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人災派遣RPGリプレイ最終話『仇星、闇を駆ける時』13

●7日目

●イニシアティブ

GM:では次のラウンド!いよいよ大詰め、行動順の決定をお願いします。

紗綾:人数が補充された管制塔の兵士の15を上回れるかがポイントですね。

柳沢:ここはカヤカ君と猫君が、さくっとイニシア取って判定成功してくれるのが一番楽だな(笑)。

判定の結果、

秀史 23
紗綾 15
管制塔の兵士 15
チシャ猫 14
砂浜の兵士 12
柳沢 8
カヤカ 7

となった。

秀史:あれぇ?

カヤカ:んんんんんん(笑)。

紗綾:最後に行動確定の人が最速で、最速で行動しなきゃいけない人が最遅!

カヤカ:ここは『韋駄天』使うしかねえー。

チシャ猫:そして地味に管制等の兵士より後手に回ったにゃ。……LPもないし。

柳沢:AP3溜めればLP1になるよ!

チシャ猫:ですよねー(笑)。あきらめてAP3払います。

●ファストフェイズ

GM:こちらはギミック出し尽くしました。あとは各自設定通りに攻撃するだけ。

カヤカ:いっだってっんっ!!イニシアを最速に変更します。

柳沢:ほい。おじさんは『後退』。……ってあぶね、後退しちゃだめ! かばえなくなるじゃん!何もせず!(笑)

チシャ猫:LPでイニシアに振りたし。(ころころ)15。そして『後退』。

秀史:奥義の準備。

紗綾:『完全憑依』!『頑張った弟子にワシが手本を見せてやるとするかのう』

秀史:そして砂浜の天候判定。(ころころ)3で雨、仕方ないか。

GM:おっと。……えー、ここで業務連絡。カヤカくんの中の人が所要によりしばし中座するとのことです。

カヤカ:わーすんません爆速で戻りますゥ!

一同:いてらー。

 社会人のセッションあるあるである。 最強の敵は日程調整。

GM:といってもまさに次のカヤカくんのメインアクションが運命を決めるので、他の判定を先にやるわけにもいかない……。ということで、イニシアで設定したシタナガくんの奥義の発動とか、各人の描写とかを入れつつ時間をすごしまする。

柳沢:GMの一人芝居第二弾だね(笑)。

GM:何を仰る。情景を盛っていきますので、みんな何か、アニメ最終回のアバンパートみたいにかっこいいセリフを言うんだ!!(笑)

紗綾:オープニングがカットされてクライマックスから始まるやつですね。

 管制塔のOSを再構築するチシャ猫、宇宙の彼方でステーションを修理するカヤカ。大惨事の回避に向けて、かろうじて希望の光は見えてきた。

 だが、宇宙では復讐神の頭部が。地上では胴体が。それぞれ妨害に回る。そして退けても押し寄せる『共工』部隊の兵士たち。宇宙ステーションの軌道修正が先か、君たちのリソースが潰えるのが先か、最後の戦いが今始まる……!!

 地上組の戦いは続く。

 管制塔の兵士たちを一時撃退したものの、補充された後詰めの兵士たちが包囲、発砲を再開する。

柳沢:「……やれやれ、これはさすがに多勢に無勢という奴だねえ」

チシャ猫:「あーもーーーーうるさぁぁぁぁーーーーーい!少しは静かにしんさいよ、静かにっ!!」

GM:そして管制塔の向こう、森の中から現れた身長20メートルくらいの木製の神像が、四つ腕に持った武器で管制塔を殴りつける。槍、斧、剣、数珠を模した武器でガツンガツンと殴りつけようとしたところ、森の中を走り抜け、膝、腰と踏み台にして跳躍した紗綾の一閃が、腕の一本を切り落とした……!

柳沢:生身でモビルスーツ倒しちゃう人のムーヴだ(笑)。

GM:外見こそ木製の像だが、その全身には何やら呪わしい文字がびっしりと書き込まれている。そして樹木の密度は『絹黒檀』の名に恥じぬほど超圧縮されており、まさに鋼を斬ったかのごとき手応えが紗綾の両腕にのしかかる。並の刀ならば刃こぼれして使いものにならなくなっていたであろう。

秀史:実際それくらいの密度じゃなきゃ自重で潰れているだろうしな。

チシャ猫:おじいちゃん腰いわしそう(笑)。

紗綾:腰、どこにあるんでしょう(笑)。

柳沢:目釘のあたりかな?

