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見てきました 加藤ゆか「君が袖ふる」

『君が袖振る』は、万葉集の
「足柄の 御坂に立して 袖振らば 家なる妹は さやに見もかも」
「色深く せなが衣は 染めましを 御坂たばらば まさやかに見む」
という和歌を詠んだ「防人に出る夫」と「残された妻」の二人に贈る作品です。

その時代の避けられない「運命」を受け入れ、数少ない言葉に深い愛をこめた歌に心を打たれ、
この夫婦の再会、幸福な結末を願って制作しました。

確か、読み人知らずの有名な短歌から刺激を受けて、作成された作品だそうです。
短歌の情景や情動が、ギャラリーを静かに満たしている。心、波さざめく、素敵な展示でした。


何が素晴らしいか、イメージの豊かさとイメージを表現する写真の構成力が際立っていた。
別れ、会えない寂しさ、思い出に浸る気持ち、夢で会いに行く、そして再会、回顧、未来へと
防人の思いから待つ妻の思いが、写真は日常、旅行に行った際に撮ったと言っていましたが、それらの写真が、防人とその妻の匂いを感じさせてくれていた。
モデルは旦那さんと言っていたが、彼は歌を詠んだ防人の生まれ変わりなのかと思うような、構成でした。
世界観が広がっているというよりも、歌に沿って、歌を読み進めているような印象だった。

また、影の手で花をつかむなど、影をうまく使った写真が印象的。しかも、周囲の影と合わすことで、凄く自然な感じがするし、影によって、秘めた想いが伝わってきた。
写真の色もややアンダーにすることによって、色が濃ゆくなることで、時が経ったような印象が感じられた。また、影を使った写真が要所、要所で配置されていることで、どこか過去をイメージさせる、時が感じられるようになっている、この辺も素晴らしいと思った。

湯気にあたって水玉を抱えた蜘蛛の巣の写真は幻想的で、一見して何を撮ったのかわからない、真珠のネックレスのような、不思議な写真。こういうところに眼が向いているのも、彼女の写真家としての力量の高さを感じられた。

しかし、時間も場所も、バラバラの写真を一つのイメージに沿って、構成していく力は凄い。彼女のイマジネーションの豊富さには舌をまいて、驚いた。俺にも少し分けてほしいさ(笑)

見ている時には気づかなかったが、気になっていた鯉の写真。それも2匹写っているのは「2人の恋」のメタファーだったんですね。そういった細かい点まで考えた構成だったんですね。


写真の表現というのは、まだまだあるのだと実感しました。

加藤ゆかさんの描いた防人の絵巻。見ることができた喜びは今でも心に響いています。

画像は、ネットで見つかった展示されていた写真を使用しています。
展示していた写真をYouTubeで公開しています。ぜひ、そちらをご覧ください。

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