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日記:本能にしたがって(2024/04/18(木))

ちょろちょろ……と水が流れる音がして、顔を上げる。その度に、ああ、給水器を買ったんだと思い出す。

給水器というのは猫用の水飲みだ。どんぶりくらいの大きさで、底から吸い上げられた水がてっぺんの小さな噴水から落ちて、ぐるぐる巡る仕組みになっている。

猫は、流れている水が本能的に好きだ。
我が家の猫も夫が毎日洗ってくれる水入れを無視しては、わたしが何日も放置しているキッチンの蛇口や風呂場の床を流れる水滴を舐めている。

でも仕方ない。
自然界では、一箇所に留まる水よりも流れている水のほうが腐っている危険性が低い。風呂場に流れる水は、本能的に美味しそうなのだ。


本能で美味しく見えてしまうもの。
人間にもあるだろうか。

たとえばBBQ。
炭火の上でじゅうじゅうと油を垂らす肉を見て、まったく心が踊らない人は少ないんじゃないだろうか。

しかしよーく見ると、BBQの肉には表面に黒っぽいカスが付いている。
肉の一部分が焦げたのか。違う。焦げた炭や枝が舞い散って、肉に付いたのだ。

汚い、と思うだろうか。むしろ逆だ。

焦げカスごとバクバク食べる。本格的だ、と思いながら。半分くらいは焦げた枝の味かもしれない。でもいい。おいしい気がする。

時間と手間をかけて、たいしてキレイでもない肉を食べるのがBBQだ。



BBQという立派な名前があるから、わたしたちは現代でも屋外で火を起こし、何時間もかけて料理することが許される。

この世にBBQが無かったら。
「火を起こして、肉を焼いてみたいなぁ」なんて言った時点で放火犯予備軍だ。
BBQがあって良かった。


さらに考える。BBQ以外にも、本能に寄り添った「ごっこ遊び」があってもいいんじゃないだろうか。

たとえば大人用の秘密基地遊び。
広い一軒家を何人かの大人でレンタルして、各々が秘密基地をつくる。

一人は押し入れへ、一人はダイニングテーブルの下へ。
わたしなら窓際へ行き、手近な家具でカーテンの裏に空間を作って秘密基地にしたい。

レースカーテンの網目にフックをかけて懐中電灯を吊るす。サッシのデコボコが痛いので、クッションを置く。カーテンのふくらみを支えるために置いた椅子は小さなテーブルとする。
椅子の上には飲み物、下には本を何冊か置きたい。

自分の秘密基地で思い思いに過ごしたあとは、秘密基地に友人を招待して「いいねぇ」と言う。

BBQのようなおしゃれな名前と、整備された場所があれば、娯楽として受け入れられる気がする。
どうなんだろう。

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