見出し画像

「ネットワークKENPOKU 円卓会議 ―地域おこし協力隊と見つける、新しい発見・身近な資源―」を開催しました

茨城県の県北地域では、さまざまスキルをもつ地域おこし協力隊が、専門性を活かした活動を展開しています。令和5年12月3日、そのような協力隊の方々の活動内容等を広く紹介し、地域の方々との交流を図る企画「円卓会議」を行いました。
 第2回となる今年度は《地域おこし協力隊と見つける、新しい発見・身近な資源》をテーマに開催。当日のトーク、パネルディスカッション、ワークショップの様子をお届けします!

ゲストトーク「『日常』から『新しい何か』を生み出す視点」

まずはゲストトークからスタート。今回のゲストは、廃棄される野菜等を原料にしたクレヨン「おやさいクレヨン」を開発した、mizuiro株式会社木村尚子さんです。

もともと広告代理店で勤務していた木村さんは、子供との時間の過ごし方など、ワーク・ライフ・バランスに悩んだ結果、グラフィックデザイナーとして自宅で起業。そんなある日、「青森の冬は白とグレーばかりだけど、ねぶたや植物など、実は豊かな色がある。地域資源(色)を生かしたプロダクト商品をつくれないか?」と考え始めます。そこからさまざまな過程や出会いを経て誕生したのが「おやさいクレヨン」です。

「おやさいクレヨン」は、食品加工の際に出る廃棄野菜や、米ぬかからとれる米油等、子供が万が一口に入れても安全な材料で作られています。一般的なクレヨンよりもやや高価ではあるものの、商品に込められたストーリーや想いが多くの共感を呼び、10年間で約17万セットの売り上げを記録しているヒット商品です。単なる画材ではなく、安心して使えること、青森の魅力を伝えることを大事にしているそう。パッケージには雪化粧をした岩木山の姿があしらわれています。
「おやさいクレヨン」の誕生とこれまでには、どのような背景や物語があり、どのように共感者や関係性が広がっていったのでしょうか。

木村尚子さん

「地域資源(色)を生かしたプロダクト商品をつくれないか」と考え始めた木村さん。自分にできること、自分だからできる分野…を考える中で、「『地域資源である野菜』をつかい、自分のデザインスキルが生かせる『文房具』の開発をする」というアイディアが出てきます。そのなかで出会った素材が「廃棄野菜」で、環境にも優しいということで、アイディアが具体化していきました。

人との出会いも重要でした。アイディアを面白がってくれる、とある公務員の方と出会い、起業支援の窓口等に相談しに行くことに。補助金事業に採択されたことにより、一気に商品開発のスピードが増しました。また、商品発売を目前に控えた時期に都内で参加した展示会で、企業等から予想以上の反響があり、用意したサンプルは在庫ゼロ。複数のメディアからも注目され、一般的にも話題になりました。

木村さんは、「おやさいクレヨン」の見せ方には「二面ある」と話します。一般向けには、「安心・安全」という価値を。そして、企業に対しては「廃棄資源の活用、地域資源の魅力向上」といった価値を。複数の視点から付加価値をつけていくことで、製品が持つストーリー性に共感してくれる層が広がっていきます。そして、その複数の視点をつなげる根底には「親子の時間をデザインしたい」という木村さんの変わらぬ思いが流れており、それらのストーリーを支えているのでしょう。

今後は新しい商品の開発も検討しているという木村さん。新商品も、ハード面(何を作るか)、ソフト面(それをどう使うか)、さまざまな視点から検討をしていると語りました。

質疑応答の時間では、試行錯誤しながら使う野菜の種類を変えてきた話など、開発秘話も。

パネルディスカッション「わたしたちの『地域資源』ってなんだろう?」

ゲストトークの後は、現在茨城県北地域で活動している6人の地域おこし協力隊による活動紹介と、ゲストを交えてのパネルディスカッションです。

発表したのは、耕作放棄地を活用し和ハーブや伝統野菜等の栽培に取り組む本田真美さん、教育を通じたまちづくりを目的に、地域の高校の探究学習の設計や公営塾の運営を行う平石慶太さん、これからの社会を見据え「自伐型林業」の普及や実践を目指す神田駿介さん。それから、加工の過程で出る廃棄部分まで活用したアボカドの商品開発に取り組む齋藤幸枝さん、海外や富裕層をターゲットにした映像プラットフォーム運営に取り組む永松裕士さん、国産生ハム工房設立に向けて活動中の松井洋介さんといった、多様な活動を行う皆さんから活動紹介がありました。

