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風温み 心のつぼみ ほころびぬ

ミモザの花咲く散歩道

 春のような陽気になった先週の土曜日、少し長めの散歩をしようと家を出た。いつもと違う道に入って行くと、青い空に黄色い花をたわわにつけた木が目に飛び込んできた。立ち止まってその木の立つお宅の塀のそばに寄って行った。

 庭で中年のご夫婦が、黄色い小さな花がビッシリとついた枝を切って花束を作っておられた。
「綺麗な花ですね。これは何というか花ですか。」
「ミモザです。」
「ミモザって、こんな大きな木なんですね。写真を撮っても良いですか。」
「構いませんよ。どうぞ。」
スマホを取り出して、何枚か撮り終えて、一声掛けて帰ろうと思っていると、ご主人が花束を持って近づいてこられた。
「これをどうぞ。」
「エッ、良いんですか。有難うございます。」
帽子をとって深々とお辞儀をした。

 思いがけずミモザの花束を貰って、心もウキウキと散歩に戻った。花は人の気持ちを開かく力があるのだろう。先日、熱海に早咲きの桜を見に行った時にも楽しい経験をした。

 桜を眺めながら歩いていると、スチール椅子に座って刺身をつまみにビールを飲んでいるカップルに出くわした。羨ましくて、つい声を掛けてしまった。

「いいですね。」
男性がこちらに顔を向けて、ニッコリ。
「エエ、そこの魚屋さんで買ったのですよ。」
指さす方を見ると、小さな魚屋が道の向かい側にあった。
「そうなんですか。チョット見てみます。」
その魚屋で発泡スチロールの皿に盛られた鯵の刺身を買い、桜の木下に戻った。
「新鮮で美味しそうだったので鯵を買いました。飲み物は何処で買われました。」
「あちらの方にコンビニがありますよ。」
教えてもらった方向に歩き出したところで、魚屋の親父から声が掛かった。
「お茶だったら出してあげますよ。」
「エツ、そうですか、有難いな。」
親父から湯呑みに入ったお茶をもらったと同時に、カッピルが席を立った。
「どうぞここにお座り下さい。」
「なんだか急かしたみたいで、申し訳ない。」
「いえいえ、ごゆっくりどうぞ。」
スチール椅子に座り、お茶を飲みながら鯵の刺身を堪能した。

 初春の花の取り持つ縁2つ、こんな人との交わりをこれからも持ちたいものだ。

(2024.03.02)

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