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ローマから オスマントルコに 馳せる夢

水道橋遠望

 塩野七生の「ローマ人の物語」を読んだのは、今から20年近く前の還暦が近づいた頃だった。当時の新聞の書評欄で取り上げられて興味を持ったのが、この本を読むきっかけだった。文庫本で43巻(単行本では15巻)の長編で読み終わるのに数年を要した。

 大学受験を日本史で受けたせいか、ローマの歴史について無知だったので、ローマが生まれてからヨーロッパ、アジア、アフリカにまたがる大帝国を築いていく話は、驚きの連続で長編を最後まで読み切った。それから10年後、古希を迎える頃に出たヤマザキマリの「テルマエ・ロマエ」にも驚かされた。

 「ローマ人の物語」を読んで、ローマ人がお風呂を好きだったことは知っていたが、それを日本の銭湯に結びつけるなんて思いもよらなかった。さすが漫画家というべきか、作者の自由な発想と漫画の持つ時空を易々と越える力のなせる技であろう。

 両作品の作家である2人の女性の半生に興味が湧いて調べてみたが、2人に共通する「生きる力」の強さに驚かされる。日本に育ちながら、単身イタリアに渡り、道を切り拓いて行く、それを支えた人並外れた好奇心、探究心、生命力。素直に「女性、恐るべし」と感じた。

 こんなもので女性の活躍は終わらない。イギリスの田舎町で子育てに奮闘する自らの姿を描いた「ぼくらはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の作者ブラディみかこ、イスタンブールの美術館の学芸員でありながら、「明治の建築家伊東忠太オスマン帝国をゆく」を著したジラルデッリ青木美由紀と、海外をベースに活躍する作家が次々に現れる。

 これだけ実績を示されると「女性、恐るべし」は女性に対して失礼で、「後世、恐るべし」と言い換えなければなるまい。

 塩野七生を嚆矢とする女性作家の活躍が、日本の若い女性のロールモデルとなって、今後も海外で活躍する女性が増えて行くに違いない。ところで、男性はどうなっているのだろう。これと言った人が思い浮かばないが、ご存じの方がおられたら教えて頂きたい。

(2024.03.23)

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