対岸の空気

うちの前には大きな川が流れていて、向こう岸には土砂をどうにかする会社がある。
たぶんトラックか船で運ばれてきた土砂を、文字通り山のようにてんこ盛りにして、それをまたトラックか船に乗せてどこかに運んでいるようす。一度、その砂運び船に犬が乗っているのを見た。茶色の中型犬。

ほとんど人の気配がしないのだが、日曜と祝日をのぞいて朝7時位から夕方5時位までずっとクレーンやら砂を運ぶ機械やらがガチャガチャウイーンボボボボと動いている。
この間、窓を開けていたら、初めて人の声が聞こえた。
「おいてめー!空気読めよこらー!!」

なんとなく、空気を読むという行為は室内の狭い空間で為されるものだと思っていたけど、こんな大きな川べりの、ひらけた空の下で求められることもあるのだな、と感慨深かった。
そしてやっぱり人の姿は見えなかった。

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