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リストラから我々人事が学ぶべきこと。

先日、新型コロナウイルスの影響から、古巣が大量解雇(正式には早期退職制度を利用)に踏み切った。

当然、大量解雇をしたとしても経営状態は利益を確保できるほどに戻ったわけではない。
また、銀行からの追加融資も受けており、返済も引き続き行うこととなる。

登場人物を大きく分けると次の3者となる。
1、会社
2、早期退職を選び去る者
3、引き続き残る者

それぞれが、それぞれの立場で思うことがあり、そして学ばなければいけないと深く感じる出来事となった。

1、早期退職募集について

まず、早期退職を募集するにあたり、会社としては現状何名まで減らさなければいけないのか、どのぐらいの人件費インパクトがあるのかを出さなければいけない。
その際に、言い方は悪いが会社は経営的な目線で人員の選抜を行うこととなる。

気を付けるべきことは、まさに当人へのアナウンスの仕方だった

ストレートに表現すると、「残ってほしい人」と、従来のパフォーマンス上「残ってはもらいたくない人」と2つに分かれる。

その際、両者には相当気を遣ったアナウンスをしなければいけない。
当人の実績に差はあれど、今日まで会社のことが好きで勤務してくれていたことに変わりはないのだ。
だからこそ説明は丁寧にしなければいけなかった。

会社として、人数を目標値まで減らすというノルマがある。
残ってほしくない側の社員には、それを聞いたら「早く辞めたい」と思えるようなストーリーに誘導することが必要であった。

そして、残ってほしい側には、早期退職に乗っからないように、「辞めないでほしい」と伝えることも必要だった。

2、アナウンス

会社の決めた人数通りに早期退職募集があり、一人ずつ面談が行われた。

経営陣が考えた通りに選別が行われ、あらかじめ用意されていたストーリーを、それぞれに話すことで誘導は成功し、経営陣の残ってほしい人だけが残るという素晴らしい結果に終わった。

そして、最終日を迎え、静かに終息したかと思っていた。
しかし、結果はそう甘くはなかった。

3、去る者は後を濁す

実は、残る側と早期退職を決めた者の間で「答え合わせ」が行われてしまった。
今回の経営陣のミスは、残る側の社員に「〇〇というストーリーで話しているから、あなたに残ってほしいと言ってることは他言しないように」と一言も言わなかったというところにある。
社員が答え合わせをするなど夢にも思っていなかったのかもしれない。

答え合わせが行われたときには
A「私は完全にジョブチェンジをしろと言われた」
B「え、私はそんなこと言われてないよ~。」
C「私もAと同じこと言われた!」
というように、ストーリーが二つあったことを全員が知ることとなる。

実際に早期退職を望まれた人間たちは、今の部署からは離れて、現場へジョブチェンジをするよう言われ、二度と同じ部署には戻れないことを伝えられている。

彼らはすでに希望退職の意思を示しており、騙されたという気持ちでいっぱいだっただろう。

ある者は大声で「自分はかわいそうな人間」とつぶやき、
ある者は各部署へ自分のされたことや早期退職組がどんな目にあったかを告げまわった。

4、その後の結果

会社内には不信感がうずまき、経営陣への批判が噴出したのだ。
このまま全員雇用していたら、全員が立ち行かなくなったことは明白であり、会社としての存続も危うかったであろう。
ただ、イチ社員レベルでそこまで把握するのは非常に難しい。
また、個人の感情も入りまじり、答え合わせ後の負の感情はものすごい力となって社内へばらまかれてしまった。

5、今回学んだこと

今回学んだことは以下である。

①経営者は社員の感情まで把握したうえで、リストラを決行するべし
②切る側でなく、残す側の社員への配慮をすべし


残った者が一致団結して乗り越えねばならない苦境の中、ばらばらになってしまった今、どう再建していくのかがとても気がかりでならない。
また、再就職は現状難しいとも聞いており、早くこのコロナ禍が過ぎ去ることを祈るばかりである…。

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