テレビが好きで、タモリさんもさんまさんもたけし、も好きだった。学校を休んだ昼間に見る笑っていとも！のテレフォン・ショッキングは本当にわくわくしたし、我が家はひょうきん族派ではなく、ドリフ派だったので、さんまさんの若き日の活躍は、よく知らないままだったが、学生の頃たまに見た「恋のから騒ぎ」はめちゃくちゃ面白かったなあ…と思うし、クリスマスのさんまさんと八木亜希子の明石家サンタはいまだに録画して見ている。昨年ついにクリスマスイブの放送じゃなくなったし、松尾坂内がまだ出ていることにはびっくりしたけど。

　天才！たけしの元気が出るテレビ！も面白かった。今にして思い返せば早朝バズーカも浪越さんのジェットコースターのネタも何もかもコンプライアンスを無視しまくっていたが、高田純二の目をぐるぐる回す登場シーンが楽しみだったし、兵藤ゆきのあねごキャラも、爽やかなのに何かありそうな勝村政信も好きだった。大学生の頃アルバイト先の劇場に、出演者として勝村さんがきて、ジャージ姿で舞台袖で準備体操をしていた姿に感動した。ただのアルバイト員だったのだが、「ついに自分は高校のときに熱心にみていた番組に出ていた勝村政信を至近距離で見ることができた」という謎の感動があった。電話で母親に自慢した。上京物語である。ただこっそり見ただけであったのだが。

　夢中になってテレビを見ていた30年以上前の時代、自分にとってはそれが、家族4人で笑い合ったりしていた最後の記憶なのである。兄は浪人時代を機に、家族から距離を置いて、私にとっての実家であった団地からも引越し、家族4人で実家で顔を合わせることは、その後ほとんどなくなった。

　今でも、テレビに出ているビッグ3。コストの子である私。あのころ想像したこともなかった「将来」の生活である「現在」の自分の境遇。子供も夫もいる東京暮らし。あの頃の団地より広い。テレビも大きい。羽アリも飛び込んでこない。好きなこともできていて、幸せではあるけれど、思った以上にしんどくて、ハイボールを飲みながらバラエティ番組を見ることで日々の憂さを晴らす日々。

あの頃、最前線にいた彼らも、すっかり高齢者。まだずっと出ている。形骸化したフォーマットだけがそのまま残っている。タモリさんはもう完全におじいちゃん。いつまでブラブラできるのか。
　
　あのとき心から笑えた番組に出ていた彼らが今も出ている。彼らを見ることで、自分もあの時代に戻れるのかもしれない。

でも、もう、いいよ、とも思うところもある。

若い人たちはみんなネットしか見ていない。「なつかしさ」だけを頼りに劣化する、昔からずっといる固定メンバーの、ずっと同じ話が繰り返される会合のような、そんな虚しさも感じるのであった。