「トラネキサム酸？」
プレゼントした化粧水を見ながら首を傾げる。
「ふぅん。色白好きだもんねぇ。」
妻は肩につく長さの髪を指先で触りながら、ちらと僕を見る。
「見たの。色白ロングヘア、ワンピースの長身美女と映画館に入るとこ。」
深呼吸して冷静に、早口にならないように答える。
「あれは山崎だ。女装して外に出たいけど一人じゃ勇気が出ないからって頼まれたんだよ。」
スマホに入れたワンピース姿の山崎の写真を見せる。
「本当だ！山崎くんだ。えー、私より綺麗かも。」
「そんな事無いさ。で、山崎がお前に会った気がするって、誤解されてたら申し訳ないからってコレ。」
妻が化粧水を片手にトラネキサム酸笑顔になった。
「山崎との秘密、言わなくてごめん。」
「私こそ疑ってごめんなさい。山崎くんなら怒らないから、次からは言ってね。」
もう嘘をつかずに山崎と会える事に心底ほっとしながら、妻の頭を撫でる。
山崎と付き合ってるって事は、絶対に秘密だけど。

毎週ショートショートのお題はいつも難しいけど「はぁ？」って声出たのは初めてかも。
トラネキサム酸って！

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