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【読書会ふりかえり】チャンドラー読書会

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

2020年11月3日に、『猫の泉 読書会』では、レイモンド・チャンドラーの
 ・『さらば愛しき女』(清水俊二訳)
 ・『さよなら、愛しい人』(村上春樹訳)
を読み比べる読書会を行いました。

きっかけは、村上春樹の訳文はいまいち、という趣旨の言葉が聞こえてきたことです。そんなことないんじゃないかなぁ? そう言う人はちゃんと読み比べたのかなぁ? って思ったからです。

わたしは一時期、村上春樹ばっかり読むほど好きだったこともあって、「印象で決めつけるようなことはしないで、ちゃんと読み比べよう」と、一種の義憤に駆られて、読書会を企画したんですよね。

だから、このときの読書会の正式名称は「そんなに春樹が悪いのか! チャンドラー対決読書会」。長すぎる名称ですね(笑)

もう一つ、仮説を立てていたことがあって、一つの作品の旧訳と新訳があれば、「最初に読んだものを素敵に思う/後から読んだものは、最初のインパクトを超えないから悪く感じる」のが人情ではないかと。

清水訳と春樹訳。読み比べてはじめに驚いたのは、主人公の探偵マーロウの人柄が全然違う印象だったこと。

清水マーロウは寡黙で、春樹マーロウはべらべら喋ります。
清水マーロウは女嫌いっぽい態度ですが、春樹マーロウは女性にいいかっこしたい気持ちを隠し切れない。

本当に別人のようです。
話し言葉の量というよりも、セリフの有り無しと言う点でみると、原文に忠実に饒舌なのは春樹マーロウのようです。
ただし、「ちょっと饒舌」どころか、「ものすごーく饒舌」になっているのところは、春樹テイストなのだと思いました。

でもね、清水訳が出版された時代に、春樹マーロウを出したらきっと「チャラ男」扱いされちゃったはずです。清水訳のマーロウ像が、当時の日本人の「男らしさ」に合わせて提示されたものだと思うと、ものすごく納得がいきます。

全体的に清水訳は短くまとめていて緊張感があります。
対して春樹訳はもうすこしゆっくり時間が刻まれている感じでした。
春樹訳の細かい刻みの方が私は好みだったけれど、それでも、清水訳の緊張感があって、短めに端的な運び方で訳すのもかっこいいと思いました。

読者が受け取りやすい人物造形に配慮するのも翻訳者の仕事になるのだなぁと感心しました。

…なんてことを、友達に聞かれてこの前、お話したので、ここにまとめておきます。

■本日の二冊:
   『さらば愛しき女』(レイモンド チャンドラー/清水俊二訳)
  『さよなら、愛しい人』(レイモンド チャンドラー/村上春樹訳)

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