私の持っている『新明解国語辞典』によると、「痕跡こんせき」とは、「以前に、何かが有った（行われた）ことを示しているあと」だそうです。

「痕跡」と書いて「かこ」と読む歌を当時20歳そこそこのアイドルが作りました。タイトルに書いてあるのでわかると思いますが、当時20歳そこそこのアイドルとは嵐の二宮和也さんです。『痕跡かこ』は、2004年の嵐のライブで披露されたにののソロ曲です。

嵐の歌はほぼすべてサブスクで聞くことができますが、この歌は聞けません。なぜなら、音源化されていないからです。ライブ映像でしか聞けません。でも、世の中には知らない方が幸せなことがいくつもあるので聞けない方がいいかもしれません……（遠い目）。

ただ、私は『痕跡かこ』がにののソロ曲で1,2を争うほど好きなので、私の「はぁ……ずりぃよ……まったくもう……好きぃ……」についてできるだけ言葉を尽くしたいと思いました。

「消えぬ」、「五月雨」、「痕」、「乾かぬ」、「消せぬ」、「闇夜」、「影」と、不穏な言葉のオンパレード。清清しいほどの暗さ。「闇夜」なんて直球で暗いです。

私、ずっと「五月雨の後」だと思っていました。というのも、この歌を知った当初、歌詞を知りたいと思ってインターネットで検索したら、歌詞検索サイトでは「五月雨の後」と記載されていたからです。違和感もないので、「『五月雨の後＝晴れ』と仮定すれば、ギリ前向きか。 いや、五月雨は暗いか」と自問自答していました。しかし、このnoteを書いてる最中にやっとDVDを購入でき、字幕ありで見たら「五月雨の痕」でした。

インターネットにある情報を鵜呑みにした私のばーか！！！！！！

ちなみに、他の歌詞検索サイトも間違えているし、他の言葉もちょいちょい違うので、インターネットの功罪をひしひしと感じました（この先、「五月雨の後」だと思って書いた箇所がありますが、自戒の意味も込めて消さずに取り消し線を引きました）。

「五月雨」は梅雨を表す言葉です。梅雨といえば、どんよりした天気の日が続く時期。ただ、「五月雨の後」なので、雨が降り続く日が終わり、日差しが照りつける夏本番を迎え始める時期のはずです。しかし、「五月雨の後」とは思えない「晴れ」とは無縁な言葉の数々。この歌では「五月雨」は言葉通りの意味を表すとともに、憂鬱な状況から抜け出せない心理描写も表現しているのではないでしょうか。てゆーか、色んな気象条件がある中で「五月雨」を選ぶんだ、そうか……。

はぁ……ずりぃよ……まったくもう……好きぃ……。

雨の日が続く時期から照りつける日差しが眩しい日に移行するように憂鬱な状況から抜け出して軽やかな気持ちになっているであろう「五月雨の後」なのに、「乾かぬ涙の痕」は消えません。ここで、「涙の痕」のところに「痕跡」の「痕」がご登場しているので、調べました。

「涙は液体だし、血液の一種だから③かなぁ」なんて思ったら、①のところにその意味で使われている言葉として「痕跡」があります。

はぁ……ずりぃよ……まったくもう……好きぃ……。

にのが「痕」を選んだ意図はわかるはずもありませんが、「乾かぬ涙の痕」は「きずあと（痕跡こんせき）」なんだ……。

でも、この歌のタイトルは「痕跡」と書いて「かこ」です。
涙の痕が乾かないのはなぜ？
それは、「愛しき人の影」が消せないから。

闇夜に「愛しき人の影」を思い出しては涙の痕が消えない（＝泣き続ける）ほどの精神状態ということは、「愛しき人の影」が「痕跡かこ」ってこと？

絶対何らかの悲劇が起きてるじゃん……。

はぁ……ずりぃよ……まったくもう……好きぃ……。

歌の始めの時点で、「なんで『痕跡』を『かこ』と読むんだろう？」の謎に迫っている私の解釈、なかなかに自己中心的な行為ですね。
でも、これが楽しいから歌詞の世界を覗いちゃうんだなぁ。

おや、清清しい暗さからは一転して、全然悲劇起きてないじゃんというほんわか場面です。私、こういう微笑ましい描写がめっちゃ好きなんですよ。でも、こういう描写がある歌は大抵微笑ましいでは終わらないってことを長年の経験から知ってます。はぁ……つら。

