18.我慢の限界がきた

 とにかく夫は自分の考えを家族に押し付ける。先日も最近話題のネットからブレイクしたアーティストについて持論をかましてきた。
 顔を出して活動しているyoasobiはいい。アーティストととしてやっていこうという覚悟が見える。でも顔を隠しているやつ(とくにyamaが嫌いなようだ)はあかん。なんやねん!て思う。認められへんと思うやろ。などなど…クドクドクドクド……。
 娘たちも私もyamaは嫌いではないし、私などあのマスクで顔を隠して、ラフな服装で、ちょっと猫背気味に歌う姿をカッコイイと思っていた。中学生のときコーラス部に入っていた長女曰く、猫背であれだけの声が出せるのは凄いらしい。

 お酒が入っていたせいもあるだろうが、私の堪忍袋がブチッと切れた。ずっと溜まっていたストレスが臨界点に達したような感じだった。
 「そんなん感じ方は人それぞれやん!もう煩いねん。」
 夫の顔つきが凶悪になり、「何やねん!」と反撃してくる。「私はyamaを嫌いやないし、顔を隠さなあかん理由があるかもやん。それを自分の考えだけでそこまで言わんでもええんちゃうん?もう、うんざりやわ!あんたの趣味に付き合わされるのも、あんたの考えに合わさせられるのも!」

 そのとき長女が「ああああああああ!」と叫んだ。泣きながら「もうイヤ!もうイヤ!」と繰り返す。それに対して夫は「なんやねん!言いたいことがあるんやったらハッキリ言わんかい!」と怒鳴る。
 私「あんたのその高圧的な態度で言いたいことも言われへんねやん!恐怖政治やわ!」
 夫「お前に言うてないわ!こいつ(長女)に言うとんねん!口出してくんな!」
 私「いーや、口出します!高校生にもなったら週末の課題も多いし、彼氏とデートもしたいし、友だちと遊びにも行きたい。たまに家族でお出かけやったらまだしも、週末ごとにあんたの趣味に付き合わされて可哀相やわ!」

 私が本気で切れているのを感じたのか、一転夫の態度が柔らかくなった。正直な気持ちを聞かさてほしい。自分の発言力が強いから無理強いさせていたのなら申し訳ない。家族やねんから話をして軌道修正したい。そんなことを言い出した。
 少し落ち着いた長女は、ストレスに追い詰められてネットで「父親が嫌い」って調べたりしてしまうこと。もっと自分の好きなように時間を使いたい。ポツリポツリと話した。夫も静かに聞いて、「無理強いしてたんやな、ゴメンな。」と長女に謝った。
(長女は優しい。本当は私には「あのクソ親父、早く死なないかな」って言っていることを柔らかく丸めて夫に伝えた。)

 これからは私たちの気持ちも考えてくれる、軌道修正してより過ごしやすい家庭になるかもと期待した……のが間違いだった。
 翌日から、確かに普通に挨拶や最低限の会話はするが、ふと冷たい態度を私たちに見せる。これまで録画したものを家族そろって見ていた日曜の夜に放送のドラマがある。夜に長女がソファでスマホゲームをしている夫に「あのドラマ見ようよ」と言うと、「パパは見いひん。このあとスポーツジムに行くから。お前らだけで見ろや。」
 イヤーな空気が流れる。私たち三人は夫が出かけてからドラマを見ようと待つ。しかしゲームを続ける夫。一時間ほどだっただろうか、ようやく夫が出かけた。三人でドラマを見たが、私はまったく楽しめなかった。

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