見出し画像

食べ物の・・・恨みは本当に恐ろしい・・・!?女子寮時代の「部屋替え」の思い出(3)

 20年以上前の女子寮での甘酸っぱい思い出である。

 前述のように、1年に一度、大規模な女子寮内の「部屋替え(=引越し)」が3月中に行われた。

 1年も住んでいると、部屋のものも増えてくる。全ての荷物を段ボールに入れて別の部屋に移動させるというのは、それなりに、とても大変なことであった。今なら「引越し 効率的なやり方」などでgoogleで打ち込んだり、chat GPTに聞けば、何かしらのヒントが与えられる時代だが、ガラケーすら貴重なものであった20年以上前の当時、そんな便利なものは存在していなかった。

 自分のように、ものが捨てられず、片付けそのものが苦手な身には、かなりの重労働であった。わずか一晩で全ての荷物を別の部屋に移動させなければいけないのである。

 そんな時、今でも忘れられない「大福事件」が起こった。

 1台の冷蔵庫を、当時は、3人あるいは2人のルームメイト同士で共有していたのだったが、引越しの疲労と、どう考えても明日の朝までに終わるはずがない、という追い詰められたおかしなテンションの中、寮内の廊下を響き渡る絶叫の声が聞こえた。

 何が起きたのか!?と思って絶叫主(造語)に事情を聞くと、なんと、ある人が「とっておきの時」のためにとっておいた冷蔵庫内の「大福(=あんこの入ったもちもちした白いお菓子)」を、それほど重要なものだとは思っていなかったルームメイトが、ちょっと一息、と思って、持ち主の許可を取らずに、うっかり食べてしまった。そのため大福の本来の持ち主が、食べられてしまったために、ショックのあまり絶叫した・・・という顛末なのであった。

 そして、うっかり食べてしまった後輩が、贖罪意識によって、思わず号泣する、という事態にまで、発展してしまったのだった!

 たった一つの大福を巡って、廊下に響きわたる声で叫ぶ人と、泣く人がいたのだった。

 私はその、うっかり「人の大福を食べてしまった人が罪の意識から涙を流す」という状況が、古代から伝わる寓話のようで、その事態に衝撃を受けつつも、なんだかとても、猛烈に可笑しすぎると思ってしまったのだったが、当事者たちは、とても真剣だったので、その時は、必死にこらえて、笑うことはできなかった。

 しかし「大福をうっかり食べてしまったことによって、ショックのあまり絶叫した人と、号泣する人が存在した」思い出は、今も自転車に乗りながら、思い出し、ゲラゲラと笑ってしまう出来事である。

 本当に、その場に自分が居合わせたのか、そのエピソードを誰かに聞いてその場に居たように記憶しているのかは、20年以上経った今、定かではないのだった。

”Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot.”

人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ。
(by Charlie Chaplin)

以上です。


よろしければサポートをお願いします!サポートは、記事の執筆のための参考となる本の購入、美味しいものを食べることなどなどにあてさせていただきます。