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ヨコサワプロ「GTOクイズ(pro)」の検証について

1.ヨコサワプロのGTOクイズ!

あの日Twitterを眺めていたら、ヨコサワプロの「GTOクイズ」が流れてきました。

著名なプロの方にGTOを取り上げてもらえるのは嬉しいですね。


GTOクイズは「Easy、Normal、Pro」と3問ありましたが、気にかかったのはこのProの問題。


このクイズが気にかかった理由は、以前、集合分析をした際に、「BBvsBTN(2betpot)のK-highボードでは、BTNのCB戦略は25%potのレンジCBで疑似GTO戦略を採れる」という結論があったからです。

とはいえ、集合分析の時には、BTNの個別ハンドごとの分析はしていなかったので、せっかくの機会ということで自分でもGTO+を回してみました。

ヨコサワプロのGTOクイズは「Pio Solver」での結果ですが、「GTO+」で回すことでも何かわかるかもしれません。

2.クイズの前提条件の設定

今回のクイズのボードはこちらです。

まずは、前提条件通りにSnowieのプリフロップから各レンジを設定します。

下図の左が「BTN(Open)」、右が「BB(Call)」です。
(より精緻になるよう、1%単位で設定しています。)

次に、BTNのCBのベットサイズですが、Tweetから考察すると、「pot33%,65%,150%」の3つを設定しているようです。

なので、4.9bbのpotに対して「pot33%,65%,150%」のCBを設定します。
(クイズではプリフロの4.9bb(2.2bb*2+0.5bb=4.9bb)とポストフロップの4.9bbが一致しているため、レーキは0.0%と想定しています。)

3.[KhTh3s]におけるBTNのGTO戦略

クイズのシチュエーションにおけるBTNのGTO戦略は、下図のようになりました。

まず、レンジ全体で俯瞰すると、Bet1.67bb(pot33%Bet)とCheckが7.5割、Bet3.19(pot65%)が2割、Bet7.5(pot150%)が0.5割といった具合です。

次に、BTNの個別ハンドごとのEQ、アクション頻度、各アクションのEVを抽出してみます。

上図は、GTOによって抽出されたBTNの各ハンドの詳細をEQ順にソートしており、上からセット、ツーペア、TPTK…と、BTNが持ち得る約450ハンドが並んでいます。

このうち、今回のクイズの焦点である[Ah5s]をみてみます。

上図の赤枠で囲ったのが今回のクイズにある[Ah5s]でした。
以下、GTOの分析結果からわかることを書いてみます。

・[Ah5s]のEVに着目すると、4.9bbのpotに対して、アクション全体におけるEVが2.02bbである。

・ヨコサワプロが述べたとおり、「Bet150%~Check」を交えた各アクションのEVを比較すると、第一に「Bet150%」、第二に「Check」のEVが高い。

・ただ、今回の分析においては、[Ah5s]の最適アクション頻度の内訳は「Bet33%」が44.7%と最も高かった。

・そもそも、所与の状況下におけるBTNのCB戦略は、レンジ全体でだいぶ異なっているようにみえる。
⇒Pioでは、見た感じレンジ総体として「Bet150%&Check」を基本としたポラライズ型のCB戦略となっている。しかし、GTO+では、「CHECK>Bet33%>Bet66%>>Bet150%」といった少額ベットを多用するレンジベッティング型のCB戦略になっている。

4.結論:曖昧な混合戦略

BBvsBTN(2betpot)において、フロップ[KhTh3s]での[Ah5s]の使い方を問う今回のクイズでは、上図の数値を比較すると、解答のとおり「Bet150%&Checkのアクションが最もEVが高くなる」といえそうです。

ただ、同じ状況下を想定した分析でも、GTOのソフトやTarget dEV(GTOの精緻性)の違いによって、最適頻度といった細かい部分は、解答と異なる結果となりました。

上記から、GTOソフトが示す混合戦略は、かなり拮抗した点でバランスを取っていることが予想されます。

(蛇足ですが、上図のGTO+はTarget dEVを0.95%で設定しています。
全く同じ設定でTarget dEVを0.15%までGTO+を回し続けたところ、下図のようにほぼ33%Betで構成されたレンジベッティング戦略となりました。
Target dEVを細かくするほどGTOが保守的なアクションになる傾向について、詳しい方は是非教えてください。)

もちろん、GTOが示した結果の理由(今回のクイズでは、[Ah5s]がレンジをポラライズするブラフハンドとして優秀であった等)を考えるのが、ポーカープレイヤーとしての醍醐味であり、このゲームの面白さです。

ポーカープレイヤーとして、まずは自分のアクションの理由をしっかり説明できるのが強くある一つの条件であると思います。

一方で、GTOの混合戦略は、上記のように専用ソフトでさえ不安定です。アクションミスによるEV_LOSSが小さいようなら、誤差の範囲内として割り切ってしまうのも一案かもしれません。
(今回の分析でも、[Ah5s]による150%Betと33%Betのアクション間のEV_LOSSは0.01bbでした。)

よって、敬愛なるジョーズ先生が触れていましたが、GTOを戦略として使うなら、まずは純粋戦略の習得から始めるのが個人的なおススメです。


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