「夕焼け川原を歩いてる/君と一緒に笑顔つれて」にすべてが詰まっているじゃん......。夕焼け川原を歩きながらおしゃべりすることが二人にとって、「普通の幸福しあわせ」で大切な時間なんだねぇ......。本当にねぇ……こっちは君らの幸せを願っているよ、幸せでいてくれよ。

今日のおしゃべりは、晩ご飯をどうするかです。家で決めてこい。笑
まぁ、仕事帰りに待ち合わせして買い物をしてから家に帰るっていう感じなのかもしれないけど。そして、この「晩ご飯どうする？」という何気ない会話も含めて「普通の幸福しあわせ」なんでしょ？

でも、「小さな小さな」でもいいのに間に「すごく」を入れるのがねぇ……。
彩りを添えるねぇ……。

はぁ……ずりぃよ……まったくもう……好きぃ……。

彩り添えましたね……。衝撃の事実を突きつけてくるじゃん……。
衝撃の事実、すなわち「涙の痕」が消えないほどの何らかの悲劇とは、「貴方が死んでしまったこと」です。

もうさ……やめて？
「普通の幸福しあわせ」を提示した後に直球の悲劇をお知らせしないで。
「大きなすごく大きな衝撃の事実」じゃん……。
清清しい暗さから始まって心がほっこりする微笑ましい描写を挟んでこんなサラッと「死」という事実を教えてくれるこの歌作った人の思考、どうなっているの？

はぁ……ずりぃよ……まったくもう……好きぃ……。

くぅ〜〜！めーーーっちゃ憎いわ〜ちっくしょ〜！！！

（※心の底からの賛辞）

貴方がいなくなってから思い出すのは、あそこに行って楽しかったとかあれをもらって嬉しかったとか所謂「思い出」となる出来事ではなく、貴方がいた「日常」か……。そして、「普通の幸福しあわせ」だった日常を思い出しては、自分の中に生き続けている貴方が今ここにいない現状を受け止めきれていないから、「乾かぬ涙の痕」なのかなぁ……。「普通の幸福しあわせ」も「痕跡こんせき」であり、「痕跡かこ」なのかぁ……。

そりゃ、「痕跡」と書いて「かこ」と読ませるのに納得しちゃうなぁ……。
てゆーか、衝撃的事実があるから改めて「君と一緒に笑顔つれて」が沁みます。
めっちゃ良い表現じゃん……。
それなのに、なんで「貴方」は隣にいないのよ…….。

はぁ……ずりぃよ……まったくもう……好きぃ……。

「他の人を愛しても/他の人でしかありません」ってねぇ......。
この世の真理じゃん......もう……はぁ……人生何回目？
当時20歳そこそこのアイドルにこんな詩書かせちゃダメよ。

私の中で、宇多田ヒカル『誰かの願いが叶うころ』の「みんなの願いは同時には叶わない」と拮抗するほどの真理だし、この歌も2004年だわ……怖っ。
もうなんなの？　1983年生まれは2004年に真理に気づく年なの？

でも、「この人の良さ」と「あの人の良さ」は違う良さだもんなぁ。この人とあの人に共通点はあるかもしれないけど、そもそも比較対象ではないし、「この人」の穴を「あの人」で埋めることはできないもんね。人間って難しい生き物だわ。

夏が過ぎてもあなたが死んだことをずっと引き摺っているかと思いきや、「幾度」だから、相当の期間が経過している……怖っ。もうこうなってくると、日常生活に支障きたしてるレベルで心配だわ。でも、いつか引き摺らなくなる日が来るのはそれはそれで嫌みたいなこと言ってます。「愛しき人」が正真正銘「過去」になっていくけど、「過去」にはしたくない的な……？
なんか「闇堕ち」っていまいちよく分かっていなかったけど、こういうこと？

ま〜た私の大好きな微笑ましい描写だよ〜。
しかも「時は夕暮れ」なので「普通の幸福しあわせ」タイムですね。

そして、この場面にこの歌最大の「はぁ……ずりぃよ……まったくもう……好きぃ……」ポイントがあります。それは、「すみれ」です。

この世の中に色んな花があるなかで、「すみれ」を選ぶセンスやばくない！？！？！？

数ある花の中からすみれを選ぶんですよ、カズナリニノミヤは！！

少し荒ぶってますけど、すみれについてあまり知らないので調べました。

「すみれ」が咲くのは、「五月雨」前の時期だそうです。「足元でひっそり」がなんかねぇ……こう、慎ましさを感じさせます。そして、「五月雨の後」には見かけないみたいです。はぁ、まったくもう。