GM:どぉん、と音を立てて大地に腕が落ちる。

紗綾:『くかかか!これこそが戦場の空気!紗綾よ!存分に味わうが良い!」

チシャ猫:「うわー、おじいちゃん超イキイキしてるわぁ。って紗綾も目がランランじゃん」

紗綾:「私はー平穏なー人生がー送りたかったですぅぅー」(ザクザク)

柳沢:「もうどっちが本性かわからないよねえ」

紗綾:「私はーーお茶を売ってーー平穏な人生を送るんですぅーー」(ザクザク斬っている)

チシャ猫:「ひくわぁ」

柳沢:「血は争えないねぇ」

紗綾:「斬っても斬ってもキリが無いですぅ〜」

GM:そんな中、紗綾に腕を落とされても、残りの三本の腕が、意に介さず管制塔を殴りつける!!

柳沢:「やらせんよ!」と間に入り、魔力の盾でいなす。

GM:がぁん、がぁん、がぁん!と重量級の硬質音が響く。重い打撃は、柳沢の作り出した不可視の盾によって弾れた!衝撃でたたらを踏んで一歩後退する神像。だがすぐに、態勢を立て直して殴りかかってくるであろう。そしてそんなさなか。二秀史はインカムで情報を聞いたあと、何を思ったか、静かに構えを取るのであった。

秀史:「……雨雲で肝心の頭部が全く目視できないな」

GM:君は砂浜にふらりと姿を現して構える。

秀史:「おい猫、観測手をしろ。そこからなら見えるはずだ」

チシャ猫:「今私超絶忙しいって知ってるかなァァァ!シタナガ=サン!!」

秀史:「俺が当てられなかったらその仕事も骨折り損だぞ」


 仮に雨雲がなかったとて、目視は困難であったろう。衛星軌道、高さ400km。東京から大阪への距離を、それも縦方向に。

「今夜は晴れ。空を見上げれば宇宙ステーションを見ることができるでしょう」

 そんなニュースを見て、夜空を走る小さな光を目で追った人もいるだろう。

”あれ”に当てるというのだ。

 正気の沙汰どころか狂人の所業である。ライトノベルの与太話だって、もう少し辻褄を合わせた展開を設定するだろう。………だが。


チシャ猫:「とりあえず予め予測しておいたルートと、カヤカからフィードバックされてるルート情報で補正したデータそっちに送っておくにゃよ!あと衛星通信用にこっちに呼んでおいた某国のレンタルスパイ衛生からの画像もそっちに渡しておく。それだけあったら君ならなんとかするでしょ!!」

秀史:「ああ、十分だ」

柳沢:「……ふふっ。この状況でも微塵も絶望していないのは、ウチの若者たちの得難い資質だねぇ。単に現実感がないだけかもしれないが」

チシャ猫:「何言ってるにゃおじさん。僕らがこの場面で失敗なんてすると思う?」

柳沢:「確かに、想像できないね」

チシャ猫:「まぁ、カヤカが失敗したら知らにゃい」


 軌道のデータ、各種数字、気象情報。端末のディスプレイを流れていく数字が二秀史の脳裏に刻まれ、徐々に脳裏の視野に軌道が浮かび始める。

 狙撃、とは困難なものだ。400m先の、時速7kmで小走りの相手に物を投げて当てることだって、道具や機械の助けがなければ至難である。

 それを、400km上空の、秒速7kmで移動する物体に投げて当てるというのだ。

 ……ヒトでも、ヒトの叡智を結集させた機械でも、達成不能な困難。

 だがそれをなし得るとしたら……。


チシャ猫:「地球規模の気象データもそっち送った!」

 砂浜に現れた秀史を見て、『共工』部隊の兵士たちが色めき立つ。

「いたぞ!ターゲットだ」
「散開、十字砲火用意!」
「十字砲火!」

 そんな状況も見えていないかのごとく……秀史の体が、くにゃりと崩れ落ちる。

 全身の脱力。己の姿勢を維持することすら放棄するほどの。

 すべての筋肉をゼロにし、シナプスの信号一つで全身を一度に炸裂させる準備。

 傷ついた獣がうずくまるような動作。

 それはつい先日、採石場の上で『魔弾』が見せた”構え”――


GM:脳裏に集積された情報が描く軌道が徐々に濃く、絞り込まれていく。脳からのコマンドすらも必要ない。当たるときに当てる。極限まで己を自動化し、二秀史はただ、『その時』を待つ……。

