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買収の 行方を決める 労組かな

ジャーマン アイリス

 日本製鐵は最近、アメリカのUSスチールを買収すると発表した。USスチールの経営陣は既に買収に同意しているそうだが、この案件を実現させるには鉄鋼業界の労働組合の同意が必要だと報じられている。

 若い頃に、働いていた会社で労働組合の役員を経験した者として、この買収に対してアメリカの鉄鋼労連がどれだけの影響を及ぼし得るのか、今後の推移に興味が湧く。この話と逆に、USスチールが日本製鐵を買収することを想定した場合、日本製鐵の労働組合がそのような経営判断に影響力を与えることは難しいと思う。

 日本の労働組合の大半は企業毎に組織されており、労働組合自体が企業の存続、発展なくしては成り立たない。そのため、労働組合はよほどのことがない限り、経営方針に反対したり、労働条件改善のために徹底抗戦したりはしないものである。
 労働組合の役員を務めた際に、企業内組合の抱えるジレンマを肌で感じた。労働条件の交渉に際して、組合の要求案を下回る条件で妥結するしかないと判断した場合、組合役員は経営者に代わって経営状況の厳しさを組合員に説くことになる。その際に、「変な立場に立たされているな」と感じたことを今でも思い出す。

 日本の労働組合のジレンマあるいは限界を知る者としては、アメリカ鉄鋼労連のUSスチールで働く労働者の権利を守る戦いが、低迷する日本の労働運動に刺激を与えてくれることを期待している。その一方で、日本製鐵の経営者が買収を成功させ、日本企業の国際競争力強化の範を示してくれることも期待している。

(2024.04.21)

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