発熱: 1/6

体調の異変に気がついたのは昼休みが終わる頃だった。薄っすらと悪寒を感じ、頭も少しボンヤリとしてきた。東京都内のコロナウイルス新規感染者は連日最高人数を更新していた。私は不安を感じ、午後の仕事が始まって少ししてから、オフィスが入っているビルの地下にある薬局で体温計を買った。席に戻って体温を測る。この時の体温は平熱を大きく越えるものではなかった。温かい飲み物を摂りながら私は仕事を続けた。場合によっては残業せずに定時で帰ることを考えた。

一時間経っても体調は回復しなかった。熱はまだないが、最初に測ったときに比べると上がっている。仕事を続けていると頭の違和感が強くなってきた。体温は微熱がある程度だった。しかし体温計の数字以上に体調は悪いと感じていた。定時まであと20分程度であったが、私は熱が出ているので早退をすることを伝えた。

職場はちょっとした騒ぎになった。誰もがコロナウイルスに敏感になっている。熱が出ていると伝えたことが緊張感を生んでしまった。出向元の私の担当者にもこのことを伝えると翌日でいいから医者に行くように命じられた。早く帰るように言われると同時に1週間前までの行動記録をメモレベルでいいから提出するようにとも言われた。思い出せる範囲の行動を書いて提出し、私は職場を後にした。

微熱と倦怠感はあっても動けないわけではないし、食欲もある。ここ数年、年末年始は風邪をひくことが多い。だから今回の風邪も同じだ、少し美味しいものを食べて早めに寝てしまえば明日には回復しているだろうと私は考えていた。自宅近くのお気に入りのつけ麺屋で普段は食べない、少し高いメニューを注文した。

部屋で一通りの片付けをしたあと、私は早々に寝床に着いた。とは言っても時間が早すぎて眠れないから、ぼんやりスマホを見ながら眠りが来るのを待った。しばらくすると頭痛が強くなってきた。少し心配になって熱を測ると38度を大きく越えていた。ここまで体温が上がったのは久しぶりだったから、驚いた私はすぐに部屋を暗くして眠った。まだ翌日になれば回復していると信じていた。

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