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銃痕に殺意はあったか? 安部さん襲撃の病院会見にマスコミの人間として思うこと


「銃痕に殺意はあったか?」。

奈良県立医科大付属病院の会見ではシュールすぎる質問が飛びだしたり、似たような質問が何度も飛び出したりと、視聴者の不評は結構なものだったようです。

が、かつて会見取材ざんまいだった自分の評価はちと違う。彼らを笑えないし、むしろよく頑張ったなと思うわけです。
 
取材する側として「取材しやすい相手」と「取材しにくい相手」がいるとしたら、教授は間違いなく後者でした。

言葉数少なめ。専門的な用語多め。質問に対し「はい、そうです」だけで終わる相手ほどやりづらいことはない。

怒られるかもしれませんが、病院サイドは当初、とにかく会見を早く終わらせたいのが見えていた。

当然でしょう。壮絶極まる現場を体験し、過集中も過集中の後。救急医療人生でもどのくらいって感じの体験の後にマスコミ会見ときた。言葉少なめになっても当然です。
 
にしても、記者側の人間として「この質問、この短さで終わらせられたら、あとどう聞けばいいもんかね」と思いながら見ていた。5分くらいで取材終了しちゃうんじゃね?とか。
 
「どうにか長く言葉を引き出せないものか」、現場の記者たちもまた焦燥していたと思います。

じゃないと、「銃痕に殺意はあったか?」なんて質問は出てきませんわ。個人的には彼の上司なら「よく頑張った」と言ってやりたいくらい。(ちなみに件の質問ですが「それはわかりません」とクールに返されていました)
 
「医療のことちゃんと調べてから取材せよ」とか「そんなもん、ネットで検索しろよ」みたいな声も見かけました。

単に記事にするなら百歩譲って書きながら調べればいい。輸血100単位って何なのかとか。ですが、プロがいるのに直に聞かず、ネットで検索するなんて記者としてはむしろ怠慢とも思う。コタツ記事書いてるんじゃないんだから。
 
かつ中継の入る会見です。お茶の間にいる人々は私はじめ、素人ばっかです。マスコミは「マス」であるだけに、みなにわかる言葉で伝えなければならない。

なので、聞く当人が「わからないこと」ではなく、マスが「わからないこと」を聞かないとね。あの場合、逆に聞かない方がダメ記者なんです。
 
この会見、音声がやたら聞き取りづらかったので、テレビで見ていた自分は教授の言葉も、その質問も結構ぽろぽろ聞き逃した。

なので、「確認なんですが」と言いながら似たような質問が出てくることは返って有難い気がしました。

最初はどうなるんかと思ってみていましたが、矢継ぎ早の質問で会見が中盤に差し掛かる頃には「安倍元首相の状態」もわかるようになっていた。不評の嵐でしたが、個人的にはチームプレーでよくやった!と思うんだけどなぁ。
 

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