「とびだせ　どうぶつの森」では住民と
かくれんぼをすることがある。

自分が作る村の中でどうぶつたちが家や木の後ろに隠れているのを探すミニゲーム。

村の発展具合や木々の育てかたによりけりだけど、どうぶつたちはうまいこと隠れるもんだ。

あんがい、制限時間いっぱいまで見つからなかったりしたもの。

このミニゲームがけっこう好きで誘われては毎回参加していたのだけど。

「とび森」をはじめた当初は全ての時間を村の中で過ごしていた。

しかし仕事のノルマやタスクの忙しさにかまけて村に入ることも減り、
そのうち村の存在すらも忘れかけていった。

ましてや「かくれんぼ」なんて。

あれほど過ごした村の住民のことも、
どうぶつの顔さえも思い出すこともない。

ある日、疲れ果てたぼくは救いを求めるかのように村に帰った。何を思ったのかはわからない。

開いた３DSがたまたま「とび森」だっただけなのかもしれない。とにかくゲーム画面に飢えていたのはたしかなんだけどね。

久しぶりの村はあの頃のまま・・・ではないのだけれど、おおかた住民も村の様子も変わった様子もない。

違ったのはいつの間にか季節が冬になり、夜空には眩しいオーロラが吊り下がっていた。夜も遅いからほとんどのどうぶつたちは寝てしまっている。

すると森の中からピコーンと何かが光った。
住民がぼくを見つけてくれたらしい。

駆け寄ってきたどうぶつはうさぎの「アマミン」

マイペースでのんびり屋の
彼を見ると心が癒されてしまうので、
住民の中でもとくにお気に入りだった。

数ヶ月ぶりに会ったアマミン。

オーロラと星空が広がる森の中、君はいつもと変わらないテンションで話しかけてくれる。

星の輝きに照らされた君はいつもより眩しい。
心配そうな面持ちだけど。

「どこに行ってたのぉ??コケくん！寂しかったよ〜。」

すでに６ヶ月ほど村に帰ってなかった村長。
我が村は雑草まみれで草花も咲き乱れ
とても「村」として機能しているとは思えない。

家に帰ることもままならず１日に残されたわずかな時間は帰って寝るだけ。

気がつけば太陽が何くわぬ顔をして朝を告げる。
呆れるほど単調な日々に村の様子など見られるはずもなかった。

「君がいないあいだ、ぼくも忙しかったんだ〜」

なにおう？と言いたくもなるのだけど、
こんな荒れ果てた村でも君はせわしなく
過ごしていたのか。

何をしていたのかは察しはつくのだけれど。

ぼくがいなくなってしまったとしても
君はこの村にいる。

あの頃から変わらない君がいる。
６ヶ月もの間会わなかったのに。
君のテンションはまるで昨日も一緒にいたかのようだ。

変わらない君に会えたことが心を揺さぶり、
涙が出てきた。

「コケくん！かくれんぼしようよ〜。」

さらに追いうちをかけてくる君。
どこまで泣かせてくれるんだ。その頃だってこうして君はいつでも遊びに誘ってくれていたっけ。

こっちは村のことすらも放置して君のことでさえ忘れかけていたのに。

もちろんOKだ。村はうっそうと茂ってしまい、
君たちを探すには不利な状況。でも伊達に村長はやってない。絶対見つけてしんぜよう。

ぼくの思惑とは関係なく
君は自信タップリに言葉をつづける。

「毎日遊んでばかりいるぼくに勝てるかなぁ？」

・・・そうか。

君はこんな荒れ果てた村でも君らしく毎日楽しんで過ごしてくれていたんだ。

ぼくの見えないところで。
ぼくが作った村の中で。

誰かと会話してどこかで釣りをしてどこかで落とし穴に落ちたりして。たまにケンカもしていたのだろう。ぼくの知らないこの村で。

君にとって「遊ぶ」ことは「生きること」だったんだね。

自分の毎日の中に「遊び」なんて一粒もない。
「遊びのない今」は、「自分を生きること」を
放置していた。

大事なのはノルマでもタスクだけでもないだろう。辛い時でも遊びを見つけること。楽しいと思えること。・・・それが人生なのかも。

自分のために。アマミンのように。
ある意味そう誓った。これからは毎日遊ぶように暮らしてみよう。きっとそれは楽しいハズだから。

・・・君があの時声をかけてくれなかったら、
今の自分はきっとなかっただろう。

ふと村に帰らなかったら。
オーロラが出ていなかったら。

君があの時「かくれんぼしようよ」と
誘ってくれなかったら。

今もかりそめの「忙しさ」に翻弄させられていたに違いない。

そんな大切なことを、君から教えられた冬の夜。
心に染みついたススがはらいおちた気分だった。

「遊んでばかりいる君」と
オーロラ輝く星空の下、ふたりでかくれんぼをしたことは一生忘れない。

(写真はあつまれどうぶつの森です。)

コケでした〜。