見出し画像

サイン会の思い出

この間CDを整理していたときのこと。保管していた箱のひとつを開けるとアーティストの直筆サインが入ったものがいっぱい出てきた。直筆で私の名前が入っていたり、日付が入っているものもあ。私の脳裏にはそのCDと同じ数だけの思い出が蘇った。
サイン会というものに参加し始めた頃はアーティストと直接お話をするなんてもってのほかで、「頑張ってください!」の一言を伝えるのが精一杯だったが、慣れてきてからは「今日はこれを伝えよう」と内容をひとつだけ決めておくことで、スムーズに話ができるようになった。
なんなら顔を覚えてもらった経験もある。あのときはすごく嬉しかったが、気を抜くと客とアーティストという距離感がバグってしまいそうで怖かったなぁ。



そしてアーティストと話している中と、顔を覚えられる以外にもびっくりしてしまうようなことがいっぱい起こる。
これはラックライフとココロオークションそれぞれのリリイベに行った時。どちらもミニライブの後に握手会兼サイン会or特典お渡し会があったのだが、手が触れた瞬間、大石さん(ラックライフ)と井川さん(ココロオークション)それぞれから「えっ、指綺麗!!」という感想をもらったのだ。

私は幼少期からアトピーもちで、特に手の甲や指の肌荒れがひどかった。ときには睡眠中に掻きむしったことによる傷ができていることもある。
もともと人差し指から小指までがめちゃくちゃ長いのが特徴ではあったが、アトピーによる傷が気になってあまり自信を持てていなかった。
なので、傷よりも指の長さを見て、手が綺麗だと言ってもらえたことがすごく嬉しかった。

面白いのは、お二人ともドラマーであるところだ。スティックをどう持つかを日々指を見ながら研究しているのかなとか、指が長い方がパフォーマンス的に色々と有利なんだろうかとか、当時はそのように解釈した記憶がある。
※ドラマーは関係なく、たまたまお二人の気になるポイントが一緒だっただけの可能性もあるので、あくまでも当方の偏った見解です



そして1番心に残っているのは、5年前の自分の誕生日にwacciのライブを見に行ったときのこと。
当時はライブ終了後サイン会を開催しており、購入したグッズやCDにサイン、自分の名前、日付を入れてもらえていた。そして基本的にはメンバー全員がサイン会に参加するので、5人それぞれとライブの感想などをお話しするのをすごく楽しみにしていた。

当時一番最初にサインを入れてくださっていたのはドラムの横山さん。事前に購入していた「東京」のCDをお渡しする。
名前を訊かれたのでお伝えし、合わせて「今日誕生日なんです」とお伝えしたところ、「おめでとう!」というお声をいただけた。
それだけでも嬉しかったのだが、さらにCDジャケットに「おとねこすけちゃんハピバ!!」と書いてくださった。(※実際は下の名前です)
ネットやCDショップで売っている盤が、この世で一つしかない、私しか持てない宝物に変わった瞬間だった。

その後ギターの村中さんにCDがまわり、話しかけようと思った次の瞬間、「えええお誕生日!?おめでとう!!!」とあの元気一杯なお声が飛んできた。
そりゃそうだ。横山さんの字見ればこのお客さん誕生日なんだって一瞬でわかる。私が話しかけなくても向こうから話してくれるなんて。贅沢すぎる。

そしてCDはボーカル橋口さんにまわる。
そのときに橋口さんがかけてくれた言葉を、私は一生忘れないと思う。


「誕生日っていう一年で一番大切な日に、僕たちのライブを選んでくれて、ありがとう」



自分たちを応援してくれること、ライブに来てくれることの感謝が自然と出てくるところに、橋口さんの人柄の良さが滲み出ていた。これは当時も今も印象として変わっていない。

ただひとつ、今になって気づいたことがある。
誕生日に推しのライブに行くことは昔からの夢だった。そして5年前の誕生日、自分の自宅から行ける範囲のところに推しが来てくれるチャンスを得た。当時の私は、もちろん逃すわけにはいかないと思っていたし、チケットをとることに何の躊躇いもなかった。
だからこの言葉をもらったとき、嬉しかったけど「あったりまえじゃないっすかぁ」くらいのテンションだった。

来年も実は、自分の誕生日に推しのライブが2本予定されている。どちらも遠征しなくていい、在来線で行ける範囲の会場。でも家庭をもった今、誕生日をお祝いしようとしてくれる家族を放っておいてライブに行く勇気はない。
また、基本的には家族を放置して趣味に没頭するタイプの人間だが(ごめんなさい)、家族の誕生日や記念日はやっぱり一緒に過ごして、おめでとうって言い合いたい。
誰かにとって大切な日に、自分たちを優先してくれる人がそう多くはないこと、そして優先してもらえることがどれだけ嬉しいことなのか、橋口さんは分かっていたからこそ出てきた言葉だったことに、やっと気付かされた。
久しぶりにその時のCDを目にしたけれど、もう二度と訪れない、尊い時間だったのだと知って、その場でぎゅっと抱きしめた。


wacci含めだが、コロナ禍になってからは、新譜を発売したタイミングなどでオンラインのサイン会を開催しているアーティストが増えた。私はオンラインで参加したことはまだないが、画面上とはいえ決められた時間独り占めできるとなるとめちゃくちゃ緊張しそうだし、リアルでは起こり得ない出来事に巻き込まれそうだ。私の場合「聞こえてますかー!」って導通確認をやたらとやってしまいそうで、想像してちょっと笑ってしまった。
推しと心を通わせるというと恐れ多いけど、でも通じ合える時間は今も昔も確かに存在している。どんな形になってもファンとアーティストの関係は続いていくのだと、書きながら改めて思ったのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?