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日記:踏んだり蹴ったりな一日(2024/02/20(火))

踏んだり蹴ったりな一日だった。わたしではなく、夫が。

夕食を片付ける時間になってようやく語られ出したのは、夫が一ミリの落ち度もないままトラブルのピタゴラスイッチにぐるんぐるんと巻き込まれ、下手すれば大怪我をしていた話だった。

「なんだ。だから夕食のあいだ黙っていたのか。自分のせいじゃなくてよかった」と思いながらスマホ片手に聞き始めてしまったわたしは、最後まで聞いてバツが悪い。風呂へ入るついでに脱水済みの服を乾燥機へ移し、二周目の洗濯を回して、こそっと罪滅ぼしを始めた(洗濯は夫の担当だ)。

その矢先に、キッチンから「あ〜〜〜!!」と悲しみ8:怒り2の叫びが聞こえる。

夫がむき出しのラップをつかんでいるのを見た瞬間、すべてを察した。洗面所から飛びだして「やるやる!やるよ!」とラップを引ったくるようにつかむ。

しょぼくれた夫がダイニングへ去っていくのを見送り、どこかへ行ってしまったラップの始まりを探す。爪でカリカリと一周引っ掻いても何もひっかからない。両手で握り、雑巾を絞るように擦ってみても手応えがない。ならば。冷蔵庫に吊り下げたシリコン製の鍋つかみを手にはめて、ラップの表面を撫でる。

早く何とかしなければ。
苦戦すればするほど、ラップの始まりを行方不明にした罪が重くなる。横を見ると、夫はスマホで何かを打っていた。
「ラップ 切れ目 探し方」なんてググっているのか。いらない、いらない!任せろ!

鍋つかみを縦横に動かして生まれた小さなシワを、わたしは見逃さなかった。
つまみ上げたシワをそろりと引っ張ると、透明な筒から一枚の膜がぺろりと剥がれ出す。
「できた!」
そう叫んだ勢いそのままに、右手はラップを決して離さず、左手で箱に押し込んだ。丁寧にラップの続きを引き出して、端から端までが完全に繋がったことを確認し、まっすぐに切り揃える。

ピッ!
手応えを感じて顔を上げると、夫がへにゃりと笑っていた。

もう大丈夫。
いや。そもそも何も起きなかったんだよ。
だってラップはこんなにきれいに収まっているんだから。

ラップと夫をキッチンに残し、わたしは再び洗面所へ向かった。


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