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「愛知」の豊かな醸造文化 (中)

今回は醤油と愛知の郷土料理の講演です。

両極の醬油を使い分ける愛知の醤油文化

お話しされたのは、日東醸造社長の蜷川氏です。

濃厚な味と色を持つ溜醤油と、淡白な味わいと極端に淡い色の白醤油を、食材や料理に合わせて使い分ける独特な醤油文化が、何故愛知に生まれ育ったのか、白醤油生産者の立場から私の考えるところをお話しします。

蜷川氏のご挨拶/今回の講演会リーフレットより

たまりはよく耳にします。濃くて風味が強く、お刺身や握りずしに合うようです。前回紹介した豆味噌(八丁味噌)の樽の上にたまった液体がたまり醤油なのだとか。

白醤油(白たまり)は一説では、金山寺味噌の上澄みが調味料として使用されのが始まりとされており、開発されたのは幕末から明治期だそうです。大豆から作られるたまりとは違い、小麦を主原料(90%くらい)に作られているそうです。そして、白醤油に出汁を加えたものが白だし」で、こちらはスーパなどの店頭でもよく見かけます。

白醤油は、料理にたまり醤油の濃い色が付くのを嫌う料理人に重宝されたようです。かつてその地域では、日ごろ食べるのはたまりを使った黒っぽい料理で、お正月などでは白醤油を使った色鮮やかな料理を食べたのだとか。上手に使い分けされていたそうです。


足助仕込み蔵(旧小学校)/日東醸造リーフレットより

白醤油を作っているのは碧南市(愛知)に3社だけということでした。日東醸造も1938年の創業から碧南市で白醤油を作ってきましたが、近年碧南市の自然環境の変化により、理想を求めて足助あすけ町(愛知)に移転したそうです。

醤油 おもに大豆、小麦、食塩を原料にし醸造して作ります。



愛知の調味料と郷土料理

お話しされたのは、「小伴天 はなれ」と「日本料理 一灯」を営まれる長田氏です。

愛知には多種多様の発酵調味料があります。豆味噌、たまり醤油、白醤油、酢、みりん。それぞれの調味料とその背景を紹介します。そして、愛知の郷土料理から調味料の使い方まで説明したいと思います。

長田氏のご挨拶/今回の講演会リーフレットより

長田氏は愛知の発酵調味料に詳しくまたご自身の日本料理店でも、それを活かした献立を提供されているそうです。豆味噌からたまり醤油.白醤油へと話を進められたのですが、驚いたのは日本酒についてです。江戸時代に愛知の知多半島は灘(兵庫)に次ぐ酒の生産地だったとか。

そして、大量の酒粕を利用して酢が作られたそう。米から作る酢は高価でしたが、酒粕によるかす酢は安価だったので江戸前の寿司文化の広がりにも一役買ったようです。(ミツカン酢の本社は今も半田(知多半島)にあります。)


杉浦味醂リーフレットより

三河みりんは碧南市で作られていますが、250年ほど前に「九重味醂」が酒かすから焼酎を作り、もち米と米麴を合わせて熟成させたのが始まりだそうです。(それにしても、酒かすから色々な調味料ができることを、全く私は知りませんでした。粕汁くらいしか思いつかなかったのですが…)

このような伝統的な蔵では、それぞれ味わいが違って面白いそうですが、その蔵に住む菌や、作り方のこだわりが各々に違うからなのでしょう。 一灯では白醤油は3種類、みりんは4種類、豆味噌は4種類、酢は2種類、たまり醤油は2種類使い分けているそうです。




続 き

「愛知の豊かな醸造文化」、今までご紹介した講演者3人によるパネルディスカッションが行われました。次回はその様子です。


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