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ショートショート「占いチャットGPT」


私は占い師です。都内の占い館や
イベントを中心に活動し続けて
もう20年あまり。
ネット上でも自分の占いサイトを
持っていますが、先月そのサイトの
制作会社でのミーティングで、こんな
話が出ました。

「最近盛り上がっているチャットGPTの
ような機能でバーチャル占い師を作ることは
できないか?」と言う話でした。
私は「バーチャル占い自体はもうすでに存在しています
が、それにチャット機能を持たせれば、できないことは
ない」とお答えして、その場は終わったのですが、その後
担当者からメールが来て「ぜひ占いチャットGPTの制作に
加わって欲しい」とのこと。
しかも、ギャラは印税収入で、アクセスが増えれば
増えるほど収入につながる…と言う条件なので、
喜んで引き受けたのです。

その後2週間ほどは想定されるユーザーの様々な質問に
答えを設定する作業に追われました。なかなかハード
でしたが、占いの歴史に新たな一歩を踏み出せると
いう期待もあり、かなり張り切って作業に打ち込みました。

そしていよいよプロトタイプが始動。最初の三日間、
1万近くのアクセスがあり「これは大ヒット!」と
喜んでいたのですが、昨晩、担当者からメールが入りました。
「クレームが増えていて、SNSでも叩かれている」と。
そこで、クレームのあった内容をチェックしてみると…

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客「こんにちは。実は気になる人がいるんですけど、
彼が私をどう思っているか占って欲しいんです。
私の生年月日は入力しました」

占「はい、わかりました。では彼の生年月日はご存じですか?」

客「年齢は2つ上なんですが、それ以上はわかりません。
同じ職場の先輩なんです」

占「彼のメールアドレスあるいは電話番号はご存じですか?」

客「はい、知っています」

占「それではメールか電話で『私のことをどう思うか』
尋ねてみるのが良いと思いますよ」

客「え?占ってもらえないんですか?」

占「占うよりも、彼に直接聞いた方が早いですよ。
すぐに結論が出た方があなたの時間も無駄になりませんし、
ダメなら他の相手を見つけた方が良いと思います」

客「何なの!この機械!」

占「ありがとうございます!良い一日を!」

**********************

私は溜息をついた。
「そうか…機械には『空気を読むこと』が
できないんだ。これは改善するのは大変だぞ」

そして私は改めて人間という生物の複雑さを
思い知ったのだった。

(このお話はフィクションです)

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