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私的ゲーム史1 ぴゅう太Jr

 僕が初めて買ってもらった家庭用ゲーム機はトミー(現在のタカラトミー)の「ぴゅう太Jr」。1983年末(誕生日かクリスマス)の頃のことだったと思う。1983年といえば7月には任天堂のファミリーコンピュータも発売したゲーム機発売ラッシュの時期。どうしてファミコンを買わなかったのかと思う人もいるかもしれないが、当時はまだゲーム機に対する世の中の認識は単なる電子玩具の一つに過ぎず、ファミコンも有象無象の一つでしかなかった。情報などは無いにも等しかった。そもそも僕が本当に欲しかったのは「ぴゅう太Jr」ではなく、上位機種の「ぴゅう太」の方で、ゲーム機が欲しいというよりもホビーパソコンが欲しかったので、ファミコンは目にも入っていなかったのもあった。まあそうは言っても「ぴゅう太」を欲しいと思った理由は一体型のキーボードがカッコ良かったからという子供らしい(?)安直な理由だったのは今でも何となく覚えており、そんな理由で59,800円もする製品を買わされる方はたまったものではなく、パソコンはまだ早すぎると簡単に諭されて、廉価版の「ぴゅう太Jr」の購入に至った訳である。それでも19,800円もするものをポンと買ってくれた祖父には感謝しかない。

ぴゅう太Jr

 「ぴゅう太」はホビーパソコンとしてはそれなりに名の通った製品で、内蔵された「ニイケ(=GOTO)」「モシ~ナラバ(=IF~THEN)」などと日本語で記述するプログラム言語「G-BASIC」が良くも悪くも語り草になっているが、同様に内蔵されたグラフィックツール「G-GRAPHIC」との親和性が高く、プログラム内で絵を描く必要がないことや、スプライトとしてグラフィックを読み込めることは、本格的なパソコンにもない魅力だった。ただやはり日本語で記述するBASICというものは当時から既にイロモノであり、機能的にも貧弱さは否めなかったことなどから、むしろ、せっかくの16ビットCPUも宝の持ち腐れと揶揄されがちである。
 「ぴゅう太Jr」はそんなホビーパソコンからパソコン部分をバッサリ切り捨てた純粋なゲーム機として発売された。「G-GRAPHIC」は残されており、テレビで絵が描けることも大きな特徴として挙げられるが、安易な参入も多かったゲーム機発売ラッシュ只中の製品としては、比較的ゲームソフトが多くリリースされたことは、ユーザーとしては嬉しい特徴だった(まあ選択肢が多いだけで、たくさんソフトを買って貰えたわけではないのだけれど)。
 ジョイスティックなどのレバー型コントローラが大勢を占める中で「ぴゅう太」や「ぴゅう太Jrは、縦長で上部左右に2ボタン配置、方向指示部分が円盤状のパッドになった形状をしている。今見るとマウスっぽいがもちろん、置いて使うものではない。方向パッドは安定しないため、斜め方向に押したような状態になり易く、配置のせいで2ボタンも押しにくい。せめて横長だったら少しは操作性も変わっていただろうが、あまりゲーム機を知らない当時としては、正直そういうものだと思って意識はしていなかった(ファミコンに出会うまでは!)。接続ポートは一つしかないのに付属のコントローラは2台なのも割と謎である。

ぴゅう太

 僕が本体と同時に買って貰ったゲームソフトは「フロッガー」と「マリンアドベンチャー」の2本。
 「フロッガー」は古典的名作として様々な機種に移植され、多くの環境で遊ぶことの出来た作品であり、ぴゅう太もそうした移植先の一つ。それゆえ当時のゲームを知る人ならば誰でも知っていると言って過言ではない。ゲームの内容は、車の往来する道路を横切り、流れる丸太を渡りながら川向こうの住処に帰るのが目的。今となっては早々に飽きてしまいそうな内容だが、当時としては、画面内にキャラクタが占める密度も高く、それらが皆常に動いているという状況だけでも随分と楽し気なモノであり、緊迫感のある良策として、ずっと遊んでいた記憶がある。

 一方の「マリンアドベンチャー」は、海底都市を目指して、凶暴な魚群や、巨大な蛸を相手に、深海を探索をしていくシューティングゲーム。固定画面の3面構成(その後はループ)で大量の敵をチマチマ倒していく感じが好きだった。意外と達成感があった気がする。そういえば、遠距離攻撃を仕掛けてくるあの大きな魚は一体何を吐き出して攻撃してきていたのだろう。

 買ったゲームはその2本だけだったが、クラスメイトの美少女、加〇志帆ちゃんの弟くんがぴゅう太を持っていて、何の因果か、彼からゲームを貸してもらったりしていた。幼馴染とかそういう訳でもないのに、どうしてそうなったのかは全く記憶にない。記憶にあるのは「ミッキーマウスのアスレチックランド」と「トロン」を貸してもらったことだけだ。

 「ミッキーマウス...」は横スクロールの障害物を避けながらゴールを目指すアクションゲーム。ぴゅう太の中ではバラエティに富んだ感じが見た目に楽しい。障害物は完全なランダム配置なので、理不尽に出現する場合も多々あるが、そういうところもツッコミを入れながら楽しむのが正解。本気で腹を立てるのは不粋というもの。間違ってもコントローラを投げたりしてはいけない。

 もう1本の「トロン」は、遊んだことのあるぴゅう太のゲームの中では僕が1番好きな作品。映画のトロンを題材にしたゲームだが、内容的にはほぼほぼ関係がなく、画面の奥の方から襲いくる敵を迎え撃つ擬似3Dシューティング。敵の出現はランダムで単調なゲームになりそうなものだが、打ち漏らした敵は移動を妨害する壁になったり、弾を乱発してくるボスらしき敵が登場したりと、厳しい性能制限の中でも飽きさせない工夫が効いている。借りている間は猿のように夢中になってプレイしていた。何なら、1度借りて返したのに、また借りた気もしなくもない。

 愛着のある「ぴゅう太Jr」だったが、後々には専門学校の友人に譲ってしまった。また遊びたい気持ちはあるものの、人に譲るとなんだかあまり後悔がない気がする。まあたぶん友人も既に存在を忘れて所持はしていないと思うが、良い意味で想い出の中にしまい込めたゲーム機だったのかも知れない。


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