いやーーーーーー！！！！！

えっ、やだぁ、ねぇ、なに？
怖っ、ねぇ、えっ、はぁ？💢
なぜ「すみれ」を選んだ？　
「すみれ」じゃなきゃいけない理由があるでしょ？　
ねぇ！にの！教えてよ！

こうなったら花言葉も調べちゃいますよね。

「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」

「小さなすごく小さな普通の幸福しあわせ」をぎゅっとしたら「小さな幸福しあわせ」になるじゃん。もう、なんなの！💢

こうやってまた私はインターネットに踊らされるんですよ。
結局、自分に都合が良ければ利用するんですよ。人間って怖い。
でも、これだけはnoteで使える一番大きな文字で書きたい。

ねぇ、にの！！「すみれ」を選ぶセンス、最高だよ！！！

〜回想（※私の妄想）シーン〜
貴方「ねぇ見て〜かわいい〜」
僕「こんなところに花咲いてたんだね」
貴方「ねぇ〜気づかなかった〜」
僕「これ、すみれだね」
貴方「この花綺麗だけど、いつかは枯れちゃうね」
僕「この季節になったら、また見れるよ」
貴方「うん、見れるといいね」

なんて会話があったのかもしれません。
「すみれ」を見て「この花綺麗」っていう感性がちょ〜好きだわ。
そして、「いつかは枯れる」という当たり前のことがこの歌の根底にある「別れ（死）」をさらに連想させて、「二宮和也さんよぉ……はぁ……ずりぃよ……まったくもう……好きぃ……」となりますね。

さっき、水面に二人残したのに、一人になってる〜。現実を突きつけてくる〜。
すみれの回想シーンがぶっ込まれたのは、「水面に一人」をこちらに提示するためだったんですよ。この歌を作った人、本当に策士だわ。ねぇ、にの！

もう、こうなってくるとさ、「貴方」の死因知りたくならない？

私、ずっと気になってたんですけど、私の大好きな微笑ましい描写のところ、「川原」とか「水面」とかやたら「川」関連ワード入ってません？

単に微笑ましい描写を挿し込みたいだけなら、食卓の場面とか買い物の場面とかでもいいわけじゃないですか。

それなのに、一貫して「川」が関連してません？　
「川」が関係するなら、事件・事故に巻き込まれた可能性もありますよね。
でも、「すみれ」のことを考慮すると、余命いくばくもない命説も捨てがたいし。

もうこうなってくると、冒頭の「五月雨」が伏線なのか？
だとすると、事件・事故に巻き込まれた説も有力じゃない？

余命いくばくもない命だったの？　
それとも「川」関連の事件・事故に巻き込まれたの？
どちらにせよ「貴方が死んだ」という事実は変わらないから、そこはこだわってないの？

でも、微笑ましい場面に「川」が関連していることがめっちゃ気になっちゃうな。

ああああぁぁぁぁぁぁああああ！

にの！どうしてくれるの！？！？

待って、少し前向きになってません？
冒頭あんなに清清しいほど暗かったのに。
「痕跡かこ」を「過去」にできたってこと？

「姿かたち違えど」ってことは、「他の人を愛しても/他の人でしかありません」の真理を持ちつつ愛を向けられる対象ができたってことですよね。そして、その対象は、清清しい暗さに光をくれたってことですかね？
僕が前向きになってよかった〜。めでたし、めでたし。

で終わりたいのに、「すみれ」を選んだことも「貴方」の死因もわからなくて消化不良です。だけど、私はこの歌が大好きです。
そして、当時20歳そこそこのアイドルが作ったという事実、どう考えても怖いけど、最高っ！！

5000字越えの長文noteを最後までお読みいただきありがとうございます。

私にブッ刺さる歌を提供してくれるにのがカバーアルバムを出しました。
なんと配信で聞けます。

冒頭でも書きましたが、『痕跡かこ』は配信では聞けません。代わりに、私がにののソロ曲で『痕跡かこ』と拮抗するほど好きな『Gimmick Game』をどうぞ。

参考文献
・山田忠雄ほか七名編『新明解国語辞典　第七版　小型版』、三省堂、2012年、549頁（痕）、550頁（痕跡）

歌詞参照
・嵐『2004　嵐！いざッ、Now Tour!!』通常盤DVD映像