〔詩〕待ち人

春と風を連れて来た君は
ずっと遠くを見ていた
優しく髪を揺らしながら
心だけどこかに置いてきたように


今日からよろしく
隣の席の僕が言えたのはそれだけ
こちらこそよろしく
あの時君が言ったのはそれだけ
いつも受け身の僕は
君に尋ねる言葉を持たないまま
誰かの問いかけに答えるのを聞いて
少しずつ君を知った気になっていた


咲き始めた桜を見上げ
今が一番いいと言った君
咲いてしまえば散るだけだから
満開の華やかさは苦手だと


何かあったの
僕で良ければ聞くよ
そんな陳腐な言葉を飲み込んで


やがて抗えず満開になった桜が
春の風に一斉に舞い散る午後
君は
青空を見上げることなく
落ちていく花びらだけを見ていた
もう桜も終わりだね
君がぽつりと呟くから
また来年だね、と
精一杯の明るさで応えたけれど


次の春が来る前に
君はまた風に乗って
遠くへ行ってしまった


あれから
何度も春を見送りながら
僕はずっと待っている
春と風を連れて
君が再びここへ帰って来る日を
話したいことがたくさんあるんだ
言えなかったあの言葉も


ほら、もう
桜の蕾が膨らみ始めたよ


こんにちは。こちらに参加させていただきます。

このお題、私にはとても難しかったです💦テレビから流れる小田和正さんの曲を聞きながら、何とか書きました。
小牧さん、お手数かけますがよろしくお願いします。
読んでくださった方、有難うございました。

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