覚えられない顔

私は人の顔を覚えることが苦手だ。失顔症という言葉を知ったのは、高校生くらいのときだが、どうも私は失顔症らしい。

この症状を知って、むしろ他の人はそんなに人の見分けがつくのかとびっくりした。知らず知らずのうちに、私は髪型やメガネ、洋服の趣味などから人を判別するようになっていたのだ。

なので、髪型が変わったり、ヒゲを剃られたり、いつもラフな格好の人がスーツを着たりすると、本当に気づかなかったりするのだ。

映画やドラマで同じ俳優さんでも、役で服装などの雰囲気が違うと、全く気づかなかったりする。これだけきくと、役者冥利につきるのかもしれないが、同じ格好をした人が沢山でてくる作品だと、見分けが付かなかったりする。

反対に、自分も髪型や服装の雰囲気を変えれば、別人級になると信じて、大人しそうな服を着たり、派手目な服を着たりと変身気分で楽しんでいたが、側から見ると、ちょっと滑稽に映っていたのかもしれない。

そして、これに付随してなのか、人のことを覚えるのも苦手で、1,2年会わなかったりすると、よっぽど仲が良かったり、印象の強い人ではないと、申し訳ないが忘れてしまう。

たまに地元に帰って、小中の同級生などに声を掛けられたりすると、みんなはなんてよく覚えてるし、分かるもんだと関心してしまう。話しているうちに思い出すことがほとんどだが、最初の会話は適当に「久しぶり!何してるの!?」とかで誤魔化している。

顔が覚えられない、ということを自覚してからは、家族(驚くかもだが、家族の顔もはっきりと認識できていなかったのだ)や仲の良い友人、仕事でよく会う人なんかは、かなり意識して顔のパーツで覚えるようにしている。それでも、結構な集中力がいるみたいで、少しご無沙汰になると分からなくなってしまう。

自己擁護すると、私はそこまで記憶力が悪い方ではない。特に数字の羅列の記憶がなぜか得意で、数々の取引先や担当者の電話番号、クレカの番号なんかは知らぬまに暗記している。

それにしても、顔だけ区別がつかないというのは、我ながら本当に不思議な症状だ。「顔」という真っ先に表に出るものをはっきり見ないで、髪型やら服装といった、その周りのパーツを見ていたのだ。

自覚してからは、対策もできているのでせいぜい軽度だろうし、そこまで困っている訳ではないが、こういう人もいる、ということを紹介したまでである。

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