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【番外編】女の!限界バイト面接列伝「動画編集」

どうも、さぐです。
5月から無職になってもう10月になってしまいました。
もちろん仕事は探してるんです。ZOOM面接をしたり自己PRを送ったりするんですがパタリと連絡が途絶えてしまいます。みんな死んでしまったんでしょうか。
その中でもやっと、面接、会社説明に進める会社がやっとありました。
が、まあ、一筋縄ではいかねえンだわ。(中指立てる)

応募するとすぐにZOOM面接の約束に。10〜15分ほどで終わるとのこと。最近の応募要項はAIの自動アンケートになっていてとても楽チンだ。質問に答えるとサクサクと面接の日程まで決められる。

ZOOM面接当日、少し緊張したものの、ビデオ通話で現れたのは金髪にマスクをした若い女性だった。下手をしたら年下かもしれない。
極、極、極めて事務的な説明を淡々と述べるだけの女性。

「弊社はタレントさんのYouTube、会社のPR映像、多岐にわたって映像を取り扱っております。今回募集いただいたアルバイトでは、その編集作業をしてもらうことになります。中にはお墓やマンションのPR映像、アダルトコンテンツもありますが、本当にごく一部なので最初からやってもらうことはありません。」

きっと、この説明を死ぬほどやってきたんだろうなあ。てかお墓とAVって同じくくりなの?

「何かわからないことでしたり、質問はありますか?」

「お墓やアダルトコンテンツとありますが、それだけをやらされる、やらなきゃいけないこととかありますか?」

「いえ、それはありません。弊社の映像編集は多岐にわたりますし、途中途中社員と面談がございますのでその時に希望や適性など考えて仕事を決められます」


 実は、まだ失業して間もない頃、すぐにZOOM面接が決まった。それも動画編集の仕事だった。とにかく接客しないでコツコツ作業的な仕事がしてえと思っていたわたしはとりあえず動画編集・編集、と仕事を探していた。ZOOM面接が決まったものの、乗り気じゃなかった。「一部アダルトコンテンツの編集をお願いすることがあります。」と載っていたし、編集している動画の内容もよくわからないまま面接が決まったのできっと面接でその詳細を明らかにしてくれるんだろうと思った。

初めてのZOOM面接、動作確認をしてホストのサインインを待っていると、金髪にマスクをした若い女性が映った。

「今回のお仕事では動画の編集をしてもらう予定です。一部アダルトコンテンツがあります、という表記がありましたが確認してもらえましたか?」
「はい、確認しております」
「まず就業してからなんですが、3ヶ月は試用期間となります。その3ヶ月はアダルトコンテンツのみ編集してもらうことになります。例えば1時間のものを30分に、など、短くしてもらう作業です。モザイク処理はされている、もうすでに撮影済みのものですので、ご安心ください。3ヶ月を終えれば希望や適性に合わせてどのようなお仕事ができるか一緒に考えて働いていただきます。ここまでよろしいですか?」
「・・・はい。」(全然良くない)

(全然良くない)
全然【一部】じゃねえだろうが

AVに偏見があるわけではない。最初に何にも情報を与えずに「一部アダルトコンテンツ取り扱いがあります」と大事なことは小さい注釈にして。永遠に退会できないメルマガと同じ手法じゃねえか。
もう真面目に連絡するのもバカバカしく思えたが、「辞退させていただきます」とだけ連絡してやめた。

後々、それが彼に「偏見が多い。なんでもやってみてから文句言え」と叱られた。一瞬でもいいからやってみるべきだったのか?モヤモヤした。

あれ?待って?金髪でマスクの女性・・・あれ、あなた、一度お会いしたこと・・・?いやいや、マスクだからな、金髪の人だってたくさんいるし、マスクだしな、わからないよな。

会社説明会を行う、というので前回の反省を踏まえ、行ってみないとわからないだろうということで行くことにした。
指定されたビルに向かう。しかし、似た名前のビルが乱立しており、全く別のビルに来てしまったようだ。ピンチ!