秀史:ヤシマ作戦のシンジもこんな気分だったのかねぇ……。

チシャ猫:その作戦は1発目を外すフラグだにゃ!(一同爆笑)

柳沢:ルール的にはありだけど、本来人災派遣は常識外れのことをやるとリスクがあるというコンセプトのシステムなんだよねえ(苦笑)。

紗綾:コンセプトは得てして裏をかかれるものなのです。

柳沢:いやいいんだ、ただツッコミする奴がいなければならないという義務感でツッコミをしているようなものだから(笑)。

GM:ここらへんは故意犯です。キャンペーンの最終回という特殊演出、周りに一般人のいない孤島、シタナガくんが最初に言っていた『大陸を超えて当てるスリケン』というキャラクターとしての伏線の回収、使用したらリタイヤというコストを払っている、等をふまえた例外中の例外とお考えください。

※※

GM:カメラは再び管制塔に。神像への再攻撃に向けて走り始める紗綾。その周囲では、『共工』の兵士たちと、C国部隊の戦闘が続いている。『共工』の訓練を受けた最精鋭部隊の火力は凄まじいが、要所でMBSの二人の幻術や砲撃の妨害があり、最も『共工』が得意とする半包囲からの集中砲火の陣形を完成させることができない。

チシャ猫:ハッキングの合間に通信ジャミングもバンバン入れておこう。

GM:人員のバックアップこそないものの、情報関係ではCCCからの支援が色々と飛んでいる。大校が檄を飛ばし、崩壊寸前だった戦線も盛り返し始める。もともと数では勝るC国部隊。C国が体制を立て直しきれるか。それまでに管制塔が陥落するか。……分岐点はまだ見えない!

※※

GM:うーん描写はこのくらいが限界だ―!(一同笑)あとは何か言いたいセリフあったら言っておいて(笑)。

柳沢:「……そう簡単に折れる気はないが。……できれば早めに頼むよ、カヤカ君……」と独り言ち、空を見上げよう。

チシャ猫:「遅れられたら困るにゃああ!!

紗綾:急いでくれよ(ダブルミーニング)(笑)

秀史:「チッ。……タイミングが難しいな。雲間で稲妻が走ったら逸れて終わりだ」

チシャ猫:そこで二さんに呼び起こされる師匠の声の記憶。

秀史:師匠と声交わしたことあったっけ……?(笑)

紗綾:言わずとも教えた、って感じでしょうか?

GM:「当てるように投げろ」「そうすれば当たる」

柳沢:長嶋茂雄みてーなアドバイスしてんじゃねー!(笑)

チシャ猫:そもそも師匠すら大気圏外の物を撃ち抜く想定をしていない可能性。

柳沢:サテライトキャノンもびっくりの戦略兵器。

チシャ猫:ビルの屋上から東京タワー狙ってた彼が成長したねぇ、って思ったけど初手からおかしいんだよにゃぁ(笑)。

GM:では、君の脳裏に、師匠の言葉が浮かぶ。「いなずまの あとひかるこそ きちじなれ さきにひかるを ふかくつつしめ――」

柳沢:あ、確かにそんなこと言ってた気がするな。

秀史:「……いや、そうか。稲妻が光らないタイミングに投げようとするんじゃない。稲妻が光った瞬間に投げれば雷の影響は受けない!」

チシャ猫:これは稲妻が自分に振ってきたエネルギーで投げかねなくなってきた。

※※

カヤカ:大変お申し訳ございませんでしたあ!

GM:おおっ!

一同:おかえりー!

カヤカ:すぐ準備します!

GM:はっはっは、主役は最後に登場するんだ!

●カヤカのターン

GM:では再開、カヤカくんどうぞ!

カヤカ:『アドヴァイス』もPPも残り全部突っ込んで6D+10、これでリソース全部!もってけ有り金ために溜めたバイト代1年分~~~ッ!!(ころころ)……33!

一同:おおーっ!!

チシャ猫:カヤカってない!

柳沢:お見事ッ!

