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Denzel Curry & Kenny Beats 『UNLOCKED』 (2020)

ライター:清水ダマロン

はい。
今回はつい先日サプライズリリースされたこちら。
両者によるプロジェクトは初めてではないので意外ではなかったが、アルバムとなると話が違う。
1周目から思いっきりヤられ、部屋で「やばい…やばい…これ最高……」とボゾボソ呟きながら勢いで書いている。

両者の簡単な紹介から。
Denzel Curryは今や伝説の幕開け的な語り口でものぐさになっている2016年のXXL Freshmanですね。しかし他のラッパーとは明らかに一線を画すスキルと本人のHiphopへのアティチュードで、5年後あたり今以上の超大物になってそうなオーラがビンビン。『ZOO』はマジで痺れた。個人的に超好きなラッパー。
Kenny Beatsは2010年ごろからプロデューサー/トラックメイカーとして活動を始め、2018年のKey!やVince Staplesとのジョイントアルバム、極めつけに昨年のRico Nastyとのジョイントアルバム『Anger Management』と03 Greedoとのジョイントアルバム『Netflix & Deal』は各メディアから年間ベストに選考され話題になりました。今一番と言ってもいいHOTなプロデューサー。

というわけでアルバムの紹介。
上記の通りKenny Beatsは非常にジョイントアルバムが多い人。
そのラッパーごとにシナジー効果をフルで得られるように、都度サウンドの雰囲気を変えられるカメレオンのような職人タイプ。
必然的にコンセプチュアルな作品になるわけだが、今作においては今までに共通していた"今っぽいバンガーチューン"から脱し、サブベースを多用したダークでハードな現代的ブーンバップが多い印象。
そこに乗せるのがDenzel Curryなわけだからもう間違いない。

発売に併せYouTubeにアルバム全編通しのこちらのアニメーションMVをドロップ。
設定として、今作『UNLOCKED』のファイルがリーク。そこで各曲のリークされたファイルを2人が電脳世界を旅して探すという内容。
各曲ごとに違う世界に入るのですが、その度にアニメーションの画風が変わるという超こだわりっぷり!
英語が分からなくとも上記の設定を理解していれば滅茶苦茶面白いし、ストリーミング時代の現在僕らが失ったモノ(ライナーノーツやクレジット等が記された歌詞カード等)の代替としてこうやって楽しめるモノを創るって最高にイケてませんか?
据え膳食わぬは男の恥、24分程度のアニメ1話分くらいの軽いボリュームなのであっという間に見られるものなので、マストで。


ここからMVのことも交えたお気に入り曲紹介。

T2, Take_it_Back_v2

謎のJKモドキと戦う一番ダークなテイストの白黒の世界。
最高!!!8分で刻まれるピアノと図太いベース、獣のようなゼルのフロー。Verse 2からのボイスチェンジャーも超効果的でめちゃくちゃかっこいい。Hookのワードプレイも最高にウィットが利いてます。

T4, Pyro (leak 2019)

二人が謎の力でピラミッドつくって、太陽にあるファイルを取る話(?????)
1:30とコンパクトな曲なんですが、ゼルのリリシストとしての才能が大爆発。

Battle the strategist, it's just a game of battleship
Nayvadious the futuristic version of an avid kid
Actavis, everybody lean on me
Got them bags full of goodies like I'm CeeLo Green

「フォ~~~~~~~!」って言った。

T5, DIET_

ジャングルを舞台にトラックもパーカッションを使ったジャングル風味。
ケニーが謎の悟りを開いてゴリラ達の王みたいになる展開、このMVで一番笑いました。
基本このアルバムは一曲一曲が短く、それだからかゼルのパンチラインがマジで超凝縮されてて引用したいラインがめっちゃ多い。
なので皆さんでGeniusを見て勉強してみてください。
HookでBLACK METAL TERRORISTなゼルになってるのがポイント。

T7 , Track07

Betty Boopちゃんの時代のアニメーションを彷彿とさせる作風。
インタールード的なトラックなのでゼルは声ネタ的な感じで挟まれる程度。
なので爆発しているのはケニー!
これはもはやHiphopじゃないと言っても過言ではない。先日来日したMoodymann的なシカゴハウスに通ずるクールネス。
小さい曲でありながらここでケニーの多才っぷりが発揮されてるのでスキップは厳禁。


以上この辺で。
ゼルは本当にデビューの時から好きで始めからカマしてくれるだろうなと思っていたから、個人的に今回食らったのはケニー。
この人音楽もそうだけど本人の雰囲気とかやってることがすごくおもしろくて。
インスタではRico Nastyに"Kenneth Percassion"とかフザけたこと言われたり、ファンに"Kenny is President"とか謎のピケットサイン掲げられてたりっていう、いわゆる愛されイジられキャラだったり。
自分のYoutubeのチャンネルでは『The Cave』っていうシリーズをあげていて、自身のスタジオにVince StaplesやThundercatやFreddie Gibbsとか色んなメンツを招待してビートもラップも即興でつくるっていう内容なんだけど、これがまた超おもしろい!会話やなんやのヴァイブスで彼が愛される理由も分かるしシンプルに音楽的にも退屈しない。
自分たちも楽しく、リスナーたちにとっても楽しいものをつくることにストイックなことが伺えて普通にファンになった。
今年も期待大!

それでは。

#DenzelCurry #KennyBeats #UNLOCKED #Hiphop

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