それぞれの活動を聞いた木村さんは「素晴らしい経歴を持つ方々ばかりで、圧倒された」とコメント。また、「(平石さんに対し)画期的な取組。民間の感覚を持った方が子供たちの周りにいるのは良いことだと思う」や、「(神田さんに対し)大事な考え方だと思う。この活動を起点に、全国にも広まっていくといいと思う」、「(永松さんに対し)これから5年10年は地方にとって大チャンスとなる時期になると思うが、どう発信するかをどこの地域でも悩んでいると思う。ぜひ経験を生かして、県北からグローバルに発信してほしい」という応援メッセージがありました。

続いて、茨城県北地域おこし協力隊マネージャーの松本美枝子から、2つの質問をパネリストに投げかけ。
「自分にとっての地域資源は?」という問いに対しては、「地域資源は人、人の人生」、「特産品や技術」、「東京への距離感」といった視点に加え、「KENPOKU PROJECT Eのような新しい取り組み」や、「人の想い。茨城県庁の方々と出会っていなかったらここには来ていない」といった声が聞かれました。

続いて、「これから、地域(資源)とどう関わっていくか?」という質問に対しては、「人とのつながりを生かしながら活動したい」、「地域の人に愛されるように。でも流されすぎずに」、「もっと活動を地域に見せていきたい」といった声が上がりました。

ワークショップ「身近な『地域資源』を探してみよう」

後半はワークショップ。参加者全員が、興味のある活動をしている隊員ごとに6つのグループに分かれ、ディスカッションを行います。

前半の木村さんの「複数の視点から付加価値をつけていく」、「製品が持つストーリー性に共感」という話を受けて、ワークショップでは、それぞれの活動を地域側から見直し、どんなニーズや可能性があるのかを探る時間となりました。
隊員の活動が、こんな場所やこんな領域(=地域資源)でも展開できるのでは?こんな地域資源と掛け合わせたら面白いのでは?というアイディアを、妄想でもいいので自由に話してみてください」という問いかけのもと、グループごとに自由にディスカッション。その後、グループごとに発表を行いました。

発表の時間には、様々なアイディアが共有されました。例えば、「和紙を作るときには『トロロアオイ』をつかう。アボカドのぬめりが代用できたりしないだろうか?」、「学校の基本財産形成や児童・生徒への環境に関する教育、体験活動を目的に、学校が保有している森林『学校林』を活用できないか」といった、集った人たちの知見を活かしたアイディアも。また、「駅の活性化と連動」、「デザイン系の教育機関との連携」、「地域の大人たちとつくる音楽フェスやサウナ」という企画の種も生まれました。

発表を経て、木村さんは「どれも非常に面白かった。これらすべてのプロジェクトを1回で体験できるような仕組みができたらすごいパワーになりそう」とコメント。ファシリテーターを務めた岡野からは、「思いがけないアイディアが出てきた。色々なバックグラウンドを持つ方が一堂に会すという可能性を感じた」、マネージャーの松本からは「隊員の事業が、地域にとってどのような地域資源になるのか、という視点が見えて面白かった」という振り返りがありました。

今回の円卓会議は、自分たちの活動のどこに独自性や新しさがあり、そのポイントをどうやって見つけるのか、どうやって育てていくことができるのか、どうやって伝えていくのか…、そのヒントとなる時間だったように思います。自分の原点となる想いを大事にしつつ、思わぬ出会いや発見、新しい知見と化学反応を起こしながら、活動は広がっていくのではないでしょうか。

今後もnoteでは、地域おこし協力隊の活動や、ネットワークKENPOKUの取組等について発信していきます。ぜひチェックをよろしくお願いいたします。