「すみません。今日会社説明会のお約束をさせていただいたさぐと申しますが・・・」
「はい、はい、はい、ガチャ」

不安なままぐるぐると渋谷を徘徊し、それらしきビルに入る。「編集のバイトの人はこちら」と雑に貼られた扉を見つける。入室するも、誰も反応してくれない。さらに「編集のバイトの人はこちら」と張り紙されたところに進んで行く。

「すみません・・・」

振り返った人たちはすごく嫌そうな感じだ。

「あの・・・ご連絡したさぐと申しますけど」
「ああ・・・」

めちゃくちゃ嫌な感じだ。
そんなことなら電話の時点で断ってくれよ。

状況から見るとせ説明はすでに始まっており、後から見知らむ客が現れたことで場がしらけている、という感じだ。

「遅れるって連絡きてませんけど。遅れて来られても・・・」
「いや、場所を間違えてしまってすぐ連絡したんです」

渋々案内されると、メインで説明を行なっている好青年、それをとり囲うようにボーイッシュだが礼儀正しい女の子、なんだかダルそうな男の子3人。

メインで説明を行なっているモニターにはアダルトビデオとなる映像が映っていた。

席に座り、説明を受ける。 

もうすでに完成されているAVを3分の1くらいの時間に短縮したサンプル映像をつくるとのことだ。サンプル映像を作ったら、サムネイルの画像、タイトル、内容も自ら書かなくてはいけない。それを1日5時間だとすると5本、100~200本は作らなければならないという。

そう!ここはAVサンプル動画大量生産工場だったのだ!!!!(前回面接した会社と同一の会社だった)

尺がバラバラなAVを3分の1に短縮、それを100本近くつくる。かなりスピード感が大切にされる仕事だ。でもそれがAVとなると展開も単調だし、そもそも人間の陰部を見続けてタイトルや説明文まで考えなければならない。かなりシビアだ。そもそも、面接の内容と全く違うことを説明しているくせに、拒否したらこちら側が悪いみたいな空気だ。

同じく説明を受ける3人のうち、金髪ウルフカットの髪型、ピアスまみれのオシャレくんが、後ろで10~15人くらいがAVのサンプル動画を作ってる中の大柄でおっとりしてそうな男の子に話しかける。

「あのね、ごめんね。がんばってるのはわかるんだよね。でもさ、今月のノルマ追いついてないのわかる?なんで早く出来ないと思う?」

かなり圧強めの面持ちで大柄おっとり男子を詰め始めた。怖い。お前、社員だったの?だからめちゃくちゃだるそうにスマホいじってたの?経験からわかるが、かなり詰め慣れた人物だ。「俺、間違ったこと、言ってないよね?」という圧。相手に罪悪感を与えて何も言わせない常套句だ。

サンプル映像の極意、とにかく男優を入れないこと、顔が分かることなどを教わった上で作業する。その間突然、メインで説明していた男性が金髪ウルフカットピアスまみれ男性に「今までの僕の説明、どうでしたか?」と問うた。

いや、メインのお前、部下なのかよ

てかそれ今やること?終わってからやるフィードバックじゃねーの?

「あー、まあ説明自体は、そんなもんかな。最初の説明はもっと短くていいと思うけど。ただ、遅刻する人いるとテンポ狂うからね。今日は人が少ないからいいかもしんないけどさぁ、電車が遅れるとかの理由だったらわかるけどありえないよね」

真隣に遅刻した人間がいてわざわざ言うことだろうか。怒りで震えた。だから電話したじゃないか。電話でダメだと言われたらこちらだってわざわざ来なかったのになんで遠巻きにそんなこといわれなければならないんだ。てか、説明会終わってからやれよ!!!!

この金髪ウルフカットピアスまみれ男性がかなりの権力と圧力を持ってることがわかり、全く働ける気がしなくなった。お前、完全にアルバイトを「数」としか見てねえだろ。ふざけんなよ。

見知らぬ男女で大きい画面でアダルト動画を見る。冷静に、どの表情を切り取るべきか、どこで男性のモザイクが入るかなどを見ていく。なんなんだ。この状況。圧力強めの金髪ウルフカットピアスまみれが勢力握り、真隣で遅刻した文句を言われ、近くのアルバイトが詰められ、一体何が悲しくてここまでして働かなくてはいけないのか。バカバカしくなった。さぐは、憤怒した。

「わたし、辞退します」

なるべく金髪ウルフカットピアスまみれにわからぬよう(実際わかるに決まっているが)メインで説明していた男性にこっそりいうとそそくさとビルを出た。


ささやかながら会社の部屋に中指を立てて、その場を立ち去った。


限界なバイトはまだまだたくさんある。それを嗅ぎ分ける嗅覚、途中でもそこから逃げる行動力、とにかく限界なバイト先で限界にならないことが大事だ。いくら後で悪口を言われようと、迷惑をかけようと、自分が限界になる前に逃げよう。そして限界バイトにまた戻らぬよう焦りや世間体で仕事を選ぶなかれ。

そう肝に銘じながら渋谷パルコのうどん屋さん、おにやんまの肉うどんを啜って帰宅した。

限界バイトで限界にならない日はいつになるんだろうか。もう限界バイトも限界バイトで限界になるのも限界だ。

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