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『無言の宇宙』と『ってか』この二曲を聴いて思うこと。

10月13日に発売された櫻坂46の3rdシングル『流れ弾』の収録曲である『無言の宇宙』と、10月27日に発売される日向坂46の6thシングル『ってか』の表題曲である『ってか』。

同時期に生まれた、姉妹グループの「恋愛」をテーマにしたこの二曲を聴いて思ったことをつらつらと書いていく。

①櫻坂46『無言の宇宙』

MV:https://youtu.be/7GZGTse6dUs

一期生の大エースにして、この世で最も神様に近い存在とされる渡邉理佐さんの初センター曲。この曲がテーマにしているのは、大切な人やものを大切に思う気持ちに、理由などいらないということだ。サビの一節が最もわかりやすい。

大切なものが なぜ大切なのか 考えたって何になる?
僕は(僕は) 君を(君を) 理由なく好きだ

僕は秋元康の書く詞が好きだし、その多くは僕の直感とマッチするものである。家族でも友人でも恋人でも、誰かから「自分のどこが好きですか」と問われても、「それはよくわからないけど、あなたと一緒にいるのは楽しいし、好きだよ」と答えるのが僕にとっては最も率直で、誠実な解答である。例えばそこで「嘘をつかないところ」と答えたとして、その人に嘘をつかれたら直ちに嫌いになるかと言えばそうではないし、僕にとって重要なのはそこに悪意があったのかどうかでしかないのだ。「この人はこういう人だから好きだ」という型に当てはめて人を捉えることは、自分にとって都合のいい人物像を勝手に作り上げているだけであって、僕には到底誠実な行動とは思えない。

②日向坂46『ってか』

MV:https://youtu.be/pZDqElqNW34

僕の推しであり、パンサー尾形貴弘、富田鈴花さんと並んで日本三大負け顔に指定されている金村美玖さんが満を持して表題初センターに輝いた曲。この曲がテーマにしているのは、外見きっかけで恋愛をすることへのアンチテーゼである。これもサビの一節が最もわかりやすい。

可愛さを求めてるだけなら 私じゃなくてもいいんじゃない
同じものを見て感動できる 同じ価値観が欲しい
ルックスから好きになるタイプは 他の誰かでもいいってこと
もっと私を知ってくれなきゃ ってか付き合えない

人と接する中で時々「自分ではなく、代替可能な誰かで事足りるのではないか?」という疑念に駆られることは僕もよくあって、友情においても恋愛においても、自分でなければならないという確信を抱くことは非常に難しい。その一方で、殆ど正解など存在しないであろう問いに対する答えを、相手に求めるのはもっと酷であるとも思う。自分が『ってか』の主人公と接しているとしたら、「そんなこと考えて何になるの」と切り捨ててしまいそうだ。
また、完全に同じ価値観を持つ人間など存在しない。大事なのは歩み寄れるかであり、「ここだけは譲れない」というラインの干渉が多すぎると「気が合わない」ということになるんだろうが、そうならない範囲ではむしろ価値観が違うほうが多様な意見に触れられて良いというのが僕の直感である。

③『無言の宇宙』と『ってか』の関係

『無言の宇宙』の主人公が男で『ってか』の主人公が女であること、とこの2曲の内容をふまえると、『ってか』の主人公に対して、『無言の宇宙』の主人公が一つの答えを提示しているように捉えられる。(これはあくまで僕の妄想上の話である。)

しかしここで考えたいのは、「私のどこが好きなの?」という問いに対して、「僕は君を理由なく好きだ」と答えるのは果たして本当に誠実なのかということだ。先述した通り、僕にとってはそれが最も率直かつ誠実な解答なのだが、そう答えた時コミュニケーションが成立しているのか、あるいは質問をはぐらかしている不誠実な人として捉えられかねないか、不安になった。

結局僕にはこのことについて真面目に聞くことができる相手がいないので、結論を出せないのだが、『無言の宇宙』の主人公は、時に不誠実な人間として映ることも念頭に置かねばなるまい。「僕は君を理由なく好きだ」という表明が信用足りうるには、それ相応の不断の努力(というか行動?)を伴うことを忘れてはならないと思う。

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