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『残滓』(山口郁子写真展)

時間がたってしまったけど、那覇プロードウェイで5月20日、21日と行われていた山口郁子さんの「残滓」を見てきた感想です。
ラット&シープで教えてもらい足を運びました。
レンズのカビではなく、センサーについたカビにこだわった作品を展示していると聞き、興味が湧いた。
いただいたDMの写真は雰囲気のある素敵な写真、そこには話に出てきたカビは見つけられず、どこにカビを活かしておるのか興味が湧いたし、カメラにとってカビは大敵。そのカビを味方にしようとする発想力、まるで戦国の軍師のような、なんたる策士。
これは、その写真とお顔を拝見せねば(戦国武将風に)

まず、大きな勘違いがあった。DMからソフトフォーカスの写真を作成しているのだと思い込んでいましたが、彼女の作品はピンホールカメラで作成されていました。それも、自作のピンホールで。

まず、私、老眼が入っています。そのため最初に作品を見た時には、ソフトフォーカスで見ていて、気持ちが和む感じがした。しかし、肝心の(?)のカビを見つけられませんでした。もしかして、このソフトフォーカスがカビの効果なのかなと考えましたが、ご本人と話を聞き、ガンチョー(ウチナーグチで眼鏡のことです)をつけて、改めて作品を見ました。
そしたら、作品のあちこちに可愛いカビちゃんの姿が写っていること。
ピンホールカメラによるソフトフォーカスの上に、重なるカビちゃんの姿。ソフトフォーカスな写真から醸し出される心穏やかになる雰囲気の上に、カビちゃんの層というフィルターが入ることによって、ピンホール写真に新たな解釈が産まれた。
この解釈の広がりが、この作品の面白いところだと思う。生命の息遣いが漂い。その先にボンヤリとした世界が広がっているように見えた。

ソフトフォーカスの上に写っているものがカビと分かれば、時間の経過と曖昧な記憶が重なる。
でも、私にはそれよりも未知の原生動物の向こうに、現実世界が広がっているように感じた。

実は、センサーについたカビで作品を作っていることを知っていたので、写っているのがカビだとわかってはいたけど、実際に見てみると。カビというよりもアメーバのように見えた。
私たちの世界が小さく見えない生物に侵食され、現実の私たちの生きていた世界が遠くなっている、侵食されるているような、異世界を垣間見ているように見えた。

技術的には、Photoshopを使ってフィルターをかければ、いくらでもソフトフォーカスができるし、カビのような効果も作れる。実際にそのように、時間の経過をフィルターで表現しようとした作品を見たが、そちらよりは彼女の作品の方が時間やイメージを膨らませてくれる。
あとは、ピンホールカメラの被写体やカビちゃんたちとの関係性を突き詰めていけば。もっと面白くなる気がする。

ちなみに俺は左上のカビちゃんたちがお気に入りです

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