久保田 暁斗(あきと)

ペインクリニシャン、麻酔科医。痛みで苦しんでいる人の人生を前進させたい。患者さんと共に…

久保田 暁斗(あきと)

ペインクリニシャン、麻酔科医。痛みで苦しんでいる人の人生を前進させたい。患者さんと共に成長中。

最近の記事

ビジネスマンには腰痛の知識が必要である②

前回は、腰痛が仕事の効率を下げ経済損失をもたらすこと、 腰痛有訴率から考えると、その経済損失は莫大な額になることをお話ししました。 また、生活習慣の見直しが腰痛の改善に必要であることもお話ししました。 今回は、職場環境と腰痛の関係に言及していきたいと思います。 どのような仕事が腰痛をきたしやすいか これに関しては、イメージがしやすいかと思いますが、腰をかがめる仕事は腰痛のリスクとなるといわれています。 介護職や運送業などが当てはまります。 腰痛を悪化させる職場環境 職

    • リラックスできる空間

      最近、職場の本棚がとても綺麗に整理されていました。 職場の上司がこっそり整理していたのです。 その日の朝、忙しなく出勤しましたが、その本棚を見た時に緊張がほぐれた感じがしました!! その上司がどのような意図で整理したのかはわかりませんが、ほんの少しの変化で人の心はリラックスするのだと認識しました。 忙しい職場だからこそ場を整える 医療の現場は忙しく、忙しなく人が出入りします。 私も、小さな事ですが2年ほど実践し続けている事があります。 それは、 トイレのスリッパを並べ

      • 慢性疼痛は様々な弊害を生む

        慢性疼痛は、身体面だけでなく心理面や社会面にも広く影響を与えると考えられています。どのような側面があるか例を挙げて説明します。 就業困難慢性疼痛の患者さんの中には、疼痛のため仕事を辞めざるおえない人がたくさんいます。 私の外来にきている患者さんも、 「やりたい事が3つある。その中でも、仕事をして社会復帰をしたい」 とおっしゃる方がいます。 元気に生活している私たちは、仕事が嫌になる時も多くあると思います。 ただ、人間にとって仕事とは生活を営む上で重要なファクターです。 医療

        • 領域外の世界みてみませんか

          以前、慢性疼痛に関わる医療者の役割の一つとして、患者さんを「領域外の世界に連れ出す」ことを挙げました。 領域外の世界に連れ出す事がなぜ大切なのか考えてみたいと思います。 慢性疼痛疼痛患者の多くは痛み中心の世界に生きている 慢性疼痛で苦しんでいる方は、短い方でも数ヶ月以上、長い方では10年以上も痛みと闘って生活しています。 上手く痛みと付き合い生活されている方もいますが、痛みのため満足に生活出来ていない方も大勢います。 「痛みのせいで〇〇ができない」 「痛みがなければこう

        ビジネスマンには腰痛の知識が必要である②

          痛みを取るには運動をしろ?

          皆さんは痛みを感じた時にどのような行動を取るでしょうか。 「そりゃあ、痛みが引くまで安静にするでしょ」 と思いませんでしたか? 今回は、運動が痛みにどのような影響をもたらすのかというお話です。 急性痛が慢性痛に移行するメカニズムの一例 多くの急性痛は炎症を伴います。炎症は持続的に痛みの刺激を中枢(脳)にもたらす事で、「中枢感作」という状況もたらすと考えられています。簡単にいうとら痛みを感じやすくなるという事です。 一方で、痛みを感じると多くの人は安静にします。痛み

          痛みを取るには運動をしろ?

          アウェイに身をおく重要さ

          よくスポーツの現場でホームandアウェイという言葉を耳にします。アウェイは「敵地」という意味です。スポーツの場合アウェイでの試合は、相手国のサポーターが大半の中で試合をすることになります。メンタルを保って、自らの持っている力を発揮出来るかが重要です。実際のスポーツの場面では、力を発揮できず勝率が下がる事が多いのです。 自分の所属する病院以外での手術麻酔 現在の私の麻酔科医の仕事の一つに、麻酔科医のいない病院で出張麻酔を行うというものがあります。同じ手術でも、外科医が麻酔科

          アウェイに身をおく重要さ

          車内の熱中症対策何かしてますか?

          本日、久しぶりに真昼間に車の運転をしました。1時間ぐらいの運転を2回です。久しぶりの運転は想像を絶するほど過酷でした。クーラー全開にして、水分補給もこまめにやっていたのですが、運転が終わる頃には、頭がぼーっとして、「あれ?熱中症かな?」と思うほどでした。 車内の温度を効率的に下げる方法とは 今まであまりちゃんと考えた事はなかったのですが、真夏の車内の温度を効率的に下げる方法はどのようなものでしょうか。 ・窓を全開にする? ・冷却スプレーを使う? ・外から車に水をかける?

          車内の熱中症対策何かしてますか?