カヤカ:しゃおらァ!!……しばらくはCCCの食堂とカップ麺で生活します!(笑)

GM:……、……、……君は、専門の訓練を受けた宇宙飛行士でさえ困難な作業を、超人的な迅速さと正確さでこなしてゆく。

チシャ猫:「カヤカ、そっちどう!?もう時間がない!!」

GM:回路が接続され、ソフトでは制御できないようセーフティとなっているレバーを倒し、スイッチを押し込み……。

カヤカ:「これでラストォ!!」ここはエンターキーをッターンかな?(笑)

GM:ここはより劇的に。……最後に、透明なケースで覆われた非常スイッチを叩き割り、押し込む!

カヤカ:ガッシャーンッ!

GM:生きている人間の内臓を縫い合わせるような困難な任務を終え……宇宙ステーションは制御を取り戻す。……と同時に、復讐神が取り付いていた補給ユニットのエリアのボルトが火薬で爆破され、パージされる!

カヤカ:「……えっ、あっ」と、夢中で作業してたので、今何をしていたたのか理解が追いついた顔。

GM:「A………GYAAAAAAAAAAAA!!!」虚空へと追放されていく神の頭部……!

カヤカ:「……あーいむうぃなあああああああ!!!エージェントで初めて宇宙ステーション爆破した男になったぜ!!!」

柳沢:爆破してないから!(笑)

●チシャ猫のターン

GM:チシャ猫は、宇宙ステーションの制御が管制塔に戻ってきたことを確認する。

カヤカ:「はっはっはやっべえ、完全にテンションがハイになったまま戻んねえ!!あと頼んだァ!!!あーっはっはっは!」

紗綾:そのまま宇宙空間に飛び出しそうな勢いですぅ。

カヤカ:ひとしきり笑った後に、無重力に身を任せてふわふわします……。

GM:あとは衛星の軌道をちょっと修正、計算して正確に元に戻せばいい。ゲーム的には、この猫さんの判定がクリアされればミッションコンプリートとなります!

チシャ猫:「来た来た来た来たぁ!カヤカ、よく頑張ったんにゃ、あとは任せろ!」

柳沢:足掛け5年、長いミッションだったねえ。

紗綾:『む、もうちっと伸ばしてもいいんじゃぞ?』

秀史:まだ斬り足りないのか(笑)。

GM:まだ感慨にふけるのは早いぞ!何のかんの言ってもあと40必要だ!(苦笑)

柳沢:と言っても猫君は危なげないからなあ。

チシャ猫:覚醒『ダイブイン』だけでよさそう。ハッカーで(ころころ)44!あっぶな!

一同:おおー!

 チシャ猫は、自らが修復した管制塔システムで、カヤカが復旧させた宇宙ステーションにアクセスし、現在の状況を把握する。

 軌道修正のプログラムを構築、送信。

 ……遠く離れた衛星軌道で、ステーションの姿勢制御用のスラスターが駆動、落下に抗う。間一髪、阻止臨界点を超える前に、かろうじて宇宙ステーションはその軌道を取り戻した。

カヤカ:完璧ぃ!!

柳沢:お見事だね!さすがに防衛に忙しくて労っている余裕はないけど!

GM:もちろん、これは応急処置だ。宇宙ステーションも管制塔も、どこかで正規のスタッフによる点検、オーバーホールが必要だし、大規模なメンテナンスやソフトウェアの更新などが必要になるだろう。だが、当面の危機は去ったのだ。

「宇宙ステーションは軌道を取り戻した!繰り返す、宇宙ステーションは軌道を取り戻した!」

 管制塔から、大校のスピーカー音声が島中に鳴り響く。

 それは勝利の宣言であり、テロリストたちの目標が潰えたことを示すものだった。

 『共工』部隊の士気は目に見えて衰え、総崩れになる……と思いきや。今までの死闘が嘘のように、整然と撤退を始めるのであった。

柳沢:「くははははは! この『枯れ柳』、易々とは折れんぞ! さあ、折れるものなら折ってみたまえ! さあ! さあ! さあ! くはははははは!……って、おや?」

GM:C国部隊の追撃が始まる。この閉鎖された島の中から、『共工』が捕まらずに逃げおおせたかどうかは、君たちの知るところではない。だがしかし、戦術と謀略を以て君臨するエージェントを、謀略を防ぎ戦術を以て打ち砕いた君たちは、紛れもなく『竜退治』を為しとげたのだ。

柳沢:「ふむ……。カヤカ君と猫君がやってくれたか」


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