私がサーチを使いこなす良きユーザでなかっただけかもしれず、そうだったらすみません)。

NDLオンラインとNDLサーチの両方を、ある程度これまで使ってきたユーザとしては、検索画面の操作上の違和感はあまりないように感じられた。(もっとも、デフォルトの表示順序の変更点に関しては検証していないが、もしかするとこの辺の不満は割と出るのかもしれない。更新の都度出るものなので…ただ、個人的には、研究に必要な文献のリストは手元に作るものだし、どうせ全部見るのだからあまり関係がないと思ってあまり重視していない部分でもある。)

なるほど、前のあのボタンはここに来たのかというのも直観的にわかるよう工夫されているのがうかがえるし、それに加えて今度はこれもできるのか、あれもできるのかという驚きがあるというのが最初に触った率直な感想だった。それらは別個に提供されて改良を加えられてきたサービスの積み重ねの上に成り立っているので、われながら変な譬えだが、触っているとパフォーマンスの高い合体ロボのおもちゃで遊んだときみたいな高揚感がある。


巨人の肩に…

もう一つ、変更点として、新着書誌情報(作成中書誌)などのRSS配信が統合にともない終了したようである。新刊書のチェックをRSSでやっていた人は少し不便を感じるのかもしれない(私自身は使わなくなって7~8年くらい経ってしまっている)。

ただ、全国書誌は全国書誌だけ検索できる別画面ができている。

その他変更点はこちらにまとめられている。

他方、これだけの報量を処理するインターフェースに初めて触れた人がどういう感触を持つかはちょっとわからない。学生たちにも演習などで使ってもらって、どこかで躓くのか、少し情報を集めてみたい気もする。いずれにせよ、何か物凄い世界へと繋がる扉に手が掛かったような感じがした。


今後使っていけば不満や改善点の要望も出てくるのだろうが、まずはこの辺で。

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(以下、2024/1/6追記)

高山樗牛に関する最新の研究文献を探そうかと思い、キーワード「高山樗牛」で検索した後、配列を「出版年:新しい順」にしたところ、なぜかZ3-490の「財界」という雑誌がトップにきた。

『財界』に樗牛の記事が載っているということ自体初耳だったので驚いたのだが、樗牛の記事が掲載されているのは、1991年7月の39巻17号の記事のよう。それがなぜ最上位に???と思ったが、雑誌本体の書誌にぶら下がってる巻号で既に2024年刊行の号を受け入れ済だからなのだろう。その号に樗牛は出てこない。

また、詳細検索を開くと、雑誌記事索引掲載の論文のデータは、デフォルトでは検索対象から外れているようだった(雑誌記事等の項目)。

ちょっと困ったが、そもそも高山樗牛の先行研究を探す目的でいきなり『財界』を開くことはないと思うので、詳細検索の資料種別で雑誌の選択をはずし、代わりに、「雑誌記事等」にチェックを入れて検索し直したら、おおむね、希望の結果が得られた。

こういうちょっとした検索のコツのようなものはだんだんネットに出てくるのかもしれない。


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