16.「稼ぎ」が伴う「仕事」

 これまで娘たちの学校のPTAで嫌と言うほどタダ働きはしてきた。転校すると前の学校でのPTAのノルマクリアはゼロリセットされるから。どうせまた引越すんならできるだけやらなきゃいいという考えもできるが、私は知り合いがいない土地でのコミュニティ作りだと思ってイロイロやった。パソコンが多少だが人より詳しいので頼られることも多く、家事育児では満たされない承認欲求を少しは満たしてくれた。
 が、タダ働きである。ボランティアである。そういうもんだと思いつつも、何だかモヤモヤするときがあった。働いているお母さんたちと比べて自分が劣っているような、専業主婦の劣等感というか、釈然としない感情があった。

 時給をもらって働いてハッキリとわかった。金額の大小ではなく「稼ぎ」があるということの精神的な支えの大きさを。もちろん私の稼ぎだけで家族四人生活できるわけもなく、メインは夫の稼ぎだ。それでも、金額が少なくても「ある」と「ない」は私に自信を持たせるという点では雲泥の差だった。
 うつ病にも良い影響があった。自分に自信がついて、薬を減らしても症状が出ずに減薬がけっこう進んだ。夫の「俺の考えだけがこの家では正しい」的な言動に振り回されても、娘たちがその被害にあって影で文句をさんざん聞かされても、本当は嫌なのに作り笑顔しっぱなしの夫の実家詣でも………私の薬の量を増やさせなかった。

 慣れない仕事で疲れがたまり、仕事がない日にはグッタリして一日中寝ていることもたまにあるが、週に2〜3日のパートには元気に行く。職場では明るく元気に何でもこなす。生徒さんの質問に答えたり、事務的な仕事をしたり、組み立て式の机や棚を作ったり、電気屋さんに掃除機の修理依頼しに行ったり………。雑用でも楽しいのだ!仕事がとても楽しい!20代で会社員をしていたときには分からなかった仕事をすることの楽しさを50手前にして味わうことができている。たぶんずっと仕事をしていたら感じられなかっただろう高揚感。忙しくも充実した時間を過ごして、体は疲れていても心が元気な状態で家路に着く。夫や子どもたちに職場であったことをあれやこれやと話すのも楽しくて楽しくて嬉しかった…のに

 「テンション上げすぎやろ。それで疲れて次はドーンとテンション下げるんやろ?ほんで週末に家族でのお出かけ(夫がしたいだけで、あとの三人はしたくない)もできずに終わるんちゃうん?もっとテンション低めにした方がええんちゃうか?」
 夫としては私の事を思って意見をしてくれたのかもしれない。夫の言うとおりなのかな?でも、せっかく楽しく話しているのに………。なんだか、せっかくのいい気分に水を刺されたようで一気に気持ちがしぼんた。

 それ以降、私は夫がいる前では仕事の話は極力しないようにしている。シフトを入れてはいけない日を聞くときぐらいだ。しかも、「俺が休みを取るかもしれないから」という理由で結構な日数を休み希望にさせられる。職場には事情を少し説明して、「休み希望にしていても日が近くなれば出勤できるかもしれない」とは伝えたが雇う方からすればやり難いことだと思う。同時期に採用されたパートさんにもしわ寄せがいってしまいそうで申し訳ない。これは私の勝手な思い込みだと考えるようにはしているのだが、ふと「働きだして外に楽しみを見つけた私が嫌なのか?」と思ってしまう、そんな言動を夫はする。

 でも私は絶対に仕事を手放さない!これからまた夫に横槍を入れられて面倒くさい思いをするのだろう。でもぜーーーーったい辞めない!子どもたちが巣立って両家の親を見送ったら一人で生活できるぐらいにはなっていたいから!私のための生活を取り戻すのだ!
 

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