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コンタクトセンター4.0へ

こんにちは。久しぶりにnoteに帰ってきました。コンタクトセンター設計コンサルタントの出水です。昨年から生成AIの話でもちきりですね。今回はコンタクトセンターでの活用法を2回に分けて発信します。AIをセンターでどう活用できるのか?と悩んでいる経営層、センター運営者、管理者の皆さまに向けて書いています。お読みいただき、自社でできるところからスタートしてみてください。


生成AIはコンタクトセンターのモデルを変える


Chat-GPTの普及は、様々なビジネスシーンに大きな影響を与えています。
Chat-GPTは大規模言語モデル(LLM)を基にしていますので、言葉をインターフェイスに据えているコンタクトセンターではさまざまな活用が期待されています。人間の対応ではなく、AIによるチャットボットやボイスボットが顧客とのコミュニケーションの主体となる未来が近づいています。生成AIの登場により、コンタクトセンター3.0で紹介したフレームワークは大きく変わり、次世代のモデルであるコンタクトセンター4.0へと進化するでしょう。しかし多くのセンターの現実はこうした新しいテクノロジーを活用できる準備が整っていない状況です。特に情報のフローが組織によって分断され、チャネルごとにデータベースが乱立しているコンタクトセンター2.0の状態では、生成AIの活用には成約があります。今回はChat-GPTに代表される生成AIの特徴と活かし方を明らかにし、生成AIを活用したコンタクトセンターの改革には何が必要かを考えていきます。

Chat-GPTが生成する答えと企業が必要とする答え

Ghat-GPTに唯一無二の答えを求めると「それは○○ですが、使い方によって異なります」というようにかなり曖昧な答えが返ってきます。一つの正解を求める検索には適していないと言われている理由です。顧客が企業の窓口に求めるものは製品やサービスへの正しい回答です。世の中にある同じような製品やサービスの情報をもとにChat-GPTが生成する「なんとなく正しそうな回答」ではありません。企業が持つ固有の情報を目的に合わせて正しく伝えるためには世の中のことではなく、用途を限定した特化型の生成AIが必要です。その前にChat-GPTなどの生成AIを使い現状のコンタクトセンターで使える活用例をご紹介します。

特化型言語モデルと汎用型言語モデル

利用方法1.チャット・メールの文案作成

生成AIの得意なことは、多くの人が理解できる文章をあるテーマに基づいて作成することです。言葉はコミュニケーションの基本であり、人々は異なる表現方法を持っています。そのため、同じことを伝えるために標準化することは難しく、メールやチャットの文案作成に悩む人々も多いと思います。生成AIは、メールやチャットで寄せられる顧客の質問を特定し、それに適した答えを分かりやすい言葉で瞬時に作成することができます。人は作成された文案をチェックし、修正が必要な場合は直して送信するだけです。これにより、AHT(平均処理時間)の大幅な削減が実現できます。また、修正された文案をフィードバックすることで強化学習を行い、次回はより洗練された文案が作成できるようになります。さらに、製品やサービスの特徴を記した業務文書を一般的な言葉に翻訳し、FAQなどの回答文案を作成することもできます。これは非常に高度な利用方法ですが、指示方法を工夫することでナレッジ作成の工数を大幅に削減し、標準化を実現できます。どちらの利用方法も人のチェックを経ており、セキュリティも確保される利点があります。

AIは用途特化型生成AI(Chat-GPTの活用も可能)

利用方法2.応対履歴などのバックヤード処理

コンタクトセンターでは顧客応対の後にいくつかの事務処理が必要です。応対履歴の入力は今まで人が用意されたプルダウンメニューから項目を選び、やり取りの詳細を手で入力するという方法がとられてきました。生成AIはこの作業を自動で行うことができます。仕組みはSTT(Speach to Text)という自然言語処理ツールを使い、顧客とオペレーターの音声会話をテキストに変換します。そのテキストを生成AIが読み込み要約します。内容をオペレーターがチェックし正しければ履歴として登録します。従来、顧客との応対履歴を作成するために費やしていた時間が大幅に短縮されます。さらに生成AIは要約されたテキストをコールリーズン別に分類し、入電件数をジャンル別に整理しレポートを作成することができます。

事務処理の自動化は生産性向上に役立つ

利用方法3.オペレーターの支援

生成AIは音声認識によってテキスト化された言葉を処理します。顧客とオペレーターの対話の中からその状況に最もふさわしい答えを蓄積されたFQAの中から瞬時に見つけ出しオペレーターに知らせることでスムーズな対話が可能になります。従来、単語に反応してFAQを呼び出すことは可能でしたが、ヒットする件数が多くどれを選ぶか迷っていました。これからは生成AIによる精度の高い推奨回答が、変わっていく会話の中でその都度表示されオペレーターを支援します。もう一歩進むと共通ナレッジに登録されていない質問をみつけ、新たなFAQを生成します。いずれも最終判断は人が行います。

リアルタイムで表示されるFAQを見ながら会話ができる

共通ナレッジが生成AIを育てる

生成AIの登場により、私たちはすぐに答えてくれる画期的な道具を手に入れています。この新しい感覚に慣れた顧客は、企業にも同じような対応を期待するようになります。しかし、顧客が企業とのコミュニケーションで求めているのは、製品やサービスに関する正しい理解とそれに対応する方法です。この要望に応えるためには、企業はどのチャネルでも同じように対処できる共通のナレッジを持つことが重要です。生成AIはその共通ナレッジを活用するとともに、自ら学習することで更に精度の高いコミュニケーションを実現します。情報のフローが組織によって分断され、チャネルごとにデータベースが乱立しているコンタクトセンター2.0のセンターは、まず、共通ナレッジの整備を行いましょう。幸い生成AIは各所に分散した文書やデータを集約し業務フローの統一やFAQの整理を行うことができます。適切な指示を行えば生成AIはコンタクトセンターにとって強い味方になってくれるのです。

ヴォイスボットが当たり前になる世界

今回は生成AIを活用し、人のチェックを経ることで現状のコンタクトセンターを快適にするお話でした。次に目指すのはAIが人と直接コミュニケーションを行う世界です。すでにほとんどの業務を無人で行うことを目指しているセンターがあります。声でテキストをつくったり、テキストを音声で聞くことが当たり前になりつつある世界でコンタクトセンターのモデルも大きく変わろうとしています。次回はヴォイスボットの活用に焦点を当てます。
このnoteは技術をどう活用しようかと考えるセンター設計者に向けてお届けしています。ご興味があればフォローをお願いいたします。

ヴォイスボットが中心のコンタクトセンター4.0


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