2015年の冬、当時19歳。
初めて私は「高校サッカー」の
決勝のフィールドでカメラを構えた。

姉としてではなく、青春請負人として。
記録として 記憶として 一生の景色として。

カードは 大分西高校と、大分高校。
結果、大分西が3-1で、負けた。

応援席に向かって泣き崩れてる選手
立ち上がれない選手
画面越しにしか見たことなかった過酷な風景を
初めて自分の目で目の当たりにした
動けなかった シャッターが切れなかった
なんて声をかけたらいいか わからなかった

ロッカールームで監督が
“グッドルーザー” だと讃えていた。

2016年、また大分西は決勝の舞台に立った
去年の決勝のロッカールームで
当時2年生だったキャプテンが
「来年また来ようや ここ！」と言った事を
本当にチームで叶えた。

そしてカードも同じ 大分高校。

実況は「去年と同じピッチ、同じカード」
という言葉から 放送された

3年生のマネージャーは、試験で不在だった
間に合うかもわからない状況だった
そんなマネージャーの代わりに
ベンチに、クマのぬいぐるみが座っていた

もう試合時間も僅かだろうと感じていた時には
すでにもう 0-4 、大分西が押されていた。
選手には本当に申し訳ないけれど
私は諦めた 「ダメだ」と 思ってしまった

でも会場は違った、選手も違った
誰一人として 諦めてなかった

ベンチからは「いける まだ時間はある」
「落ち着け いけるぞ」「頑張れ」
「大丈夫 大丈夫」「まずは１点！」
“まだ、終わってねーぞ！”

時間がなくなるにつれ 焦るどころか
観客の声援はどんどん大きくなっていた
会場の空気が 尋常じゃなく 1つだった

涙が止まらなかった、誰も諦めてなかった
少しでも諦めた自分が すごく情けなくなった
あの場所で諦めたのは 多分私だけだった

残り数分、ギリギリでマネージャーが到着した
目に涙を浮かべて ただひたすら祈っていた
形容しがたいほどの 青春が詰まってた
今まで支えた事 ここまで来るまでの選手達
それぞれの葛藤 監督の言葉
きっといろんな人の いろんな想いを
ぎゅっとつめこんでいるんだろうな、と
しっかり選手を見つめてた。

高校生でもなければ 当事者でもない私が
「忘れたくない」と思うほどに

マネージャーが到着した数十秒後
10番のエースが、ゴールを揺らした

信じられなかった 自然と涙がこみ上げた
「こんなことが本当にあるんだ」って思った
会場はどんどん 声援に包まれていった

結局1-4で 試合終了のホイッスルは鳴った

選手は泣き崩れた
キャプテンは、暫くフィールドから
離れる事ができなかった
3年生が 泣きながら抱き合っていた
来年の3年生へ 夢を託しながら

ロッカールームで監督も涙を流した
インタビューでマイクを向けられた
エースも、泣いた

2017年 「三度目の正直」
ずっとそう言い続けてきたキャプテン
大分西は また決勝の舞台に立っていた

“三度目の正直” と言うたびに
“二度あることは三度あるからな”と
皮肉を言われることも 何度もあった

相手は今大会のダークホース、鶴崎工業
決勝で負けたことのない監督は
「優勝請負人」と言われていた

私は会場へ入って 電光掲示板の文字を見た
自然と涙が溢れてしまった
“今年こそ、報われるべきだ” と祈った

試合は完全なシーソーゲームだった
PKを取ったり、取られたり

キャプテンがボールを蹴り上げた瞬間
試合終了のホイッスルは鳴った。

3-1、大分西は史上初の全国大会へ進んだ

でも思ったより 選手達は静かだった
一瞬 ワッ と盛り上がったはずなのに
静かにガッツポーズをして立てない選手
涙を噛み締めて顔を歪める選手
抱きしめあって喜ぶ選手 確かにいた
そしてなにより ベンチで泣いていたコーチこそ

2016年の キャプテンだった。

けど、すぐにその喜びは収まった

大分西の選手が、負けた鶴崎工業の選手を
抱きしめに言った 労いに行った

そこに大分西の「本当の強さ」があった

彼らは2年連続涙を飲んでいたからこそ
鶴崎工業の気持ちが 痛いほどわかる
特に3年生 ずっと悔しい思いをしてきたから
「紫の戦士」が 鎧を脱いで
「高校生」の顔になっていた

相手を認めることは 自分を認めることで
誰にでもできることではない
負けた相手に「強かった」と言えること
負けた自分を「負けた」と認めること
本当に強いなと思った
心の底から 本気でかっこいいなと思った

これはこの鶴崎工業戦だけではなかった
試合終了後、まず相手のチームへ挨拶に行く
勝っても、負けても 関係なく。

落ち込んだ選手を見つけたら、走っていく
「お前のせいじゃねえけん」と 肩を叩く
「切り替えよ、大丈夫やけん」と背中を押す

どれだけ救われた人がいただろう？
どれだけの人に感動を与えただろう？
私にはそれができるだろうか

あるインタビューで「部活の必需品は？」
と言う質問があった

「バナナ」「元気」「スタミナ」「精神力」
いろんな言葉が並ぶ中で
唯一大分西だけが「チームメイト」と答えた

近所のサッカー少年が、
嬉しそうに私に言ってきた

“俺、西高でサッカーがしたい”

そんな彼らを、私は心から尊敬しているし
私も、彼らを見て思ったことがある

“生まれ変わったら、高校サッカーがしたい”

カメラマンとして、ファンとして
姉として、サポーターとして
私は本当に、人生を変えられました。

有難う、大分西高校サッカー部。

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⚽️本当はもっと色々語りたいこともあるし
準決鶴崎高校とのPK戦のことも描きたかった
けど書いてるだけで涙が止まらないので
こんな拙い文章だけど 伝わればいいなと
本当に毎年ドラマが凝縮されていますので
なんか本当に、高校生っていいな 無敵だなあ