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エンジョイと 聞いて戸惑う スポコン族

紅 葉

 今年のプロ野球は阪神タイガーズの優勝で幕を閉じた。阪神の岡田監督がシーズン中に、「セリーグ優勝」という言葉を使うことを避けて、「アレ」と表現したことが話題になった。「アレ」は今年の流行語大賞の最有力候補に挙げられている。野球関係ではワールドベースボールのアメリカとの決勝戦の前に大谷選手が発した「憧れるのはやめましょう」も流行語対象の候補に上がっている。

 野球関係でもう1つ印象に残った言葉として、夏の甲子園大会を制した慶應高校の森林監督の掲げるチームのモットー”Enjoy Baseball”がある。甲子園のグラウンドで溌剌とプレーをする慶應高校の選手を観ていて、「エンジョイ」が選手に浸透していると感じた。我ら団塊の世代のヒーロー「巨人の星」の星飛雄馬、「あしたのジョー」の矢吹丈のモットーは「根性」だった。

 この「根性」は、今では「スポコン」と呼ばれ、昭和の遺物と化していると思っていたら、思わぬところで生き続けていた。最近世間を賑わせている宝塚歌劇団の劇団員急死をめぐる報道から、宝塚では今でも「スポコン」を彷彿とさせる厳しい躾と訓練が行われていることが露わになった。高校野球が「エンジョイ」という時代に、宝塚では今だに「スポコン」が息づいている。

 かく言う私も、「エンジョイ」は分かったようで、分かっていないのが正直なところだ。ただ練習や試合を楽しめば良いと言う訳ではなさそうだ。森林監督はあるところで、”Enjoy Baseball”について、「今のレベルより少しでも上達して高いレベルの野球を楽しむ気概を持つこと、そのための努力や工夫を怠らないこと、部員1人1人が独立していて自分から野球に積極的に取り組むこと」によって体現できると述べている。この発言から、「エンジョイ」の奥の深さが見えてくる。

 老後を「エンジョイ」しようとしているのだが、「スポコン」世代にとってはこれが意外と難しい。得意の「根性」では何ともならないので困ってしまう。

(2023.11.24)

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