          新しい事を選択する

          皆さんは選択を迫られた時にどのように決定しますか?新たな自分になるためにいつもと違う選択をしてみませんか。 定常状態から抜ける 私たちは無意識のうちに定常状態を維持しようとしています。身体だって、血圧が上がれが下がるような反応が起きますし、血糖が上がれば下がるような反応が自然と起きます。選択することに関しても、定常状態を維持するように選択を繰り返してしまいます。 定常状態を維持する日々の選択は、無難な選択かもしれませんがベストな選択とは限りません。 悪い習慣が身に付いてし

          新しい事を選択する

          「なんとかまた来てもらう」

          昨日まで、日本ペインクリニック学会がありました。多くの学びを得た学会でした。久しぶりに現地参加したの、リアルで講演を聞くことの大切さを認識する機会となりました。タイトルの言葉は、今回の学会で印象的な言葉です。 日本には痛みを専門とする医師がまだまだ少ない 痛みの診療に長けた医師は多くありません。特に、慢性疼痛だと尚更です。このような状況もあって、十分な治療を受けられず、複数の病院を転々とする患者さんは多くいます。様々な病院で様々な薬を処方されて、膨大な薬を内服している人も

          「なんとかまた来てもらう」

          ヘルニアと腰痛

          皆さん、腰痛と聞くどのような原因が思い浮かびますか?椎間板ヘルニアを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。今回は、ヘルニアなどの器質的変化と腰椎の関係を考えてみたいと思います。 あなたはヘルニアがありますか? 腰のレントゲンを撮影したことはありますか? ある報告では、なんと40歳以上の7〜8割がヘルニアなどのなんらかな腰の変形を認めていると報告されています。 あなたの腰は痛いですか 一方、腰椎を訴える割合はどれくらいでしょうか。厚労省によって行われる国民生活基礎調

          痛みは人生を前進させるきっかけである

          私は、麻酔科医として専門医も取得し、手術室の麻酔の大抵のことは一人で対応できる。麻酔科医の仕事は少し特殊だ。患者さんの意識をとり、痛みをとり、外科医が手術に集中できる環境を整える。その際に、大抵の場合患者さんは呼吸が自分で出来なくなる。呼吸のサポートをしながら、微妙な血圧の変化に速やかに対応したり、手術の進行に応じて薬の調整をしたりして、一見すると患者さんの状態は変化がないように整えていく。私たちの役目は、手術した部分を除いて、患者さんの状態を変えずに、目覚めてもらうこと。特

          痛みは人生を前進させるきっかけである

          慢性疼痛の治療指標は痛みではなく○○である

          前回の記事では、腰痛がどれだけ企業に損失をもたらしているのか、危険な腰痛のサインについて、腰痛の自己マネイジメントとして生活習慣を見直そうという話をしました。腰痛は慢性化することが多いです。今回は慢性疼痛についてまとめてみたいと思います。 急性痛と慢性痛 急性痛とは、疼痛の原因に対する痛み反応をさします。よくペインクリニックの領域では、「火事の現場の火災報知器」として例えられます。火事の時に火災報知器が正常に作動してくれると助かりますよね。急性疼痛は体の危険を知らせる仕組

          慢性疼痛の治療指標は痛みではなく○○である

          ビジネスマンには腰痛の知識が必要である①

          腰痛と肩こり。誰もが一度は経験しているのではないだろうか。 2016年に行われた、国民生活基礎調査の有訴者率のランキングでは、腰痛は男性で1位(肩こりは2位)、女性で2位(肩こりは1位)となっています。 腰痛があると仕事の効率が低下する? ある報告では、腰痛がある人が働くことによって、生産性が低下し、社員1人あたり3万円/年の損失が見込まれるとされています。注意すべきは、腰痛のない人も含めた上での平均額なので、単純に3万円×社員数でその企業の腰痛による経済損失額が計算でき

          ビジネスマンには腰痛の知識が必要である①

          説明上手になるには

          ペインクリニックの外来をやっていると、説明技術も求められます。どんなに伝えたい事があっても患者さんに沿った形で具体的に説明出来なければ伝わらないからです。私はまだまだ説明下手ですが、説明上手になるために必要だなと思っている事をまとめてみたいと思います。 説明上手な人 皆さんの周りにも1人は説明上手な人がいるのではないのでしょうか。説明上手な人の特徴は、具体的に説明がとても上手という事が挙げられると思います。おそらく、相手の視点に立って普段から考える癖があり、あらゆる事に興

          説明上手になるには

          100人の人がいると100通りの考えがある

          「ペインクリニックの診療を通して、100人の人がいると100通りの考えがあるという当たり前のことに気づかされた」  ペインクリニックを行っている上司の言葉です。  当たり前のように聞こえるかもしれませんが、医師に限らず専門分野の領域で物事を考えているときは、多くの人が忘れがちになっているかもしれません。自分の意見をごり押ししていませんか? 医師はなぜ治療をおしつけるのか  これには、様々な要因があると思います。 ①経験でうまくいっているから ②強いエビデンスがある ③治

          100人の人がいると100通りの考えがある

          思わぬところで原点を見つめなおすことができる

           私は今年の4月からペインクリニックの外来を始めています。まだまだ未熟で勉強中の毎日ですが、ペインクリニック外来をすることで、手術室での麻酔の意識が変わってきました。 ペインクリニックを始める前は安全ばかりを考えていた  麻酔科医の仕事は手術室で麻酔をかけるのが主な仕事です。外科医からの手術の申し込みを受け、麻酔プランを立案していくのですが、患者さんと関わるのは手術前日から術後数日というのが一般的だと思います。なかなか、深い関りを築くことは困難です。そういった側面から、私

          思わぬところで原点を見つめなおすことができる